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フォークボールの落ちる謎

東工大が面白いプレスリリースを出した。野球のフォークボールがなぜ落ちるのかを解明したという。キーワードはマグヌス効果、回転する変化球として知られるカーブの原理である。

要約すると、通常のフォーシーム(ストレート、と呼ばれるボール)では正のマグヌス効果が働いているのに対して、ボールが落ちる時は負のマグヌス効果が働いていることが明らかになったということだ。正のマグヌス効果の時は、ボール上面の圧力>ボール下面の圧力であるが、負のマグヌス効果の時は逆転する(圧力が大きいほうから小さいほうに流れると考えるとわかりやすい。たとえば、天気図を見ても、高気圧の時は風が上空から地表面に流れる。低気圧の時は反対に地表面から上空に向かって流れる)。

言われてみればそうなんだという感じだが、これを証明することが長い間できなかったそうだ。しかし、それを可能にしたのはスパコンであり、数値流体のシミュレーションを使用したとのことだ。

野球ボールの空力解析には高解像度の計算格子[用語6]を使う必要があり、ボールの表面近傍と後流に高解像度格子を効率よく配置できるようになったことと、移動する縫い目に対して精度の良い境界条件を設定できるようになったことが今回の数値シミュレーションの実現に大きく寄与している。
(プレスリリース記事より)

より細かい条件を設定できるようになったというのがミソである。今までは大まかにしかできなかったものが、場合分けを細かくして実施できるようになったことで、リアルな状態を再現できるようになったということだろう。

マタタビの回でも書いたが、技術の進歩により今までわからなかったことがわかるようになっていくのは、とても面白い。今は飛沫の状態をスパコンでシミュレーションできるから、マスクをする効果の説得力が増す。技術の進歩が人間の生活に役立っているなと感じる例である。

ところで、この研究はスパコンの研究課題として採択されたものだったらしい。こういう課題に研究費が出ていることもちょっと面白いなと思った次第である。

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