お金持ちの「入口」で見えている景色
兎にも角にもリスク分散
私はこれまで、株式を中心に資産を形成、運用してきた。運用資産が1,000万円に満たない駆け出しの頃に、ETFで債券や不動産、ゴールドも保有して、株式との値動きの違いを比較していたこともあるが、現在は株式一本である。
色々な投資商品を保有して、経験しながらアセットアロケーションを学んでいた時期に、コロナショックに直撃したが、その経験を踏まえても、ある程度の資産を築き上げるまで、収益性の高い株式一本で十分という結論に至り、今に至る。
そして、昨年からの株高、円安という地合いの良さから、お金持ちの入口と言っても過言ではない規模まで、資産が増加した。
それにより、2020年当時に株式一本で良いと想定していた、「ある程度の資産」に漕ぎ着けたことで、今見えている景色をもとに、改めて自身のアセットアロケーションを考え直す次第となった。
現状の資産配分としては、ざっくり日本円と外貨を半々で持つことをイメージし、5%が現金、45%が日本株、50%が外国株をベースに運用し、急激な相場変動でバランスが崩れた際に、リバランスする程度だ。
日本株は個別株とアクティブ運用でリスクを取っている分、累進配当のディフェンシブ銘柄を中心にリスクを抑え、外国株はもっぱらパッシブ運用で、全世界株式(通称:オルカン)の信託報酬の引き下げや、新NISAによる非課税枠の拡充に伴い、目下、特定口座のS&P 500を取り崩して、オルカンを買い付ける過渡期となっている。
投資対象をアメリカから、全世界へと広げることで、必然的にアメ株の比重は6割程度となり、米国一強の前提が崩れない限りにおいて、収益性はアメ株オンリーに劣るものの、時代の覇者を選ばなくて良いファンドは、裁量の排除に一役買うため、運用はほったらかしで、他に労力を費やす観点で適している。
とはいえ、オルカンは、アメ株に比べてリターンが劣る分、リスクも軽減されると思いがちだが、むしろ、投資対象となる地域が広がることで、マーケットリスクを丸呑みしている可能性すらあることは留意すべきだろう。
その自覚があるからこそ、それなりの資産規模となった今、兎にも角にもリスク分散に徹して、攻めの資産形成から、守りの資産保全に舵を切ることを考え始めているのが現状に他ならない。
資産規模を具体的に明記してもリスクしかないため、金融リテラシーの高い読者の方には伝わるであろう、お金持ちの「入口」という表現で察していただきたい。
その程度の資産規模にも関わらず、リスク分散を考え始める程度に、私は小心者であり、5億円の殆どを日本株に全ツッパする、優待名人こと桐谷さんの真似をしたら、悪戯に寿命を縮めるだけだとつくづく思う。
債券に投資する意味が見えてきた
手前味噌だが、過去の私はリスク分散を考え始めるようになった時に困らないよう、お金の常備薬ことリック・イーデルマンの著書「家庭の金銭学」の第41章に記されている「利益の最適化ポートフォリオと最大化ポートフォリオ」に記載されている、合理的なアセットアロケーションの配分をメモしていた。
それにより、100%先進国株式の期待リターンである、年率6.3%は据え置きで、リスクを19.3%から12.7%まで軽減するために、新NISAの非課税枠を除き、これからは債券、不動産、金を徐々に買い付けて、将来的に黄金比のレシピ通りにして行けば良い道標が既にある。
とはいえ、あくまでもアメリカで20年分の統計データをもとに考案された、ドル建て資産に為替リスクが生じない前提のアセットアロケーションであって、日本人が鵜呑みにしても、同じリスク・リターンとはならず工夫が必要だ。
特に債券に関しては悩ましいところで、国内債券では殆どリターンが得られず、かといって先進国債券のファンドを保有すると、為替リスクが付き纏う。
とはいえ、多角的に日本の将来を考えると、国力が低下する線が濃厚で、短期的な材料によって円高方向に振れる可能性はあっても、中長期的には円安方向に働く可能性が高く、日本円よりも外貨で持っていた方が、資産は保全されると考え、個人的には後者の期待値が高いように思う。
駆け出しの頃にちょっと触って以来、収益性の観点で興味の薄かった債券に、今になって意識が向いているのは、これまでキャッシュを厚めに持てばええやんと、債券の立ち位置にピンと来ていなかった私が、意義を見出せる程度に資産規模が大きくなった証拠だろう。
投資家は通常、ただ単に現金のまま寝かせておくのは機会損失だと考える。そのため、効率よく運用しようと思えば思うほど、株式の比率が高くなり、反対に現金比率が極端に低くなってしまう。いわゆる株クラにありがちな、ポジポジ病である。
しかし、その状況下でリーマンショックのような、株価が最高値の半値まで暴落する出来事が起こるとどうなるだろうか。絶好のバーゲンセールにも関わらず、買い付け余力がなく、キャッシュを捻出するためには、最悪のタイミングで株式を売却しなければならない。
しかし、普段からポジションに債券を組み入れることで、下落局面で値動きがマイルドな債券を売却してキャッシュを拵え、株式を買うことができる。
逆も然りで、株式に過熱感が生じている時に、一部利確したキャッシュで債券を積み増すことで、将来的な調整・下落局面に備えるために、ポジションは埋めながらも、株式一辺倒とならない保険として機能する。
これがいわゆるリバランスだが、敢えて現金ではなく、現金化するのに一手間要する金融商品として債券を持つことで、ポジションを株式で埋め過ぎることなく、リスク低減できるのが債券の真価であり、良さなのだと思うようになった今日この頃である。