【リーンウィズで速くなる!? 《全20回》】その17 感情のコントロール
ニュートラルな精神状態に
バイクに乗る時は、精神状態をコントロールすることが非常に大切です。
ライディング中は常に心を落ち着かせて、冷静な判断と、正確で繊細な操作をしなくてはなりません。
でなければ、たったの1馬力にも満たない人間の力で、何十馬力、車種によっては百何十馬力もの力を発揮することが出来る機械を操ることはできないからです。
興奮しすぎず、恐れすぎず、精神状態をニュートラルな位置に保って、ライディングすることを心がけます。
怒られない・はやらない・焦らない・侮らない
僕の場合は、
『怒らない・はやらない・焦らない・侮らない』
ということを、いつも自分に言い聞かせています。
『怒らない』は、遅い車についてしまった時や、危ない運転をしてきた車などに対して、腹を立てたりしないようにすることです。上手く運転ができないときなどもイライラするものですが、そんな気持ちを晴らすためにスロットルをガバッと開ける、などということは単なる自殺行為でしかありません。
また逆に気分がいいときに、はしゃぎ過ぎてついスピードを出してしまう、というのも危険です。うまく乗れている時や、友人と競っている時なども『はやらない』ことを心がけ、興奮しないように感情を抑えてフラットな気持ちを保ちましょう。
『焦らない』は、後続車に煽られたり、速いペースについて行こうとしてスピードを上げすぎ ”怖い” と感じるような場面で、その不安やプレッシャーに負けないようにすることです。人の走りや周りの状況に左右されない心の強さを持つことが大事です。
安全にライディングするために一番大事なのは『侮らない』かも知れません。バイクを走らせている時は『全ての路地から人や車や自転車が来るかもしれない』『コーナリング中に対向車のオーバーランがあるかもしれない』『ブラインドコーナーの立ち上がりに障害物があるかもしれない』など想像力を働かせて常に危険な場面を想定します。また、気持ちのいい風や天気で気が抜け過ぎてしまうのも良くありません。僕はサーキットの練習走行のとき、『今日はいい天気だなあ』と思いながらコースインして、すぐの1コーナーでリアを大きく滑らせてハイサイドを喰らい腕を骨折したという苦い経験があります。ほんの一瞬の油断が、取り返しのつかない事故へと繋がる可能性もあるのです。
普段の生活でも、これらのことは役に立つと思います。気持ちをニュートラルに保つ訓練は、いつもどんな時でも行うことができます。そしてこの訓練は、必ず自分の人生のプラスとなるはずです。
山のポーズ
気持ちを落ち着かせ、集中力を高めるために、ヨガを取り入れるのも効果的です。
ヨガの山のポーズというのは、一見単純なポーズなのですが、ヨガの最も基本となる形であり、誰もが取り入れやすいと思いますのでここで紹介します。
まず両足の親指を揃えて真っ直ぐに立ちます。左右のバランスを均等にして、肩と首の力は抜きます。そして、おヘソを後ろへ引き、お尻を締めます。
腹式呼吸で息を吸って、ゆっくり息を吐きながら、頭は空へ向かってまっすぐ伸びていくように、足は地面に根を張るようにイメージをしながら、目を閉じ、呼吸に集中します。
バイクに乗っている最中もこの山のポーズの感覚で身体をリラックスさせ、精神状態を安定させることが、安全なライディングの鍵です。
勢いや根性に任せていてはミスを誘発するばかりで、安全にも速さにも絶対につながりません。