PENTAX 17
PENTAX 17は、2024年7月12日に発売されたハーフサイズフォーマット単焦点フィルムコンパクトカメラです。PENTAXブランドでフィルムカメラの開発検討をおこなう「フィルムカメラプロジェクト」としてスタートした企画から誕生しまた。
PENTAXとしては、2003年に*ist(イスト)がこれまでに販売された最後のフィルムカメラでしたので実に21年ぶりのフィルムカメラの発売で、初のハーフサイズフォーマットのカメラです。
PEXTAX 17はハーフサイズフォーマットで、通常の35mm判フィルムを約半分の17mm×24mmを使用するのでポートレートモード(縦構図)が基本となります。
通常のカメラはランドスケープモード(横構図)がほとんどですのでファインダーを覗くと最初は違和感を感じますが、スマートフォンのカメラを使っている世代であれば縦長ファインダーでもすぐに慣れるのではないかと思います。
PENTAX 17のファインダーには距離計はなくレンジファインダーのようにピントを合わせる機能はありませんが、視野枠に被写体がおさまるように構図を決めゾーンフォーカスマークを確認しながらシャッターを切るという一連の操作が基本となります。
レンズキャップを付けたままだったり巻き上げ忘れだった時でもファインダー右にあるインジケーターランプが点滅して誤シャッターを防ぐ機能が付いていています。
ファインダー右にはケーブルスイッチ端子があり、別売りのケーブルスイッチCS-205を接続しブレなくバルブ撮影をすることが可能です。
グリップ部分が電池室にもなっていてグリップ取り付けねじを外して電池を交換します。このグリップの出っ張りが握りやすくシャッターを切って巻き上げる時に滑ることなくしっかりとホールドしてくれます。
グリップ取り付けねじは説明書にも記述がありましたが本当に紛失しやすいので、電池交換はテーブルの上で行った方が良さそうです。実際外で電池を交換する時に立ったまま交換していると、ねじが落ちコロコロと転がってどこか行ってしまいそうでした。
フィルムの巻き戻しも手動です。底面の巻き戻しボタンを押して巻き戻しクランクを起こし時計回りに回します。手作業で行う1つ1つが、まるでオールドカメラを使用しているかのような懐かしい感覚が蘇ってきます。
軍艦部は操作系のダイヤルが中央手前にまとめられており操作しやすい位置にまとめられています。
巻き上げレバーは予備角があり、レバーを少し動かすと巻き上げがしやすい角度で止まるようになっています。撮影時はこの角度から巻き上げをして、移動時には左側に押し込んで収納すれば誤動作が防げる仕組みになっています。
撮影時に毎回左側に押し込んで撮影しているとモードダイヤルが一緒に回ってモードが勝手に変わる失敗もありましたので、巻き上げレバーの使い方を覚えておくと良いでしょう。
底面には巻き戻しボタンがあり、撮影し終えたフィルムをパトローネに巻き戻すときに押します。また、三脚用の1/4インチねじ穴もありますので三脚に立てて撮影ができます。
電池の交換
電池の交換は、カメラ側面にあるグリップ取り付けねじをコイン等で回しグリップを取り外します。
グリップとグリップ取り付けねじは、カメラから完全に分離しますので紛失しないように注意してください。
使用する電池はリチウム電池 CR2で比較的入手しやすいタイプです。
電池はプラスが下側になるように電池室に挿入します。
グリップをもとの位置に取り付けて、グリップ取り付けねじを締めます。
フィルムの入れ方
PENTAX 17はフィルムの入れ方は全て手動で行います。通常の機械式フィルムカメラと同様ですので一度覚えると難しい作業ではないのでコツを覚えましょう。
モードダイヤルをPに合わせて、レンズキャップを取り付けます。
巻き戻しクランクを引き起こし巻き戻しノブを引き上げると、裏ぶたが開きます。
この時、巻き戻しクランクを持って引っ張らないように注意してください。巻き戻しクランクを持って引っ張ると巻き戻し軸が曲がる事があります。
フィルムのパトローネ軸の出っ張りを下にしてフィルム室に入れます。
フィルムのリーダー部を少し引き出し、橙色のフィルム先端マークに合わせま裏ブタを閉めます。
電源をオンにします。
巻き上げレバーを右方向に回しシャッターを押します。
フィルムカウントが0になるまで巻き上げレバーを右方向に回しシャッターを押る操作を繰り返します。
巻き上げレバーを右方向に回している時に巻き戻しノブが回転していることを確認します。
使用するフィルムに合わせて、フィルム感度を設定します。
ISO感度ダイヤルロック解除ボタンを押しながら、ISO感度ダイヤルを回し指標に合わせます。
裏ぶたにあるメモフォルダーにフィルム箱の切れ端を入れておくと使っているフィルムの種類が分かりやすいので、積極的に活用しましょう。
フィルムの巻き戻し方
フィルムを最後まで撮影したら、フィルムを巻き戻してパトローネに収納します。
まず、底面にある巻き戻しボタンを押し込みます。
次に、巻き戻しクランクを起こし時計回りに回します。
巻き戻しの感覚が軽くなったら後3回ほど回します。
巻き戻しノブを引き上げて裏ぶたを開き、パトローネを取り出します。
撮影モードの設定
PENTAX 17には、7種類のモードがありモードダイヤルを回して設定します。
AUTOはフルオートでパンフォーカスに設定されますのでゾーンフォーカスが効かなくなります。ゾーンフォーカスの醍醐味を味わうためには、AUTO以外に合わせて撮ることが必要です。
基本モードはP標準に合わせ、シャッター半押しして露出警告が出た時に、低速シャッターや日中シンクロ等に変更して撮影するというのがお奨めの使い方です。
AUTO フルオート
パンフォーカスプログラム / フラッシュ自動発光 / フォーカス固定
P 標準
プログラム / フラッシュ発光なし / ゾーンフォーカスリングで設定
🌙 低速シャッター
低速プログラム / フラッシュ発光なし / ゾーンフォーカスリングで設定
BOKEH 絞り開放優先
開放優先プログラム / フラッシュ発光なし / ゾーンフォーカスリングで設定
B バルブ
プログラム / フラッシュ発光なし / ゾーンフォーカスリングで設定
P⚡ 日中シンクロ
プログラム / 強制発光 / ゾーンフォーカスリングで設定
🌙⚡ 低速シンクロ
低速プログラム / 強制発光 / ゾーンフォーカスリングで設定
撮影距離の設定
AUTOモード以外のモードでは、被写体との距離に合わせてゾーンフォーカスリングを回し設定し撮影します。
ゾーンフォーカスリングのアイコンの種類でピントが合う範囲を憶えておく必要がありますが、分からない時はゾーンフォーカスリング下側にmとftで代表値が表示してありますので正面から見て確認することもできます。
ファインダーを覗くとゾーンフォーカスのアイコンを見て確認することが出来ます。ファインダー周りのデザインがちょっと変と思っていましたが、実際ファインダーを覗いてみるとゾーンフォーカスのアイコンが確認しやすくなっていて機能美優先のデザインだと納得できました。
被写体との距離間隔はオートフォーカスが当たり前のカメラを使っていると感覚がなかなかつかめなので、目安を記憶しておいて距離間隔を掴んでみたいと思います。
クローズアップは付属のストラップと手を使って距離を正確に測れますが、至近距離から中距離までの1~5mが一番難しく腕の長さや歩幅を使って距離を憶えて感覚を掴んでいこうと思います。
🗻 遠距離 ∞
ピントが合う範囲 5.1m~∞
目安 : タクシーの全長より遠い時(タクシーの全長は約4.8m)
👪 中距離 3m
ピントが合う範囲 2.1m~5.3m
目安 : 歩幅3~7歩分(歩幅は身長×0.45)
🧑🤝🧑近距離 1.7m
ピントが合う範囲 1.4m~2.2m
目安 : 歩幅2~3歩分(歩幅は身長×0.45)
🙍至近距離 1.2m
ピントが合う範囲 1.0m~1.4m
目安 : 片腕を広げ反対側の肩まで長さ(身長の2/3)~両腕を広げた長さ(身長とほぼ同じ)
🍴クローズアップ(テーブルフォト) 0.5m
ピントが合う範囲 0.47m~0.54m
目安 : ストラップの長さ(ストラップ長 約25cm)+手を広げた親指から小指までの長さ(約20cm)
🌷クローズアップ(マクロ) 0.25m
ピントが合う範囲 0.24m~0.26m
目安 : ストラップの長さ(ストラップ長 約25cm)
作例
PENTAX 17のレンズは3群3枚でいわゆるトリプレットレンズで、明るくシャープな写りが特徴となっています。見た目チープなレンズに見えますが、フレアや色収差も少なくエモさは微塵も感じない堅実な作りのレンズでした。
逆光時は若干アンダー気味に撮れますので露出補正ダイヤルでオーバー気味に設定して撮ると良いでしょう。
ゾーンフォーカスは、被写体との距離をきちんと測ってゾーンを設定して撮った場合、ピントが合っていてかつシャープに写りました。
すべてがフルオートで気軽に撮れるデジタルカメラ時代に一石を投じるPENTAX 17は、フィルムカメラの新たな可能性や創造性を生みだします。1枚1枚に込めた写真を手動で感じ取りながら撮影し、現像に出して仕上がるがまでのゆっくりと流れる時間を楽むのも良いかと思います。
フィルムカメラと言えどもPENTAX 17は最新機種ですので写りはバッチリで安定しています。初めてフィルムカメラを始めてみたい方にもお薦めしやすい1台です。