ちょっと八つ墓な自治会のこと(By ご隠居4号)
やっと自治会を抜けることができた。
思い起こせば20年前の秋、引っ越してきた時に、道路を隔てた向かいの家にあいさつに伺ったときに「自治会に入るのかい?」と聞かれて、何も考えずに「ハイ」と言ったのが不幸?の始まり。
そもそも引っ越しの挨拶は両隣とお向かい以外はちょっと離れているし行かなくて良いかなと思っていたら、お向かいさんに連れられて回ったのが30軒。それが3班に分かれていてワシの所は第二班だと言われた。新しく自治会にメンバーが加わったのは××さん以来と言われたが、そもそも××さんというのは私が引っ越した住宅の前の持ち主。買った時に見た登記簿の日付は確か30年前。考えてみれば周りは古い住宅と田んぼと雑木林と墓地しかないので、新築もなければアパートもなくてそもそも誰かが転入してくる余地がない。ワシはたまたま情報誌で売りに出ていた中古住宅を買っただけ。そう言えば最初に挨拶で回った時30軒中に飯村が8軒、田中が6軒あってなんか不思議だなぁと思ったかな。
引っ越して初めての正月2日。近所の集まりがあるというので徒歩1分の集会所へ行くと男ばかり10人がいて、自治会の最小単位である第二班の10世帯らしかった。一応議題として黒板に書かれていたのは農地の貸し借りや用水路の管理のことだった。ワシにはいっさい関係のないことではある。その後宴会になって3千円ぐらいの会費を徴収された。知っている人は誰もいないし、農地の話などまったくわからないし。だらだらと宴会は3時間も続いて私ゃ精神的にも肉体的にも(座敷だったので膝の悪い私にはきつい)くたくたになったですよ。幸いに翌年からは正月も休めなくなった仕事の関係で出席しなくなったが、会費はしっかり取られていたし、仕事で正月も休めないからと言っているのに「なぜこない」という無言の圧力もあったな。
年一回あるゴミ拾いの日は、基本的に自分ちの周りをやるってことだったのでそもそもゴミ(ペットボトルや缶)が落ちていないし。それだけ人通りも交通量もないということ。何回か出席した地域全体の総会は範囲が広すぎて(住宅が密集した地域ではないため)ワシなんかにはもう完全に土地の名前も場所もわからない未知の集まり。300人以上もいて地域のコミュニティー感はまったくなしだった。300人だったらちょっと大きいマンションの世帯数ぐらいだけど。そもそもこの公民館に集まるのに8割のひとが車で来る距離感だし。
総会で何を話すのかというと夏祭りの相談だった。公民館前の広場での盆踊り大会がメイン行事で、やたらと係がたくさんあってワシなんかも会場設営の仕事があてがわれたりした。
そんな感じで9年、何事もなく過ぎたのだが・・・。何事もなくとは言っても近所の知らない人の葬式が6回あったけどね。
ある時、歳末の赤い羽根募金だったか何かの集金にきた人に
「来年度はあなたが役員に決まった」
と言われた。仕事も忙しく班の人の顔も名前もわからないので無理と言っても、もう決まったことと言われた。なんだか気が重かったが、今回やれば次の順番が回ってくるのは10年後と思って役員をやることになった。そもそも断るという選択肢がない口ぶりだったし。
役員の仕事で最も面倒なのが、各種の集金だ。仕事の休みを使って10軒回るのだが一日で終わったことがない。こういう集金は会費の他にもいくつかあったので、その度に仕事の休みを使って各戸を回り、その日に終わらなければまた翌週になる。ワシだって休日に用事もあるのにね。回覧板は元締めからきたものを次に回すだけなのに、よくどっかで止まってしまい連絡事項の日付が過ぎたりしていた。そして夏祭りである。全体の打ち合わせに3回集まって、第二班役員のワシは若いからという理由で神輿を神社に返す役。その時のワシ・・・55才。若いってどうなのよ。盆踊りやすべての祭りが終わった後、夜の11時ぐらいに公民館から神社まで小さな子供神輿を担いで行くんだけど4人しかいないんだもの。服装だけはなんだか本格的で神官のような服に足元は足袋、頭には烏帽子を被って、
近所とは言えちょっとした山道を行くなかなかの重労働。翌日は6時起きで仕事なのにね。
そう言えば総会で渡された名簿にはメンバーそれぞれの住所氏名電話番号が載っていて、個人情報に対する注意など何もなかったな。
以降の9年間は会費を払い、たまに回ってくるゴミ捨て場の掃除をやるぐらいで、夏祭りの手伝いと正月の集りは仕事に支障があるからと断ってきた。確かにこれでは地域の活動に参加しているとは言いがたいけど、そもそも日常生活で接点がなにもないのでワシにとっては自治会の意味が今一つ不明なままだし。回覧板の情報で役に立ったものもまったくないし、そもそも市役所のサイトを見れば済むことばかり。ワシは次に役員が回ってきたら1年がんばった上で抜けたいなあと思っていた。
そうして去年は10年ぶりに回ってきた役員の仕事をワシは淡々とこなしたですよ。んーっ、淡々でもないか。一度集金した金を地域の班長のところに持っていったら、酔って赤い顔で出てきて「遅い!」と怒鳴られたことがあったな。この時代にいちいち集金して回るなんて非効率でしかないのに。夏祭りの仕事は会場設営と交通整理。正月の集りはもう仕事も辞めて隠居しているのでその気になれば参加できるのだがパスして実家に帰った。もちろん会費は払ってだけど。
そしてやっと役員が終わってほっとした今年の4月。新役員の人が集金にきて、昨年分の収支報告を見せてもらった際にちょっと聞いてみたのね。
「正月の2日に宴会やるのはどうなの。みなさんは正月と言えば子供たちが帰省してきて、にぎやかになって毎日酒飲むのも良いんでしょうけど。ワシは仕事があるし、そうでなくても2日は実家に帰るので、どのみち参加できないんですよ。それでも毎年会費だけは取られるのってどうなんですかね」
そしたら文句を言わず黙ってこっちに従えとか言われて、売り言葉に買い言葉でちょっと揉めてしまい、結局そのまま自治会を抜けることになった。まあ抜けても不都合はないし、そもそも抜けようと思っていたので不愉快だけど結果オーライ、と思っていたのだが・・・。その際、抜けるんだったらゴミ捨て場は使わせないと言われてしまった。
えー、そんなのありかぁ???。
調べたら法的にはゴミ捨て場は公共性があるので使えるが、場合によってはゴミ捨て場が個人の所有のところがあって、使えない場合は行政に相談しなければならないってことがわかった。翌日、別の役員がやってきて
「ゴミ捨て場を使わせないということはないが、交代でやる掃除と使用料を払ってくれ」
と言ってきた。ゴミ捨て場は個人の所有地なので土地使用料を払えということなのだが、そもそも自治会に入っていた時に徴収されていた会費の明細にそんな項目があった記憶はない。金額は年4千円と言われて払ったものの領収書もくれない。正月の宴会も領収書はなしだったし。
ちょっと不満はあるが、これで自治会を抜けることができた。で、思い出したのがいつかの地域全体総会で「○○地区の××さんは自治会費が高すぎるという理由で脱会しました」とか発表していたこと。ってことはワシも「○○さんは正月の宴会費を払うのがいやで脱会しました」とか言われているんだろうか。なんだかちょっと八つ墓村入ってるぞぉ。
やっと自治会を抜けることができた。
思い起こせば20年前の秋、引っ越してきた時に、道路を隔てた向かいの家にあいさつに伺ったときに「自治会に入るのかい?」と聞かれて、何も考えずに「ハイ」と言ったのが不幸?の始まり。そもそも引っ越しの挨拶は両隣とお向かい以外はちょっと離れているし行かなくて良いかなと思っていたら、お向かいさんに連れられて回ったのが30軒。それが3班に分かれていて私の所は第二班だと言われた。新しく自治会にメンバーが加わったのは××さん以来と言われたが、そもそも××さんというのは私が引っ越した住宅の前の持ち主。買った時に見た登記簿の日付は確か30年前。考えてみれば周りは古い住宅と田んぼと雑木林と墓地しかないので、新築もなければアパートもなくてそもそも誰かが転入してくる余地がない。私はたまたま情報誌で売りに出ていた中古住宅を買っただけ。そう言えば最初に挨拶で回った時30軒中に飯村が8軒、田中が6軒あってなんか不思議だなぁと思ったかな。
引っ越して初めての正月2日。近所の集まりがあるというので徒歩1分の集会所へ行くと男ばかり10人がいて、自治会の最小単位である第二班の10世帯らしかった。一応議題として黒板に書かれていたのは農地の貸し借りや用水路の管理のことだった。私にはいっさい関係のないことではある。その後宴会になって3千円ぐらいの会費を徴収された。知っている人は誰もいないし、農地の話などまったくわからないし。だらだらと宴会は3時間も続いて私ゃ精神的にも肉体的にも(座敷だったので膝の悪い私にはきつい)くたくたになったですよ。幸いに翌年からは正月も休めなくなった仕事の関係で出席しなくなったが、会費はしっかり取られていたし、仕事で正月も休めないからと言っているのに「なぜこない」という無言の圧力もあったな。
年一回あるゴミ拾いの日は、基本的に自分ちの周りをやるってことだったのでそもそもゴミ(ペットボトルや缶)が落ちていないし。それだけ人通りも交通量もないということ。何回か出席した地域全体の総会は範囲が広すぎて(住宅が密集した地域ではないため)私なんかにはもう完全に土地の名前も場所もわからない未知の集まり。300人以上もいて地域のコミュニティー感はまったくなしだった。300人だったらちょっと大きいマンションの世帯数ぐらいだけど。そもそもこの公民館に集まるのに8割のひとが車で来る距離感だし。
総会で何を話すのかというと夏祭りの相談だった。公民館前の広場での盆踊り大会がメイン行事で、やたらと係がたくさんあって私なんかも会場設営の仕事があてがわれたりした。
そんな感じで9年、何事もなく過ぎたのだが・・・。何事もなくとは言っても近所の知らない人の葬式が6回あったけどね。
ある時、歳末の赤い羽根募金だったか何かの集金にきた人に
「来年度はあなたが役員に決まった」
と言われた。仕事も忙しく班の人の顔も名前もわからないので無理と言っても、もう決まったことと言われた。なんだか気が重かったが、今回やれば次の順番が回ってくるのは10年後と思って役員をやることになった。そもそも断るという選択肢がない口ぶりだったし。
役員の仕事で最も面倒なのが、各種の集金だ。仕事の休みを使って10軒回るのだが一日で終わったことがない。こういう集金は会費の他にもいくつかあったので、その度に仕事の休みを使って各戸を回り、その日に終わらなければまた翌週になる。私だって休日に用事もあるのにね。回覧板は元締めからきたものを次に回すだけなのに、よくどっかで止まってしまい連絡事項の日付が過ぎたりしていた。そして夏祭りである。全体の打ち合わせに3回集まって、第二班役員の私は若いからという理由で神輿を神社に返す役。その時の私・・・55才。若いってどうなのよ。盆踊りやすべての祭りが終わった後、夜の11時ぐらいに公民館から神社まで小さな子供神輿を担いで行くんだけど4人しかいないんだもの。服装だけはなんだか本格的で神官のような服に足元は足袋、頭には烏帽子を被って、
近所とは言えちょっとした山道を行くなかなかの重労働。翌日は6時起きで仕事なのにね。
そう言えば総会で渡された名簿にはメンバーそれぞれの住所氏名電話番号が載っていて、個人情報に対する注意など何もなかったな。
以降の9年間は会費を払い、たまに回ってくるゴミ捨て場の掃除をやるぐらいで、夏祭りの手伝いと正月の集りは仕事に支障があるからと断ってきた。確かにこれでは地域の活動に参加しているとは言いがたいけど、そもそも日常生活で接点がなにもないので私にとっては自治会の意味が今一つ不明なままだし。回覧板の情報で役に立ったものもまったくないし、そもそも市役所のサイトを見れば済むことばかり。私は次に役員が回ってきたら1年がんばった上で抜けたいなあと思っていた。
そうして去年は10年ぶりに回ってきた役員の仕事を私は淡々とこなしたですよ。んーっ、淡々でもないか。一度集金した金を地域の班長のところに持っていったら、酔って赤い顔で出てきて「遅い!」と怒鳴られたことがあったな。この時代にいちいち集金して回るなんて非効率でしかないのに。夏祭りの仕事は会場設営と交通整理。正月の集りはもう仕事も辞めて隠居しているのでその気になれば参加できるのだがパスして実家に帰った。もちろん会費は払ってだけど。
そしてやっと役員が終わってほっとした今年の4月。新役員の人が集金にきて、昨年分の収支報告を見せてもらった際にちょっと聞いてみたのね。
「正月の2日に宴会やるのはどうなの。みなさんは正月と言えば子供たちが帰省してきて、にぎやかになって毎日酒飲むのも良いんでしょうけど。私は仕事があるし、そうでなくても2日は実家に帰るので、どのみち参加できないんですよ。それでも毎年会費だけは取られるのってどうなんですかね」
そしたら文句を言わず黙ってこっちに従えとか言われて、売り言葉に買い言葉でちょっと揉めてしまい、結局そのまま自治会を抜けることになった。まあ抜けても不都合はないし、そもそも抜けようと思っていたので不愉快だけど結果オーライ、と思っていたのだが・・・。その際、抜けるんだったらゴミ捨て場は使わせないと言われてしまった。
えー、そんなのありかぁ???。
調べたら法的にはゴミ捨て場は公共性があるので使えるが、場合によってはゴミ捨て場が個人の所有のところがあって、使えない場合は行政に相談しなければならないってことがわかった。翌日、別の役員がやってきて
「ゴミ捨て場を使わせないということはないが、交代でやる掃除と使用料を払ってくれ」
と言ってきた。ゴミ捨て場は○○さん個人の所有地なので土地使用料を払えということなのだが、そもそも自治会に入っていた時に徴収されていた会費の明細にそんな項目があった記憶はない。金額は年4千円と言われて払ったものの領収書もくれない。正月の宴会も領収書はなしだったし。
ちょっと不満はあるが、これで自治会を抜けることができた。で、思い出したのがいつかの地域全体総会で「○○地区の××さんは自治会費が高すぎるという理由で脱会しました」とか発表していたこと。ってことは私も「○○さんは正月の宴会費を払うのがいやで脱会しました」とか言われているんだろうか。なんだかちょっと八つ墓村入ってるぞぉ。