第5回 同じ失敗でも、感情がちがう。
白川:
「失敗」でおもしろいのは、
失敗から学べるものもあることじゃないですか。
遠藤:
たくさんありますね。
白川:
失敗をゆるし合える環境になったとき、
失敗からの学び方も変わるのかな、と
ふと思ったんですが、どうなんでしょう。
遠藤:
失敗との付き合い方、ってことですか?
白川:
おおきく言えばそうです。
失敗をゆるすことが一歩目で、
失敗から学ぶことは二歩目だとしたら、
その二歩目の部分は、変化するのかな、と。
遠藤:
そうですね..
「失敗展」自体は、その二歩目にあたる部分には
関与していないと思います。
まずは、一歩目の許容するに焦点を当てていて。
白川:
なるほど!
たしかに、一歩目はなにより大事ですね。
聞きながら、自分で思っちゃったんですけど(笑)
遠藤:
たしかに、成功の素につなげる分析や
他者からのフィードバックのされ方といった
失敗との付き合い方も大事だと思います。
白川:
でも、自分がいちばん
わかっているでしょうしね。
この前思ったんですけど、
わるいことをしたときに、いちばん怖いのは
ゆるされることなんじゃないかな、って。
遠藤:
ああ...。
白川:
文句を言われたり、責められたり、
そっちのほうが楽かもしれないと思ったんです。
ある意味、その時間だけで済みますから。
何も言わず、ゆるされるほうが怖い。
あくまで、ぼくの経験上ですけど。
でもそれは、自分で振り返る機会を
与えてもらっているってことじゃないですか。
遠藤:
そうですね。
それ、めちゃくちゃポジティブな人に、
言われたことがありました。
白川:
へえー!
遠藤:
失敗を失敗と捉えない人で、
すごい前向きな人なんですけど。
「そんなに失敗をゆるしてしまったら、誰もがわざと失敗するよ」って言われて。
白川:
ああー。
でも、わざと失敗できたら、
もはや成功に近いですよね(笑)
遠藤:
たぶん、その人が言いたかったことは、
ゆるされることって、そういう危険も孕んでるよ
ってことなんだと思います。
白川:
もしかしたら、その方も
ゆるされることが怖かったのかもしれませんね。
そういえば、イラストの中で、
遠藤さん自身の失敗はあるんですか?
遠藤:
もちろん!
大半の失敗は、私です(笑)
白川:
自分の失敗って、描きながら
どんな気持ちになるんですか?
遠藤:
あ、でも、描いてるのって
日常的な失敗とか、クスって笑えるようなもので。
重たい失敗とか、ほんとに笑えないような失敗は、
なかなか絵にできないんです。
白川:
感情が一緒についてきちゃうんだ。
遠藤:
そうそう。
あ、感情の話でいうと、
「失敗展」のイラストは
ぜんぶ目が入っていないんです。
白川:
あ、ほんとだ!
遠藤:
目を入れていないのは理由があって、
目を入れちゃうと、感情が出ちゃうんですよ。
白川:
あー、なるほど。
遠藤:
口とか眉毛とかが入って
なんとなく表情が読み取れるのもあるんですけど、
基本的には絶対目を入れないんです。
それは、その「失敗」がその人にとって
おもしろかったのか、悲しかったのかなど
それぞれ受け取り方が違うだろうし、
感情を限定しちゃうと、共感できなくなっちゃう。
白川:
すごい。
とってもやさしい考え方ですよね。
それって、どこから行き着いたんですか?
遠藤:
えー、なんだろう..
なんだろうなあ。
失敗談を集めていたときに、
みんな感情も一緒に書いてくれたのはあって。
白川:
「〇〇があって悲しかった」とかですね。
遠藤:
あ、そうだ!
同じ失敗なのに、ぜんぜん違う感情を
持っていた人がいたんです!
白川:
ああー。
遠藤:
たぶん、寝坊の失敗だったと思うんですけど。
寝坊して約束に間に合わなくって..
で、どん底だ。ってなっちゃった人もいれば、
それを機に仕事をやめた人がいて(笑)
白川:
えええ!
遠藤:
そのおかげで、今ハッピー!みたいな。
同じ寝坊なのに、バラバラだなと思って(笑)
それがあって、同じ失敗でも
感情が違うことに気付いたんです。
その頃、ちょうど失敗の定義で悩んでたので、
感情はこっちで決めちゃダメだなと思って。
白川:
どっちの捉え方が良い悪いじゃないですしね。
遠藤:
そうです。
じつは、そんなエピソードがありました。
(同じ失敗でも、感情が違う人がいる。失敗談は、明日でおわります。)