コロナ危機をチャンスに、中高年サラリーマンの活路を見出す「働き方」戦略(その1)
コロナ禍が、私たちの働き方まで変えようとしています。
半ば強制的に始まったテレワークは、ZoomやMicrosoft-Teamsといった遠隔会議ツールの“意外な使い勝手の良さ”もあり、大企業を中心に定着しつつあります。
同時に、個々人の成果が一層厳しく問われるようにもなりました。新常態(ニューノーマル)にしたたかに適応していくキャリア戦略が求められているのです。
本コラムでは、中高年の皆さんを応援する立場から、働き方が今どう変化しているのかを考えながら、時代を生き抜くカギを探りたいと思います。
▽テレワーク、働き方のデフォルトに
ニコニコ動画を提供するドワンゴは5月29日、全従業員を対象とした在宅勤務態勢を、緊急事態宣言解除後の6月以降も継続すると発表しました。
機動力の高いIT企業だけの動きではありません。経団連の中西宏明会長の出身企業で、連結従業員数29万人をほこる日立製作所も、週2〜3日は在宅で仕事ができる状態を継続することを明らかにしています。
日立はさらに、働きぶりが見えにくい在宅でも生産性が落ちないよう職務を明確にする「ジョブ型」雇用の導入と勤務時間ではなく成果で評価する人事制度への移行も検討しています。
成果を重視する人事制度は、以前から論議されてきましたが、テレワークを経験したことで、その意味をより実感を持って理解できた方も多いのではないでしょうか?
皆さんもテレワーク中、こんな経験をしたかもしれません。
Zoomのスピーカービューでは、発言者がスクリーンに大きくクローズアップされ、いや応にもその存在は目立ちます。
その一方で、オンライン会議で発言がない者は、通常の会議以上に存在感が無くなります。在宅で毎日何を行っているか分からず成果の報告もなされない、こうしたメンバーのチーム内での存在感はガタ落ち−
逆に、肩身の狭さを感じながら育児・介護を理由に早めに退社していた時短勤務者がテキパキと仕事をこなし、高い成果を上げる−
テレワークは、残酷なまでに仕事そのものの価値とその仕事を担う人の役割を「見える化」したのです。
▽強まる逆風
こうした動きが中高年の働き方にどのような影響を与えるのでしょうか。
まずは先述の通り、テレワークの導入・定着により、従来は評価されてきた働き方・仕事方法の価値が相対的に落ちていくことを想定しておく必要があります。
「台風襲来の際には、這ってでも出社し、非常時の対応要員として存在感を示してくれた」
「若手が参加したがらない土日の会社イベントにも嫌な顔せずにいつも参加してくれていた」
「毎回会議に必ず出席し、積極的に発言はしないが、うなずきにより暗黙の同意を示してくれた」
「職場来訪者といつも雑談を交わし、他事業部の情報を仕入れてくれた」
中高年が、得意としてきたこうした行動は、職場にいるからこそ皆に見えていました。仕事の成果には直接結びつかなくても総合的に勘案し、その人の処遇が決まり、周囲もその処遇に微妙ながらも納得していたケースが多かったのではないでしょうか?
しかしテレワークが定着するにつれ、これら行動が周囲に認識される機会は減少します。
その結果、「給与水準と仕事の成果が見合っていない」という周囲の疑問が顕在化し、このギャップがいわゆる「働かないおじさん」問題につながっていくのです。
これは中高年に限った話ではありません。
ただ中高年の場合、勤続年数を重ねるとともに非定型・非定常業務の比重が増えるため、職場の環境づくりなど業務に直結しない面で勝負せざるを得ない事情もあります。
そうなると、テレワークという働き方は、(もちろん人によって異なるものの)中高年サラリーマンにとっては概して、アゲンストの風になってきます。
その風は、今後強まることはあっても弱まることはありません。中高年の皆さんは、このことを覚悟しておく必要があります。