孤独という湖に棲んでいる

*先日のみのおキューズモールでのワークショップ終わりに、たまたま近くでやっていたdannyさんの展示へ向かった。オープン時間は過ぎていたのだけれど、快く迎え入れてくださり、お言葉に甘えてゆっくり絵を見させてもらった。山の中、日本のあらゆる場所の景色、植物、あらゆる絵がすべて繊細で、いくつもの糸が重なってできている織物のように見える。

中でも、端の方に飾られていた砂浜を犬とバイクで走っている絵に、なぜかものすごく心を射抜かれた。その絵を前にしたとき、そこへ逃げ出したくなるような美しい景色に心を奪われた。一目見た瞬間、なぜか心の中のいくつもの景色と、いろんな感情とその絵がたしかに繋がって、しばらくその絵の前から動けなくなった。

誰かの描いた絵が、たしかに自分の思い出や記憶、いろんな感情と繋がって、共鳴する。それはなんとも、ふしぎな感覚だ。ぼくのことはもちろん知らないだろうし、ぼくもその人のことを詳しく知らない。けれど、まるで共通の思い出でもあるかのように、自分の言いたいことや言いたかったこと、言葉にできない様々な感情が、たしかにその絵の中に詰められている気がした。

人は誰しも、心の中に「孤独」という湖が棲んでいる。その湖は、海かと思うくらい広くて大きくて、時折、呑まれそうになる。かと思えば、抱きしめたいほど美しい月夜もある。その湖には誰も住んでおらず、誰も連れてくることもできない。ただ、その湖は、別の誰かの湖とも繋がっているのかもしれない。

誰もが孤独を抱えていて、みーんなひとりだ。湖にはぽつねんと、自分一人だけが佇んでいる。ただ、その景色の向こう側に、見えないけれど同じように湖に佇む誰かがいる。それを思えたら、少しだけ、その湖がいつもより美しく映った気がした。


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