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身一つ&自己資金のみで医学部再受験を成功させるために必要なこと

共通テストも終わり、経験的にそろそろ皆様の"再受験熱"が高まってくる頃合いなのでこの記事を。
(塾屋をやってると、本当に1月末あたりは再受験の問い合わせが多いです。連休の前後も多いです。実家に帰って人生考え直すんですかね?)

医学部再受験の実際ってどうなの?本当に自己資金で生活できるの?
というお話です。

結論から先に言うと、余裕です。

医学部再受験の実際① 受かるの?(成績上がるの?)

受かります。
絶対に受かります。

18~20歳あたりの若い子たちと知恵勝負をして勝てるのか?と思われるかもしれませんが、勝てます。

そもそも皆さんが受験生だったころを思い出してください。
大学受験なんて大なり小なり「やらされるもの」だったはずです。

自ら決めて主体的に取り組んでいる時点で、我々が年が若いだけの学生連中に負ける道理はありません。

ただし、年数はかかります
特に大学受験時代に医学部かそれに近いレベルまで仕上げてこなかった人は。

塾屋をやっていても再受験の問い合わせが非常に多いんですが、まぁそのうち95%までは受験勉強をナメてる。

大学受験もMARCHやそこらでした、
今も仕事してます、
まだ本格的に勉強始めてません、

そういう人に
「少なくとも3年は見てください。国立なら5年目に勝負ができる点数になったら御の字です」
って言ってもまず聞いてくれません。
仮に入塾しても半年で「私にはムリです」と辞めていく。

例えばご出身が東北大や九州大の理工系です、あるいは国立や慶應の薬剤師です、数学は覚えてないけど大学で論文書かされたので英語は9割以上取れてます、理科も専門分野は高校レベル程度問題ないです、
こういう人は
「金銭的に可能ならお仕事やめちゃって来春に勝負かけましょう」
ってこちらも言います。

そういうバックグラウンドもなく、
勉強した経験もなく、
いい年して「子どもの頃からの夢だから」とか、心の底では医者になったら人生一発逆転としか思ってない、

そんなワンチャン狙いのゆめみちゃんに譲ってあげる席はどこの医学部にもありません。
学費4000万越えの「金払ったら入れてあげるよ大学」にはもしかしたらあるかも

私の再受験仲間でも、名のある大学の薬学部や東大京大クラスの理系からだと1年で、旧帝文系からでも3年かかって入った人もいます。
私自身大学後の進路にいろいろ迷って途中で理転してますが、理転した時期と医学部受験の期間を合わせれば約2年です。
私自身も小中まではちゃんと秀才をやってた人間です

それでやっと2年とか、3年です。

現実を見てください。

医学部なんて私立はもちろん、国立も基礎的なことが網羅できていれば入学できる構造です。
要するに小学校のドリルでやったのと同じことをコツコツと、それとは比較にならない分量行うだけです。
特別な能力など必要がなく、ただただ大学受験に必要な暗記事項と一定のアウトプットを、それが終わるまで続ければ絶対に合格します。

ただ、塾屋をやっていた経験上、その「受かるまでやり続ける」ができる再受験志望生はほとんどいません。

「仕事が不規則なので勉強時間が取れない」という人も多くてアホかと思います。

通勤手段を公共交通機関に変えればそこで勉強できるでしょう。
食事の時間の10分20分でも勉強できます。
毎日毎食20分勉強したとして、それを5年続けたら1800時間です。
通勤時間を仮に片道20分としたら、それを加えて3000時間になります。
よく勉強している浪人生でも、勉強時間は年間3000時間くらいでしょう。

十分勝負できます。

「勉強する時間がない」

「勉強する根性がない」
です。
間違えないでください。

こういう勉強以前の思い違いをしない限りにおいて、医学部再受験は絶対に受かります。
(実際に10年以上やって受かっていない人はやり方がおかしいので再検討しましょう)
雨が降るまで雨ごいをすれば100%成功するのと同じ理論です。
具体的な勉強の内容とかは気が向いたときにまとめますが、そんなに難しいことをする必要はないです。当たり前のことを積み重ねればOKです。


あ、某G大学みたいな再受験お断り、編入試験も中身もちょっとアレなところを避けるのは大前提です。もちろん。


医学部再受験の実際② お金はどのくらいいる?

再受験生でも
①実家の援助で通う者(大多数です)
②奨学金や借金を頼りにする者(私です)
③あらかじめ貯金を作ってから再受験する者
さまざまです。

まぁしかし実際、事前に6年分の学費・生活費のめどを立ててから来てる人はほとんどいません。

①と③の人は今困っていないと思うので、このお話の焦点は②に該当する人ですね。

あと、こういう人は私立に入らないと思いますので、この項のお話は国立に限ります。
後述する「人質金」を含む各種奨学金を駆使すれば私立に通える、という人もいます(しそれは真実です)が、そのくらいならあと1-2年がんばって国立に入るべきだと私は思っています。

(医師の生涯年収を考えれば、実は1-2年の差なら借金して私立に入った方が、一生でもらえるお金は増えます。
私も先生から「医師になったらお金に困ることはなくなるから、学生の間はできる最大限の借金をして、バイトなんかしないで勉強しろ」と言われました。この辺は本当に考え方次第です)

けっこう相談を受けるし自分でやってみなければわからないところもあったのですが、国立に限れば、医学部再受験はそんなにお金が必要なわけではありません。

医学部入学に必要な資金

まず当然ですが入学金が約30万円。
そして受験費用。共通テスト(18,800円)と国立前後期(各17,000円、いずれも2025年現在)合わせて5万円程度。遠征する場合はその交通費・ホテル代等々で+5万/回は見ておきましょう。
そして合格したときのアパート契約金と引っ越し費用。これも進学先によりますが、合わせて30-50万円くらいは見ておきたいところです。
ただし、大学の寮に入ったり、家具付き物件を契約して引っ越しは身一つで、とかすると安くつきます。

絶対に必要な費用は以上です。
高めに見積もって100万円くらい。めちゃくちゃケチって50万円くらいが最低限です。
私は初年度学費まで合わせて用意しましたが、学費は合格したあとでもなんとかなります。

以下、「なんとか」を具体化して紹介します。

●国の教育ローン

最初に考えるべきはこれで、自分名義でも借りることができます。
(自分名義で借りる場合、ちょっと手続きが煩雑になります)
入学後元いた会社を退職するとなると下りるか微妙だと思ったので、私は1年生の間、暇を活かしてリモート等でできる仕事を続けていました。
そうでない場合は早々にアルバイト先を決めるなどするか、さすがにここだけは実家に頭を下げて名義人になってもらうか、でしょう。

国の教育ローンは350万円まで借りられ、順調にいけばだいたい2-3週間で下りるかと思います。
国立前期の合格発表の瞬間に手続きすれば、前期学費納入に間に合います。
(後期だと間に合わないかもですが、事情を話せば普通待ってくれるはずです)

後述する奨学金の類も7月ごろまでは振り込まれないので、当面はこれで凌ぐことになります。

入学後は生協がどうの、保険がどうの、OB会がどうの、といって「事前書類に書いてなかった出費」がビュンビュン飛んでいきます。
テキスト代も重いです。
(これは今後医学部に入学する後輩への純粋なアドバイスですが、テキストの類は躊躇なく買うべきです)
借金と言えどどうせ卒後に返すものなので、「絶対にこんなに要らないだろう」というくらい借りておいた方が安全です。
私は200万円借りました。

●日本奨学金機構(JASSO)の奨学金

一番メジャーなやつです。
1つ目の大学で借りていなければ、まず問題なく下ります。
(1つ目の大学で借りていても返済が終わっていればOKと聞いたこともあります)

逆に言うと、ここが借りられなければ「完全自活で再受験生」は後述の人質金がないと厳しくなるかと思います。

月10万とか借りると6年総計でえらい額になりますが、医者になってしまえば問題ありません。
怯まず最大額で借りてください。

●一般銀行の教育ローン

私は使っていません。
実家と折り合いが悪く保証人を頼むのがイヤだったのと、入学後正社員ではなくなるとどう評価されるか不安だったので。

が、実は1000万円とか借りると利子が下がりJASSOよりよほど良心的という側面もあります。
JASSOが闇なだけ説もある

借りるのが数百万円だとしても、借りられる環境があるなら選択肢になります。

●アルバイト

扶養を越えないなら月~8万、ほとんどの大学で既修得単位申請制度はあるでしょうから、専門科目の少ない1年生の間は扶養を越えて月25万とか30万とか(その気になれば)稼げると思います。

2年生以降でも、奨学金込みで月15-20万円くらいは安定して収入として得ることができます。
年金の支払いは学生特例で先延ばしできますし、扶養を越えないなら保険料もわずか。学費・テキスト代等々を考えても余裕です。

ちなみに4年生になって研修が始まっても、普通に土日中心にアルバイトは続けられます。
そこで厳しくなったとき用に教育ローンの枠を100万円くらい残しておくと、より安心です。

●自治体等の医師助成金(いわゆる「人質金」)

各種自治体等が出している「一定期間指定された医療機関で働く代わりに返済を免除する」奨学金です。

結論から言うとまったくオススメしません。

医学部受験生から見ると医療は「診療科」が重要で仕事が決まっていると思うかもしれませんが、実際の医療は(特に再受験生が選ぶような地方国立のある地域では)各地域の病院がしっかりと役割分けされ、「この病院を選んでしまうとできなくなること」が山ほどあります。

そして再受験生は比較的明確な進路希望を持っている人か、逆に「医者にさえなれればあとは自分の適性あるところで」と考える人が多く、いずれの場合もこのタイプの奨学金にはマッチしません。

ここまで述べてきた奨学金・借金の類で国立大学通学費用は余裕で賄えるので、わざわざこの手の人質金に頼って、ただでさえ短い医師キャリアを無駄にする必要はない、というのが私の考えです。

医学部再受験の実際③ 入学後の心配

これも結論から言うと心配いらないかなと思います。

学業・大学生活双方でですね。

ただ、自分は一般の大学生よりも経験や意欲がある分だけ、模範になれるような成績やふるまいを目指そう、と思うことは必要だと思います。

地方国立と言えど「天才」はうじゃうじゃしていて、こいつには勝てねーなと思った18歳はひとりやふたりではありません。
そういう子たちから学び、ともに励む謙虚さがあれば大丈夫です。


友人も普通にできます。
きちんと年長者として適切な振る舞いができる人は同期・先輩・後輩問わず尊敬されますし、逆に年相応でない、大学生2回目だぜウェーイとかやってる連中はナメられて18歳に呼び捨てされてます(それはそれで楽しいので別に問題なし。落単だけ気をつけてもらって)。

最初半年くらいは「大学生ってホンマアホやな」と思うことも多いかと思いますが、それを等身大に受け止めて「いやでも彼らも6年間一緒にいる仲間だしな」と思えれば大丈夫かなと。

自分が年を取っていて、ある種「特別な存在」だ、みたいな勘違いを起こさなければ、普通に入学後もなじめると思います。

むしろ若い子たちの相談に乗ってあげたり、必要なときは年長者として叱ったり、先生たちとのパイプ役になったり、医学生としてともに悩んだり……
そんな時間がいい経験になるはずです。
90%以上が進学校出身、世の中の上澄みとして生きている医学生にとって、外の世界を知っている再受験生は人間的多様性を与えてくれる重要な存在だと私は思っています。


結論

ということでどえらい長い記事になりましたが、「完全自活で医学部再受験」という一見めちゃくちゃ難しい目標を達成するには、

10年かけてでも絶対に合格するだけの気力があり、
その10年でわずか100万円程度を貯める財力がある。

たったこれだけの条件があればいいということになります。

めちゃくちゃハードルは低いです。
なのに医学部再受験界隈に挫折者が多い理由は、ひとえに1点目の「気力の不足」に尽きるというのが現実です。


いま、再受験を検討してて、この記事を読んで「いや、10年は……」と思った方へ。

少なくとも18年間努力してきた子たちを押しのけて、彼らより間違いなく医師寿命の短いあなたが医師になろうと言うんです。
そのために必要な時間が10年なら、全くもって安いでしょう。
彼らより2倍、3倍努力してやっと対等、くらいの気持ちがあっていいと思います。
ご自身に彼らと遜色ないバックグラウンドがあれば、年数がその分減るのは先述の通りです。

「人生変える」みたいな気持ちで再受験に来る人が失敗するのはここがわかってないからです。

医学部再受験は人生を変えるのではなく、今まで築き上げたものをぶっ壊して気力・体力の充実したいまの時間を受験生(あるいは医学生)として無にすることとイコールである、
つまり人生を失う選択です。

私はこの記事で平然と「合計1,500万円くらいは借金を背負え」と言ってますが、人生捨ててるんだから1,500万円くらい背負うでしょ、という気持ちです。
もし学業に失敗して医者になれなかったら、借金まみれのプーのおっさんが残る。
それをわかって「自分は死人だ」と思って医師になるためにすべて身を捧げられるから、大学受験みたいな紙に覚えてきた教科書の内容を抜粋する程度のテストは、できるに決まってるんです。
だって本番はそこからだもん。

自分より優れた天才たちと一緒に、落ちてきた体力と衰えた頭ですごす初期研修2年間のために、今は必死で備える必要があります。
この方がよっぽどキツい。

ハッキリ言うと、この覚悟が違うから、みーんな半年で現実を見て諦めていくんですわ。


ということで、一発逆転医学部再受験を志してこの記事を読まれた方へ。

人生ぶっ壊す覚悟ができたら、根性出してがんばってください。
上述の通り、条件はきわめて緩いです。誰でもできます。必要な時間さえかければ。


そうして覚悟を決めた未来の後輩たちとその同期の学生たちが、いい医者になってくれることを期待して記事を締めます。

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