第4回 環境としての「失敗展」。
白川:
遠藤さんの福井での「失敗展」で、
すごく感じたことがあって。
遠藤:
なんでしょう。
白川:
失敗の展示そのものよりも、
場づくりを意識しているな、と。
ぼくも展示をしたり、グループ展に
参加させてもらったりするんですけど、
どうしても作品が前に出るじゃないですか。
遠藤:
そうですね。
白川:
でも遠藤さんの「失敗展」は、
イラストが前に出るんじゃなくて、
イラストを通して生まれるコミュニケーションに
重きを置いてると感じました。
遠藤:
本当にイラストを見て欲しかったら、
あんな展示の仕方はしないですしね(笑)
白川:
だから、遠藤さんは
「失敗をゆるそう!」みたいな
メッセージを伝えたいというよりも、
「失敗をゆるし合える」ような
環境、場づくりをつくりたいのかな、と感じたんです。
推測でしかないんですが、
そこにも惹かれてしまいました。
遠藤:
そうですね。
良くも悪くも、不完全な展示だなーと
毎回思っちゃいます。
白川:
でも、その不完全さが魅力でもあります。
遠藤:
今回の福井での「失敗展」でも
やらかし隊が独自に展示ブースを作り出して。
白川:
独自に?
遠藤:
今回、「恋愛」と「性愛」をテーマに
イラストを描いてたんですけど。
白川:
18禁ゾーンがありましたよね。
遠藤:
そうです。で、やらかし隊から、
「18禁の失敗談、ちゃんと集めたら?」って言われて。
でも私は、18禁の失敗は
誰も書かないと思うんだよねーって話してて。
でも、やらかし隊が模造紙を置いて、
「18禁の失敗を書いてください」とつくったら、
30個以上も集まっちゃって(笑)
しかもそれが、おもしろいんですよ。
白川:
普段出せない分、機会があれば
外に出したいものなんでしょうね。
遠藤:
それも私ひとりだと、やってなかったです。
特に私は「失敗」を扱っているので、
このエリアは写真NGとか、ルールがあって。
あくまで私の中のルールなんですけど。
白川:
たしかに、扱いづらいものです。
遠藤:
プライバシーを守るために配慮してたら、
私にできない部分を、やらかし隊が補ってくれて。
そんなことはたくさんありますね。
白川:
それも、「みんなで」の強さだ。
遠藤:
「失敗展」にきてくれた人は、
なにがなんでもワクワクして帰って欲しいので。
白川:
確かに、帰り道とかワクワクしそうです。
遠藤:
「失敗展の帰り道に、こんな失敗しましたー!」
って、とっても多いんですよ。
あと、展示の入る際に名前を書いてもらうんですが、
そこで字をまちがえちゃった、とか。
それってもう、その人自身のなかで、
失敗をゆるせちゃってるじゃないですか。
白川:
いいですね、それ。
遠藤:
そんな心の余白が「失敗展」で
できたら、うれしいです。
白川:
そんな環境が「失敗展」を
通してできたら、素敵ですね。
ぼくは、人間って
限りなくグレーだと思っていて。
遠藤:
はい。
白川:
例えば、
「いい人」と「わるい人」がいるんじゃなくて、
誰しもの中で、「いい自分」と「わるい自分」が
綱引きしあっていると思うんです。
白か黒かではなくて、人間自体はグレーというか。
遠藤:
なるほど。
白川:
そのグレーの部分を「失敗」でみると、
たぶん誰しもが、人の失敗は責めたくなって、
自分の失敗はうまく無かったことにしようとする。
人それぞれ、その濃度が違うだけで、
もはや、人間の特徴と言ってもいいんじゃないか、と。
じゃあ、全体のその濃度を薄めることができるのは、
「環境」が持つ力なんじゃないかな。
それが「失敗展」にはある気がします。
遠藤:
うれしいです。
だから私、「失敗展」を
常設できればおもしろいなと考えていて。
今は巡回展って形式なので。
白川:
それは、おもしろさの中身が
また変わりそうですね。
遠藤:
というのも、同じ学科のみんなが
卒業制作の発表展示のとき
「その失敗は、ももちゃんの失敗展に
入れておけばいいじゃん!次行こう!」
って言ってくれたんですね。
白川:
おもしろい!
遠藤:
そのマインドチェンジが
パッとできるのが、おもしろいなと思って。
例えば、プロジェクトの中や学校の中に、
「失敗展」の要素や教室があって、
そこにいけば失敗を消化してくれる、みたいな。
白川:
逃げ場があるってことですね。
遠藤:
環境として、意識として根付いたら
いろんなチャレンジが生まれやすくなるんじゃないかなって。
失敗展の夢が3つあって、
そのうちの1つが「学校に入りたい」なんです。
白川:
いやあ、ぜひあって欲しいです。
遠藤:
意識が環境として根付くと、
変わっていくと思うんですよね。
(「失敗展」が学校にあったら、うれしいなあ。また明日につづきます。)