ついに4分台へ
2月の終わりの日曜日、男子マラソン界にとんでもない記録が誕生した。今大会で滋賀県開催は最後となるびわ湖毎日マラソンで、鈴木健吾選手(富士通)が2時間4分56秒の日本新記録が生まれた。以下は正式記録のリンクである。
テレビで見ていてもそのスピードの凄さが伝わったが、給水を取り損ねてからスパートした36km以降、日本人が体験したことのないスピードであったことがわかる。
35-40km 14'39"(2'55"/km)
40-Finish 6'16"(2’51”/km)
1km毎のラップが伝えれられる度に、実況席が絶句していたことがTwitterで話題になったが、それくらいすごいことだったのだ。大迫選手がシカゴで記録を作った時も35km以降は速かったが、ラスト2.195kmはさすがに落ちてしまった。しかし、今回の記録はラストも2分50秒台前半、もしかすると42.195kmの中で最速だったかもしれない。誰も経験したことのないスピードを目の前で見ているのだから、そりゃ"絶句"する。
ベスト記録は2時間10分台だったし、ロードに強いとはいえ、まさかここまでやるとは…と思った人が多かっただろう。ちなみに今回のトップ3は皆一般参加の選手である(2位 土方選手(HONDA)、3位細谷選手(黒崎播磨))。招待選手が額面通りとはいかなかったと捉えることもできるが、日本のトップレベルが拮抗しているからと見るほうが正しいだろう。ちょっとしたコンディションやプレッシャーの差で、こうも入れ替わってしまうのである。
鈴木選手といえば、神奈川大学在学中の箱根2区(3年時)、全日本8区(4年時)が印象強い。この代で学生長距離界のロードでは向かうところ敵なしだった。去年の全日本も駒澤大学がアンカー8区に田澤廉選手を持ってきて優勝したが、この時の神奈川大学もそうだった。
あの時から綺麗なフォームで走る選手だったが、富士通に入ってさらに動きがスムーズになったと見えた。自分は動作解析の専門家でも何でもないが、パッと見た印象で全く力感が無い。あの動きでキロ2分50秒台前半のラップを叩き出す。無理しない動きで走り続けてきたから、35km以降のペースアップが可能になったのだ。終盤に苦しくなるということは、前半からどこか無理をして動かし続けている結果なのだと、今回の鈴木選手のフォームを見ていて、改めて考えさせられる。
最後に、今回の記録は非アフリカ系の選手で初めて2時間5分の壁を突破したそうだ(アジア記録はバーレーンのエルアバシ、アジア大会で井上大仁選手と競り合った選手だ)。最初に聞いたときは、それはすごいなぁと思ったが、これからはルーツがどこであれ、記録は記録という時代になってほしい。びわ湖毎日マラソンは今大会をもって幕を閉じてしまうが、日本人も4分台、3分台で勝負する時代になるターニングポイントになった大会だったと、後世で振り返られるのだろう。