「成瀬は信じた道をいく」(宮島未奈/著)

前作「成瀬は天下を取りにいく」の続編。前作が中2から高3までで、今作は大学受験の前後と大学1年あたりの短編5本です。
久しぶりに会った成瀬は、相変わらずでした(笑) 自主的に地域パトロールをして防犯に貢献したり、地元スーパーのレジバイトでクレーマー主婦と親しく(一方的に)なったり、大津市の観光大使に立候補し就任し地元PRに邁進したりと、暑苦しさのない謎のエネルギッシュさで、やっぱり周りを巻き込んだり巻き込まなかったりしながら無表情に走り回ってます。
さて、「天下を取りにいく」を読んだ方ならみんな、どんな環境が成瀬あかりという人物を形作ったのか興味を抱いたかと思うんですが、今作では成瀬の両親が初めてその全貌を明らかに(?)してます。
結論から言えば、ご尊父さまご自身が述懐している通り、成瀬は突然変異のディープインパクトなんだな(笑)(我が子を伝説の名馬に例える父!)
本人はごく真面目なのに、ナナメな方向の発想も行動力も才能も、独特な口調も含めて、両親のどちらにも似ていない。実は宇宙人なんじゃないかってくらいなんですが、幼いころは普通に「パパ」と呼んで抱きついてきたと父・慶彦氏が証言していますから、宇宙人じゃなくて取り換え子かもしれない。成瀬の成長に纏わる謎は深まるばかりです。宇宙人でも妖精さんでも、成瀬をよこしてくれてありがとねって感じですけど(笑)
両親にとってはまさにディープインパクトですが、ディープでないまでも、成瀬は出会った人々にインパクトを与えます。水面の揺らぎ程度の小さな衝撃でも、広がった波紋はその人に影響を与えます。それは成瀬自身はあずかり知らないところで、そして全く意図しないところで。
前作同様、スリリングな展開があるわけではないのになぜか疾走感と爽快感のある、そして大津市の地元愛と地元ネタ溢れるお話で、琵琶湖方面に観光に行ってみたいとまた思いました。成瀬の観光大使っぷりはほんとに見たいな! けん玉の腕前と一緒に!(笑)


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