全力で投げたやつだけが、ちゃんと負けれるのだ。

*ジャズってのはいい。いいもんだ。と、ぼくはジャズに詳しくないけれど思う。素人だし、ほんとうに有名な人ばかりしか聞かないし、歴史も成り立ちも変遷も知らないけれど、それでもジャズが好きだ。小難しく聞こえるけれど、非常にシンプルで、心揺さぶられる。音楽を聴くのに、ほんとうは知識なんて要らない。耳で聞いて、心で聴くものだ。

ジャズだと、ぼくが好きなのはローランド・カーク。ミンガスも好きでよく聴くけれど、そもそも入りは好きな作家の作品に出てきたカークだった。あと、ピアノが好きなのもあって、ジャズピアニストだとめっきりミシェル・ペトルチアーニ。彼のピアノは本当に力強くて、心の鬱憤を晴らしてくれる。同時に、憂鬱さや寂しげな表現も素晴らしい。調べていたらペトルチアーニの映画もあったので、今度観てみることにしよう。

グルーヴ、バイブス、セッション、色んなカタカナで表現されるし、サックスやギター、ベース、ドラム、フルート、色んな楽器が出てくるけれど、ジャズは本当にシンプルな殴り合いみたいなもんだと、ライブ盤を聴いていて思う。お互いの演奏を聴いて、その次に自分がどれだけ素晴らしい演奏をするか、の殴り合い合戦。おれが一番だ!と演奏した後に、そのパンチをかっさらうようなキックが出たり、今日イチの拍手を塗り替えられたりする。そこに順番の妙なんてのは言い訳にならない。それでいて、誰も傷付けない。今からでもジャズミュージシャンになりたいと思うほど、かあっこいいもんね。

全力で投げて、全力で受ける。受けた人がまた、全力で投げる。その繰り返しだ。そこにハンディキャップやネームバリュー、不平等や不公平に文句を垂れる人はいない。いたとしても、演奏でお客さんにそれはバレる。だからこそプレイヤーは全力で投げて、打って、走り抜ける。それがかっこいいんだよな。全力でやるって、やっぱり素晴らしくかっこいいぜー。全力でやった人だけが、ちゃんと負けることができるってのも、大事なことだよな。自分が全力を出していないことを、自分以外のせいにしていないことだったりとかさ。


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