72. 泥棒ポケット
やぁ少年、先程わたしのポケットから
財布をすったね。
随分手慣れているようじゃないか、
何件かやったね。
でも、わたしに目をつけたのが運のつきだ。
中身を確かめてごらん、
お金だけすっかり消えているはずだから
財布だけは取り上げずにおこうじゃないか
きみの努力に免じてね。
え?中身がどこに消えたかって?
実はわたしのこのコートは少々特殊な品でね。
このポケットに手を入れれば
欲しいものが手に入る
しかし、それは
すでにどこかに存在しているものをポケットに移動させているに過ぎない。
要は、きみがすった財布から、
このポケットに中身だけ移動させたというわけ。
例えば、
わたしがビスケットが食べたいと願う
そうすると、ほら
"ポケットの中にはビスケットがひとつ♪"
食べるかい?ほら、本物だろう?
いくらだって出せるよ。ほらもう一枚。
あはは、"そんな不思議なポケット"なんだよ、これは。
でも、こうしてわたしはビスケットを2枚移動させてしまったわけだから
本来より2枚減ったビスケットのお菓子がどこかに存在してしまっているというわけ。
まぁ、ものは使いようだが
少ないリスクで簡単に泥棒もできるね。
ただし、ポケットから取り出せる
サイズのものしか移動はできないけど。
なんでこんな話をするかって?
実は、頼まれてほしいことがあってね。
見事やってくれたなら、このコートをあげてもいいと思っている。
どうだい?悪い話じゃないだろう?
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72/100 「ポケット」
絶対危ないやつ。胡散臭さがすごい(笑)
今回は、お友達のれんぷくさんにお願いし、
同じテーマで文章を執筆していただきました。
れんぷくさんの作品:「過去を歩くということ」
ぜひ、こちらもあわせてご覧いただけましたなら幸いです!
れんぷくさん、本当にありがとうございます。
「絵描きさんに100のお題」に文章で挑戦中。
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Domino/1782/100.html
演者ありきの文章です。よければ、声にしてください。
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