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運用成績を左右する地合い。

実力は過信しない。

 最近の円安によって、外貨建て資産がドル建てでは振るわない成績でも、円建てだとプラスの状態が続いている。円売りで日本全体が安くなっていることから、海外投資家から日本株も買われているためか、堅調に推移していることもあり、月あたり含み益の増加額が、月給よりも大きい状況が続いている。

 実体経済を鑑みると、米国のS&P500指数が半値戻しを達成してからも軟調な動きとなっているように感じることから、上値が重い展開が続くと読んでいる。それに比べて日本株は、ドル建てでは割安となっているものの、円建てで見ている限りでは、実体経済よりも好調に見える。

 実際に上場企業の4社に1社が、第1四半期にあたる4~6月期の決算が最高益と日経新聞で報じられたのは記憶に新しいが、純粋に会社の実力で最高益を叩き出しているというよりは、輸出企業ほど円安による為替差益の影響が大きいため、それによって利益が上乗せされているようにも思える。

 ドル円が115円の頃に仕入れた原材料を加工して、145円で製品を輸出しているような状況であれば、円安の恩恵を受けられるが、円高傾向の時に仕入れた在庫が尽きれば、海外から原材料を輸入しなければならない企業が大半だろう。

 そうなれば、今のレートで仕入れた原材料を加工した製品を数ヶ月後に売り出すことになるが、この時にレートが変わらなければ為替差益の恩恵はなくなるし、仮に円高方向に推移したら為替差損となる。

 どのみち、為替で業績が左右されている可能性の高い現状では、最高益だからと従業員に還元する方向に働く企業は少数で、給与所得一本ではジリ貧一直線となるから、資産運用の必要性がメディアでも取り上げられている様に感じる。

 今の相場は少なくとも下落傾向にはない様に感じるため、初心者でも短期で含み益が出るケースが出て来ると思うが、これを実力とは思わず、地合いで大体プラスになっていると考え、冷静にリスク許容度に見合った運用に留めなければ、長期投資で避けられない暴落に巻き込まれた際に退場しかねない。

とはいえ、実力も必要。

 私は所謂アベノミクスの頃に日本株を運用し始めたが鳴かず飛ばずで、eMAXIS Slimが登場後は米国株式の積み立てに軸を移したところ、2019年から21年にかけての米国株式の暦年パフォーマンスが高かった3年間の恩恵を受けたり、その後のグロースからバリューにトレンド転換したことで、バリュー中心だった日本株も上昇したことと相まって、資産運用開始時に想定していた年率4%よりもハイペースで資産を増やすに至った。

 これは、個人の実力というよりも、偶々地合いの良いセクターに投じていたことによる恩恵が大きかったと考えており、疫病に伴う暴落を乗り越えたとはいえ、今後、運用し続けていれば巻き込まれるであろう暴落やリセッションに備えて、相場が低迷しても退場しない様なポートフォリオを目指して、徐々に銘柄を組み替えては試行錯誤しながら学んでいる最中である。

 とはいえ、実力が皆無かと問われればそれも違う。最初の頃よりも専門用語や会計の知識が豊富となり、会社四季報や有価証券報告書が読めるようになったし、ネット上の銘柄分析ツールも用途に応じて使い分けている。

 そういった日々の積み重ねが、増やすか減らすか半々のダーツ当て同然だった状態から、増やせる確率が6~7割と増えていき、減らす方は損切りができるようになったことから、以前よりも損失が食い止められる方向になったことで、高配当銘柄から4%前後の配当を受け取りつつ、2割前後の含み益で推移しているのだと思われる。必要に応じて利確と損切りでリバランスしているが、暦年ベースでのキャピタルはプラスで推移できている。

傲慢さが退場の引き金となる。

 以前よりもインカムとキャピタルの両方が狙える銘柄の選定精度が上昇しているとはいえ、確実はあり得ない。投資の世界に「絶対」はないからだ。世の中には「人は絶対死ぬ」があるため、「絶体」はないと言い切れないが、投資に絶対はないと断言できる。

 実際、自分の中で将来性のある、中長期で期待値が高くて割安な銘柄をいくつかピックアップしては、割安そうな銘柄から優先して購入するが、期待した銘柄ほどバリュートラップで振るわなかったり、反対に期待薄だった銘柄の方が期待に反して爆発力があったりする。

 それが資産運用の面白さでもあり、恐ろしさでもある。だからこそ、保険をかけて複数銘柄に分散してしまい、ひとつの銘柄に集中させて、大きく増やすことが心理的にできないもどかしさがある。

 市場には様々な考えの人たちが、血みどろになり、騙し騙されながらマネーゲームに参加している。自分が安値だと思って買った銘柄は、誰かがその価格で売りに出したから売買が成立している訳で、売った人間の心理まで考えてみると学びがある。

 逆も然りで、自分が高値で十分儲けたと思って売りに出した銘柄を、買う人が居るから利確が成立するのである。買った側が何を思ってこの価格で買ったのか、検証してみるだけの価値はあるだろう。

 思考を巡らせていると、自分と逆の考えを持っている人が居る以上、全て自分の予想通りに相場が動くなんてあり得ない筈だ。理論武装によって連戦連勝となった結果、傲慢になるといつかは手痛いしっぺ返しを食らって退場しかねない。半分地合い、半分実力位の謙虚さで向き合うのが、市場に長居するコツかも知れない。


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