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スポーツピクトグラムと、多様性時代のトイレ
非常口やトイレを示す案内用図記号のことを「ピクトグラム」といいます。
今ではあたりまえのように見かけますが、普及のきっかけとなったのは「東京1964オリンピック」でした。
東京1964オリンピック開催当時、英語によるコミュニケーションが難しい状況であったため、文字や言語のかわりに一目でわかるように抽象化されたピクトグラムが生まれ、オリンピックの競技を表したものは「スポーツピクトグラム」と呼ばれました。
東京1964オリンピック・スポーツピクトグラム
東京2020公認プログラムとして、株式会社モリサワで行われた「第28回モリサワ文字文化フォーラム」に参加してきました。このnoteでは、イベントのレポートと気付きをまとめています。
イベントでは「東京2020オリンピックスポーツピクトグラム」のデザイナーである廣村正彰さんが、ピクトグラムの歴史や、制作秘話などを話してくれました。
東京2020オリンピック・スポーツピクトグラム
東京1964オリンピック競技大会のスポーツピクトグラムは、世界中の人々が言語を問わず誰でも理解ができるように、「情報伝達」という点を重視して作られました。東京2020オリンピックのピクトグラムは、その情報伝達という考え方を継承するだけでなく、さらに発展させ、躍動するアスリートの動きを魅力的に引き出す設計で開発されました。これにより、大会競技を彩る装飾としての機能もかなえるピクトグラムが誕生しました。"Innovation from Harmony"という東京2020のブランドプロミスに基づき、1964年のピクトグラムを先人へのリスペクトともに継承・進化させ、新しい時代の革新的なピクトグラムとなっています。
参照元: https://tokyo2020.org/jp/news/notice/20190312-01.html
東京1964オリンピックのピクトグラムには、力強さや美しさを感じます。東京2020ではそれを踏襲しつつ、さらにダイナミックで躍動感のあるデザインになっています。
あえて胴体部分を抜くことで、そのスポーツの魅力や身体的な特徴がダイナミックに表現され、想像の余白を生んでいます。
各競技団体のチェック段階では、競技ルールに基づいた修正要望などがいくつかあがったといいます。
一例としてあげられていたのは、パラリンピックの「5人制サッカー」。
パラ選手はアイマスクを着用しており、特製ボールから鳴る「音」を頼りに競技を行うため、ボールの位置は足の「前」になる。
パラリンピック競技ならではのルール、アスリートの体の使い方、競技用具などをピクトグラムで正確に表現し、躍動するアスリートの動きを魅力的に伝えるデザインとなっています。
参照元: https://tokyo2020.org/jp/news/notice/20190413-01.html
マリオと鉄腕アトム
初期段階では、ひらがなをモチーフとしたものや、鳥獣戯画、アニメやマンガをモチーフにした案など、11種類の案があったといいます。
マリオや鉄腕アトムといった、日本を代表するキャラクターたちが躍動する姿を見たかったと思いますが、茨の道であったことは想像に難くありません。
トイレの「多様性」問題
東京1964オリンピックから世界に広まったトイレのピクトグラムですが、ジェンダーレスやダイバーシティが唱えられるようになった近年では、その表現が難しくなっているといいます。
赤い色が女性、青い色が男性。
スカートを履いているのが女性。
こういった表現が「誰かを傷つける可能性」があるとされ、世界中のデザイナーが頭を抱えています。
廣村さんはこの問題を「ピクトグラム」で解決しようとするのではなく、そもそもの「トイレのあり方」を変えたほうがいい、といっていました。
同氏が手掛けた「9h」というカプセルホテルでは、館内のいたるところにピクトグラムが配置され、動線がわかりやすい。コミニュケーションのコストをカットする目的でピクトグラムが使用されています。
デザインは「問題解決」のための手段であると、改めて気付かされました。
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