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Rollei 35
Rollei 35は、1966年にフォトキナで発表され1967年に発売された元祖高級コンパクトカメラです。
ボディ前面にダイヤルを配したデザイン等を特徴とする設計は、ハインツ・ヴァースケ氏によるもので、当時流行していたハーフカメラよりも小型化に成功したライカ判(24×36mm)カメラです。
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カール・ツァイスのレンズ、デッケルのコンパーシャッター、ゴッセンの露出計と贅を尽くした部品をコンパクトなボディに詰め込み、写りも非常にシャープで流石ドイツの当時の技術を集結したカメラと言ったところです。
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1971年以降は製造施設をシンガポールに移し、レンズはライセンスを受けて「Made by Rollei」の自社ブランドのテッサーレンズを搭載するようになりました。
さらに、シンガポール製のファインダーはドイツ製のものより小さくファインダー倍率がドイツ製より小さくなっています。
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製造国は背面下部に刻印してあり、ドイツ製はMADE IN GERMANY BY Rolleiで、シンガポール製は、MADE BY Rollei SINGAPOREとなっています。
極初期型のドイツ製には、MADE IN GERMANY BY Rolleiの後に「- Compur - Gossen - Zeiss」と表記しています。
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ボディ右側面には、ストラップホルダーがありストラップ末端の金具をスライドしながら押し込んで取り付けます。一度取り付けると板バネを押し込んでスライドさせない限り外れる事はないので安心してストラップを活用できます。
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フィルム巻き上げレバーは左側にあり左親指で時計回りに回転させることでフィルムを巻き上げます。
初めて使った時不便だと思っていた巻き上げレバーの位置ですが、シャッターは右に巻き上げは左と両手でカメラを構えるようになり、ブレの少ない安定した構え方が自然と出来ていました。
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ボディを上から俯瞰すると撮影で必要なダイヤル値を確認でき、露出計を見ながらダイヤル設定ができるので使い勝手の良い設計と言えます。
ただ、シャッターボタンとレンズロック解除ボタン位置が近いので間違ってロック解除ボタンを押してシャッターが切れないことがありました。シャッターボタン位置を確認しながらシャッターを切るゆとりが必要です。
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ボディ底面にはホットシュー、裏蓋開閉レバー、フィルム巻き戻しクランク、フィルムカウンター、三脚ねじ穴があります。
底面は見えにくい部分なのでメカメカしいですが、ガタつくことなくカメラを置ける配置になっていて、このカメラが秩序よく設計されているのが分かります。
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裏蓋の開閉
裏蓋を開けるときは、裏蓋開閉ノブを回転させ解除します。
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カメラ本体から裏蓋を下にスライドさせると外れます。
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裏蓋を閉じる時は、開ける時と逆の操作をします。
カメラ本体に裏蓋を下から真直ぐにスライドさせ完全に本体と噛み合わせます。裏蓋開閉ノブを元の位置に回転させロックします。
電池の交換
Rollei 35は、メカニカルシャッターですので電池がなくても撮影は可能ですが、露出計を使う場合電池を入れて使います。
裏蓋を開けると本体のパトローネ室の上側にバッテリーカバーがあります。
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バッテリーカバーをコイン等を使って回し開けます。
1円玉が開けやすいサイズで傷が付きにくいのでお勧めです。
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Rollei 35で使用する電池は、MR9(またはPX13、PX625)と呼ばれる1.35Vの水銀電池を使用しますが、現在は生産終了しており購入出来ません。代替品としてSR44またはLR44をMR9に変換するアダプターを付けて使います。
変換アダプターを使った場合、電圧が1.5Vと若干高くなり露出計の値が1/3段ほどの露出の違いが出るようですが、認識できるほどの差ではないので気にせず使いましょう。
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プラス側が外から見えるように電池を入れバッテリーカバーを取り付けコイン等を使ってしっかりねじ込みます。
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フィルムの装填
裏蓋を開け、フィルム圧板を手前に倒します。
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パトローネ室にフィルムパトローネを入れます。
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フィルム先端部を少し引き出し巻き上げスプールのスリットに入れます。
フィルム給送スプロケットとフィルムの穴が完全に噛み合っていることを確認します。
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1度シャッターを切り巻き上げレバーを回しフィルムが給送していることを確認します。
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フィルム圧板を元の状態に戻します。
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裏蓋を戻します。
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裏蓋開閉ノブを回転させロックします。
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フィルムカウンターが1になるまでシャッターを切り巻き上げレバーを回す操作を繰り返します。
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フィルムのISO感度にフィルム感度設定ダイヤルを合わせます。ASAの△がISO感度に相当する値です。この時左右の突起を利用してクリックの止まる位置に設定します。
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フィルムタイプ設定ダイヤルを使って使用するフィルムの種類NEG.(モノクロネガ)、COLOR NEG.(カラーネガ)、COLOR💡(タングステンフィルム)、COLOR☀(ポジフィルムまたはデーライトフィルム)を設定します。
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フィルムの取り出し
カメラ背面にあるフィルム巻き戻しレバーを上方向に回します。
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カメラ底面にあるフィルム巻き戻しクランクを外側に取り出し、フィルムを巻き戻す抵抗が無くなるまで矢印の方向に回します。クランクを元の位置に戻しフィルム巻き戻しレバーを下に戻します。
裏蓋開閉レバーのロックを外し裏蓋を外します。フィルムパトローネを取り出します。
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撮影の仕方
レンズキャップを外してレンズを引出します。
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レンズを確実に固定されるまで右に回します。
この時正面から見ると、絞り値をF3.5にしていると絞り羽根が広がっていくのが見えます。
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カメラを被写体に向けて露出計を見ながら絞り値ダイヤルとシャッタースピードダイヤルを調整します。
白い針が赤い指針の丸い部分が針の中に納まるように調整できれば適正露出になります。
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上から俯瞰するとフォーカシングリングにmで値がありますので、フォーカシングリングを回して設定したい距離を△に合わせます。
フィート(ft)で合わす場合は、下から見ると表示されています。
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ファインダーを覗き構図を決めシャッターボタンを押します。
フィルム巻上げレバーを止まるまで回し、次の撮影ができる状態にしておきます。
撮影後はレンズロック解除ボタンを押して、レンズを左に回してボディ内に押し込み収納します。収納するとシャッターボタンはロックされます。
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レンズキャップのゆるみを改善する
Rollei 35の純正キャップはプラスチック製で長時間使用したキャップは緩んでいるものがあります。緩むとキャップとしての役割を果たさなくなり紛失する可能性もありますので緩まないようにキャップの内側にスペーサーを付けてみます。
探してみたところ、100均で販売しているシールフェルトの黒が使えそうなので購入してみました。
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シールフェルトの黒を幅2mmほどにカットしてフォーカシングリングのギザギザ部分に合わせてキャップの内側に2ヶ所貼り付けます。
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すこしきつくなりますがキャップの片側を先にレンズにひっかけて被せるようにすると、簡単に取れることなく上手くキャップできるようになりました。
作例
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Rollei 35を使ってみて驚いたのはゾーンフォーカスでもピントが合った写真はとてもシャープな写りだったことです。特に順光の光で撮った写真はデジタル機で撮ったかのような解像度感でスキャン結果を見る度に感動してしまうほどでした。
写りで気になったのは、下から2,3枚目の写真の様に逆光の写真はフレアやゴーストの多い写りとなっていたことです。本来の写真からすると失敗写真になりますが、このオールドレンズにしか出せない特性を活かした写真が撮れるとも言えるでしょう。
Rollei 35は初めて触った瞬間に一目ぼれするほどの美しさで、カメラを持った時のしっかりとした質感や、沈胴したレンズを引っ張りだし回転させる所作、俯瞰しながらダイヤルを回し露出を設定する市草など、使う度にカッコよさに惚れてしまうのです。一生もの大切なカメラを手に入れたそんな気持ちにさせてくれました。
50年以上も前からあるカメラでここまでカッコよくてコンパクトでシャープな写りが撮れるのを知っていたならもっと早く手にしておくべき一台でした。
余談になりますが、今年Mint CameraからRollie 35 AFが発売されルックスも似ている上オートフォーカスが追加されていますが、搭載されているレンズは全くの別物です。Rollie 35 AFはRollieLens 35mm F2.8のレンズを搭載していますが、果たして写りがどれほど受け継がれているかが気になるところです。
Rollie 35 AFの1/3ほどの値段で中古のRollie 35を購入できますし、ここまでシャープな写りが撮れるのであればゾーンフォーカスでもRollie 35をお勧めしたいと思います。ただ、50年以上も前のカメラなので状態の良い中古を見つけるのは至難の業です。状態の良いRollie 35を見つけたい場合はネットオークションではなく中古カメラ屋で実物を見て動作確認をしてから購入されることをお勧めします。