ストーリーとしての競争戦略
やっと、読み終わった。以下の記事で紹介した本である。500ページほどのあったので、なかなか時間が掛かってしまった。
戦略を考えることは面白い仕事のはずである――。そうなのだ、おそらく面白い仕事なのだという感覚は昔からあったのだが、フレームワークやら難しいカタカナやら、とっつきにくいなぁという印象があった。この本はそういったことを最初に否定して(ビジネス書は得てしてそういうものだが)、戦略とはストーリー性を持つものであることを主張している。
ストーリーならば、面白くなくてはいけない。夢中になる小説がそうであるように、話の展開として人に語りたくなるようなもの、それが優れたストーリー(戦略)というもの。だからこそ、一朝一夕で考えつくものではないし、何回も試行錯誤を繰り返し、時に失敗もして、いつか花開くもの。そういった位置付けである。外部環境がよいことに越したことはないが、それはいずれ熾烈な競争下に置かれる。成長戦略は「内を向いている」必要があり、なぜを数多く繰り返さねばならない。たくさんたくさん考えることが必要なのである。
ところで、考えるということは何を指すのだろう。頭の中で思案している状態だろうか。どうも、それはちょっと違うようで、頭の中にあるだけでは考えているとは言えないようだ。手を動かす、紙に書く、文字(図や絵)にする、そういった表現(アウトプット)を伴ったものでなければ考えているとはいえない。この辺の話は、また別のところで詳しく書いてみたい。ストーリーを考える上でも、どんどん何かに表現するべきなのだろう。
作者が優れた戦略家と考える人たちは、一見「普通の人」なのだそうだ。それは、息の長いビジネスとは人間の本性を捉えたものであり、つまり、人間をよく研究することがよいストーリーを生むには欠かせない。普段から、なぜこのような行動をするのだろう、なぜこんな気持ちになるのだろう、ということを考えることを積み重ねることが大切である(ここでも一朝一夕では生まれないことがよくわかる)。
先月、三浦しをんさんの本のことを書いたが、三浦さんも小説を執筆する前にA4サイズで人物や設定の構成を練るそうだ。いきなり書き始めていいものができるわけでもなく、書いているうちに登場人物たちが勝手にしゃべり始めるわけでもなく(たまにそういうこともあるそうだが)、基本的にはきちんと構成を考えたから小説が生まれるそうだ。戦略を立てることも小説を書くことも、根本では同じようなことをやっている。
自分(自社)のやっていることを図式化してみて、何と何がどういうふうに繋がっているのか?を、一度じっくりと考えてみようかなと思わせてくれる一冊であった。
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