38.7
銭湯の終わりかけの時間、まだ湯船には彼がいた
同じ年に卒業して、いま同じ町に住んでいる
卒業から一年、これからどう暮らしていくのか話をきいた
ここの居心地のよさや人の面白さにお別れをするのか
彼は言っていた
手放せないものは何もないから
そう言っているのを羨ましく思った
潔い
執着も未練もなく、清々しく生きている
手放しちゃいけないものってなんだろう
最後のカレンダーには思いつくままに描こうと思った
余白がどんどん埋まっていく
たった3年間しかいなかったこの町にこれだけの思い出が溢れかえっている
こんなにたくさんの人と関わった
最近掃除をするたびに、涙で視界がぼやける
この3年間があるとないとでどう変わっただろうか
地域の中にダイブできたのか
修了はろくに評価のないまま
古民家にはたくさんの人が来た
ポリーになりたい人と付き合った
お酒とぴんくな夜が続いた
町に帰るといくつもの顔がいつもあったし
たくさんのプレイヤーがいる
一緒に体動かして働いてご飯食べる仕事が好き場所をつくる人も直す人も守る人も好き
夜中にノリで海に連れてっちゃう人が好き
行くたびに具が増え続けるスパゲティが好き
ゆるくさばい同居が好き
涙腺こわしたときは抱きしめてくれる人が好き
別れはきっと最後の別れじゃない
彼はきっと知ってる
僕もそうだと思いながら、でも涙をとめられない