食べ物を守る名脇役の危機。冬に需要増のドライアイス!?
冷凍食品などの輸送、スーパーでアイスクリームや生鮮食品を購入したときについてくるドライアイス(炭酸ガス=CO₂)。夏の暑い時期に需要のピークを迎えますが、2番目に活躍するのはクリスマスケーキや「お○○」が食卓を彩る冬の季節です。
しかし今、食品などにそっと寄り添う名脇役のドライアイスに危機が訪れています。
皆さまの暮らす景色に馴染んでいる”化学”や”レゾナック”を紹介する「あれもこれもカガク」。第二回は、ドライアイス(化学式:CO₂)についてのお話です。
ドライアイスの正体
冷凍食品の輸送やアイスクリームの保冷などに使われる身近な存在のドライアイスですが、何でできているかご存知ですか?それは、二酸化炭素(CO₂)。つまり炭酸ガスです。炭酸ガスを圧縮して冷却すると液化炭酸ガスになります。液化炭酸ガスを大気圧下(周囲の空気と同じ圧力の状態)で噴射すると雪状の「スノードライ」になり、これを押し固めるとドライアイスになります。ドライアイスの温度はなんと-78.5℃! 一般的な冷凍庫の温度設定が約-18℃程度であることを考えると、ドライアイスの冷却力がとても高いことがわかります。
用途として食品の保冷が一般的ですが、ワクチンの輸送に利用されたというのは、ニュースで耳にした方もいるかもしれませんね。その他にも、舞台演出で使用されるスモーク効果や、ドライアイスブラストによる洗浄やバリ取りなど、たくさんの用途があります。
ちなみに、炭酸ガスはご存じ炭酸飲料のシュワシュワとしたガスの正体でもあります。
ドライアイスの原料はどこから来るの?
ドライアイスの原料となる炭酸ガスは、主に①石油精製②製鉄所③アンモニア製造工程などから出る副生ガス(何かを作るときに「ついで」に出てくるガス)で、炭酸ガスは大気中に放出せずに再利用しています。化石燃料を燃やして製造しておらず、また、ドライアイスを使うことで空気中の炭酸ガスを増加させているのではありません。
ちなみに、レゾナックでは、家庭から出るプラマークの付いた使用済みのプラスチックごみなど(*1)を川崎にあるKPR(Kawasaki Plastic Recycle)というプラントでリサイクル処理しています。このプラントでは、ガス化ケミカルリサイクル(*2)という化学の技術を使って水素と炭酸ガスを取り出しています。炭酸ガスはもちろん大気中に放出せずにドライアイスや炭酸飲料のガスなどに再利用しています。
使用済みプラスチックから炭酸飲料のガスが作られると言っても、分子レベルまで分解するため、通常の石油精製由来など同じですのでご安心を!なお、ドライアイスを水に入れると炭酸水ができますが、ドライアイスは食品用として作られていないため飲まないようにしてくださいね。
なぜ冬に?「お○○」の時期に大活躍?
夏の暑い時期に需要の第一のピークを迎えますが、冬の時期に実は第二のピークを迎えます。冬というと意外に感じるかもしれませんが、「クリスマスは特別なケーキをお取り寄せ」「ちょっと豪華な『おせち』を用意しよう」とECサイトなどで購入されるときに、それらの需要増と共にドライアイスが大活躍。皆さまの元に届けられるときだけでなく、材料を工場や店舗に、また完成品を店舗に輸送するときにも使われるため、想像以上に必要になるのです。
参考:おせちから考える食品流通-第1部 おせちも走る師走|その他の研究・分析レポート|経済産業省
ドライアイスに危機が訪れた!
石油精製をしている製油所の老朽化や操業停止など、原料となる炭酸ガスの供給が少なくなっています。そこに、冷凍食品の人気や、昨今の猛暑による需要増が加わり、ドライアイスが不足する状況に陥っています。今までスーパーなどで無料だったドライアイスが有料になったとか、ドライアイスが見つからないなどの経験されたことがある方もいるかもしれません。そんな危機的状況のなか、対策として、なんと国外からドライアイスを輸入することもあるそうです。レゾナックは、原料の安定供給を期待されており、その期待に応えるために取り組んでいます。
名脇役「ドライアイス」について紹介しました。この記事をきっかけに興味を持っていただけますように。
*1自治体の回収方法による
*2使用済みプラスチックのガス化ケミカルリサイクル
プラスチックは炭素C、水素H、酸素Oでできています。使用済みプラスチックを原料に、高温でガス化し分子レベルまで分解して水素(H)と一酸化炭素(CO)の合成ガスを取り出し、転化設備で水素と二酸化炭素(CO₂)にしています。