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2025 J2 Matchweek1 RB大宮VSモンテディオ山形 

本稿では、山形目線でJ2開幕戦である、RB大宮アルディージャ戦を、おおまかに振り返ってみようと思う。なぜなら、まだ開幕戦であり個々の評価や詳細な分析をするには、材料が足りないためだ。私はモンテディオ山形を追いかけ10年以上が経過するため、やや山形に関する言及が増えるが、ご容赦願いたい。

また、批評に際しては具体的な場面や根拠を提示しながら進めていく。そのため、読者の方にも実際の試合をDAZN等で視聴しながら読んでいただくと、より理解しやすいだろう。

それでは、メンバーから確認する

【スターティングメンバー】

RB大宮アルディージャ(3-4-3 )VS モンテディオ山形(4-3-3)

もちろん、これはただの前提知識に過ぎない。「大宮は3バックだから、山形のWGを含めて数的同数で•••」といった話をする訳ではない。

この試合のスタッツを確認すると、山形のボール保持率は57%だった。まずは、山形がボールを握った山形が何を狙っていたのかに焦点を当てる。

【前提】大宮は5バックを形成した

前述したように、大宮は公式記録上は3バックであるが、実際の試合では多くの場面でこのようになる

【図1】4:54 の山形の攻撃

あえて数字にすれば5-4-1となるが、山形は3-3-4だろうか?そんな数字には意味はなく、サッカーにおいて重要なのはどこにスペース(時間的・空間的自由)があるか?である。
この場合CBに時間がある。つまりCBからビルドアップが始まる訳だが、CB熊本が相手を一切引きつける事なく、相手の5バックが構えているところに長いロングボールを蹴り込んだ。当然相手は最も危険なエリアに5枚を構えているため、ただディサロを抑えるだけで対応できた。
同様の場面がいくつもある中で、特に(24:29)の場面も紹介したいが、本稿では「おおまかに」振り返るのが目的なため、まずは多くの時間で「大宮が自陣で引いて守ってきた」という事を一旦押さえていただき、次の項に進みたい。

-----狭く攻める-----

ここからが本題となる。この試合、山形は「狭く」攻撃していた。わかりやすい例として以下の場面などが挙げられる(15:04,17:15,22:31,34:26,44:26,74:38) ※間違いがあったら申し訳ない

特に注目したいのは17:15 の場面だ

【図2】17:15(スロワー:野嶽 ディサロは映っていないため、数秒後のポジション)

スロワーの野嶽は、ゴールに対して背を向けた土居へパスを送っているが、これは無謀だ。なぜならそこは大宮が網を張っており、既にマークされているからだ。
【図2】の通り、大宮の中盤に広大な(というより異常に広い)スペースが空いている事が分かるだろう。しかし山形はなぜか狭いエリアに繰り返し突進する場面が目立った。これは理にかなった戦術とは言えない。理由を考えてみたのだが、最後まで分からず。
新生レッドブルの雰囲気に飲まれたのだろうか?

•野嶽のサイドチェンジ

狭く攻撃し続けていた一方、見事なサイドチェンジからチャンスを生み出した場面もあった。

27:57〜 野嶽のスローインから一旦は大宮にボールを奪われるが、28:10再び山形の土居に渡る。土居の目の前にはスペースがあるのだが、またしても狭い(それどころか後ろ)方へドリブルをする。
当然相手に囲まれ奪われるが、28:26 に城和のパス(クリア?)を山形が拾う。そこで野嶽がサイドチェンジを選択した。先ほどとはまるで逆。ここからイサカに渡りチャンスへ繋がった。(スローインとは違い、ボールを奪った直後の攻撃という違いはあるが)
結果的には得点こそ奪えなかったものの、相手をサイドへ寄せ、逆のスペースへ展開するセオリー通りの攻撃だ。

•終始無謀な攻め

もちろん狭い方へ攻めてもゴールが奪えないとは言っていない。事実、山形の同点ゴールはイサカからディサロへ相手のDFの間を縫うようにパスが通り、土居が押し込んだ。(突然チャンスが来ても決め切る冷静さは素晴らしかった)しかし、それ以上に多くの攻撃機会を無駄にしていたという事だ。(得点65:27〜)

似たようなスローインから5バックを崩した例としてセリエA からユヴェントスVS インテルを紹介したい。(72:35〜)

当然メンバーやシステムも違うため、単純な比較は出来ないが、ユヴェントスのCBが「深さ」を取り、スローインを投げたカンビアーゾがもう一度幅を取り関わる。相手のブロックに突進するのではなく、ボールを動かし左右へ相手を揺さぶり、ロジカルかつ粘り強い攻撃でインテルを崩した。(インテルはCLで最小失点)

このように、引いた相手には「狭く」ではなく、横(幅)と縦(深さ)を目一杯使い相手のブロックを拡張する事が重要なのだ。

もちろん山形のシーズンはまだ始まったばかりで、チームとしてもまだ成熟していないだろう。とはいえ何度も繰り返される「密集突撃」に「なぜ、そんなに狭いエリアへわざわざ突っ込むんだ?...」と思考も袋小路に陥ってしまった。

------広く守る------

ここでは、まずデータをご覧いただきたい。
両チームを通じて最もシュートを放ったのは大宮MFアルトゥール シルバ。これには山形の守備に理由がある。

https://soccer.yahoo.co.jp/jleague/category/j2/game/2025021509/summary?gk=6


それは、山形が「広く」守っていたからだ。(特に、中盤・バイタルエリアはガラ空きになることが多かった)
具体的には(0:10,4:16,7:17,〜7:21,26:04〜26:14,46:27〜46:49,73:38,89:00,)などが挙げられる。※間違いがあった場合は申し訳ない

その中でも、45:40〜からの大宮のCKを取り上げる

46:15〜ディサロが頭でクリア。
46:17〜アルトゥール シルバにボールが渡る。この時点で山形は更にラインを上げなければいけない。なぜならボールホルダーが後ろを向いているからだ。

46:20〜アルトゥール シルバがバックパス。ここでも更にラインを上げれるのだが、すぐに大宮が蹴ったため、ここで上げなかった判断はある程度、理解できる。しかし、46:17〜からの流れからのラインコントロールが甘かったため、大宮のロングボールを受けた選手はオフサイドにならず。山形の深いエリアから攻撃を開始した。逆に言えば、仮に山形がボールを奪っても、低い位置から攻撃が開始する事になる。
その場合、相手にとって楽ではないだろうか?

46:30〜山形のCBは相手のFWを捕まえるため、ペナルティエリアへ戻る。しかしその際、山形のCBの前(ペナルティアーク・バイタルエリアとも呼ばれる)が大きく空いている事が分かる。これではいくら最も危険なペナルティエリアを埋めていたとはいえ、バランスよく守るのは無理だ。

そこからの流れで46:49は特に注目したい

【図3】46:49最終ラインが上がらないため、中盤が空く(杉本は何故かサイドへパス)

引いて守る(いわゆるローブロック)を戦術として用いるのは理解できるが、これではあまりにもラインが低い。それどころか、相手に「プレッシャーかけません。中盤を使って良いですよ」と言っているようなもの。厳密にいえば数歩上がっているが、本来ならもっと上げなければいけない。何故なら相手をゴールから遠ざけた上で、ボールに対して複数人で囲えるからだ。(相手を閉じ込める=狭く攻め“させる”)

ここでは大宮の例も挙げたい

【図4】55:50〜🟠が大宮の陣系※山形の選手は正確に配置していません

55:50〜山形のスローインで安部がボールを持つ。
この時点で大宮の「最終ライン」と中盤が極めてコンパクトである事が分かる。(いわゆる網が張られている)
この状態で突っ込むのは得策ではない。山形はバックパスでやり直す選択をする。(55:54〜)

この瞬間に注目すると、大宮の選手は即座にラインを上げるのだ。(オフサイドになるためディサロもそれに付いていかざるを得ない)
しかし、山形はまたしても「狭く」守る大宮に「狭く」攻撃をする。(55:56〜)

ここでは、山形の守備が主な論点であるため、更に攻撃には触れないが、山形の守備は「ラインコントロール」が終始甘かった。

「狭く」守ることが出来なくては、相手は最初から「広く」攻撃することが出来るのだ。

(余談にはなるが、大宮の【INSIDE NACK】では、DF濱田が「もっとコンパクトに•••」といった発言をハーフタイムにしている様子が確認できる。)

・昨年の開幕戦と比較

https://youtu.be/vx2soY-lz8I?si=q-L3wA-vsbikKqGD

この画像は昨年の開幕戦、千葉戦からの引用だ。ラインの高さも、そのコンパクトネスもまるで違う。DAZNではフルマッチが観れるため、今シーズンと比較してみると更に面白い。

もちろん、「高いから良く。低いから悪い。」(またはその逆)という事ではなく、中央から動かないゴールを守りつつ、ゴール前に対して何層かの壁を形成し、コンパクトに保ちながら全体を押し上げ、または下げる。これが守備の基本だが、今年の開幕戦では、ほとんど見られなかった。

・大宮のバイタル攻略は単調

山形の守備が、ラインコントロールに問題があり、中盤が空く傾向にある事を確認した。

前述の通りアルトゥール シルバが最もシュートを打つ事が出来たのは必然だ。バイタルエリアが空くからである。事実、後半29分・後半47分と彼にミドルシュートを打たれている。しかし、前半46:49にもある通り、大宮がこのエリアで単調な攻撃に終わったのも事実である。山形からすれば助けられた事になる。このように「広く」守る山形の守備に「なぜラインが上がらないんだ?なぜスライドしないんだ?」と何度も考えたのだが、またしても分からず。第2節以降、修正されるかに注目したい。

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