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ある意味、住宅ローンも信用取引。



社会的信用を担保に借金する仕組み。

 悪名高きワンルーム投資の裏側を暴露する動画で、年収400〜500万円が絶好のカモであり、電鉄会社に勤めていた頃の自分がその年収レンジだったこともあり、ワンルーム投資スキームに片足突っ込んだ知り合いの顔がちらほら思い浮かんだ。

 年収が400〜500万円よりも低いと、3,000万円前後のフルローンが組めるだけの社会的信用がなく、逆に年収700万円以降になると、年収相応に賢く、金融リテラシーもそれなりに有しているため騙せないと語っているのを見て、中途半端に社会的信用がある無知ほど危険なものはないと感じた。

 ポイ活サイトでも、年収500万円以上の会社員or公務員限定の投資セミナーに参加するだけで、ポイントや金券が貰える的な案件が散見されるが、上記のスキームが理解できていると、ワンルーム投資に嵌め込むためのエサだと見抜ける。

 金融リテラシーの低い人あるあるだが、株式はギャンブルだと思っていながら、こき下ろす株よりも遥かに期待値が低い筈の宝くじを買っていたり、借金は悪だと考えながら、携帯や車を残クレで買ったり、住宅をローンで購入することには抵抗感がなかったりと、発言と行動がちぐはぐだったりする。

 私からすれば、現金を担保に借金をして株を買う信用取引よりも、社会的信用を担保に借金をして家を買う住宅ローンの方が、ミスした時の額が大きく、賃金労働でリカバリーするのが難しい観点で、住宅ローンを組んで家を買うリスクを過小評価しているように思えてならない。

 そもそも、株の場合は誰もが知っている企業を保有すれば、ある程度の資産性があるが、日本国内の住宅は人口減少時代であり、誰もが知っている不動産屋から買ったところで資産性も懐疑的(少なくとも新築プレミアムが上乗せされている)と、しくじった時にリカバリー不能となるリスクは不動産の方が大きい。

賃貸はライフステージの変化に対応可能。

 そもそもサ○エさん、ち○まる子ちゃん、ク○ヨンしんちゃんのような、一昔前の一般的な家庭像を追い求めて、身の丈に合わない35年〜50年のフルローンで夢のマイホームを手に入れたところで、子どもが生まれて巣立つまでが最短で18年と、経済面で厳しい現実を突きつけられる期間の方が長すぎる。

 それこそ私の実家も典型的なベッドタウンという名の郊外物件であり、資産と思い込んで負債を買った負動産でしかない。世間体から35年ローンで購入したものと思われるが、長男である私は15年、実に返済期間の42%しか同居していなかった。

 ある意味、残りの58%に相当する20年の返済期間は、もぬけの殻となった子供部屋を維持するために、割高なランニングコストを支払う消化試合でしかない。

 しかし、最初の数年は金利部分しか支払っていない(=元本が思いのほか減っていない)ため、いざ売却しようにも手出しが発生する可能性が高く、大人しく毎月10万円以上を支払い続ける以外、身動きが取れなくなっているのが現状だろう。

 もし、親が生存中に負動産を売却できないようであれば、推定相続人である私は相続放棄する気満々である。

 住宅購入時は、不動産屋のプロパガンダに乗せられて、賃貸と同程度の支払額で新築が手に入り、完済後は資産になると営業される。賃貸は築浅物件の家賃こそ同条件の住宅ローンより高いものの、長く住み続け経年劣化すれば、需給バランスから交渉次第で家賃は安くできる。

 その点、住宅ローンは返済額が35年間ほぼ一定か、金利変動で場合によっては当初の支払いよりも高くなる。いざ完済しても、35年後の木造住宅に建物としての価値はなく、住み続けると設備の不調による修理費用も負担しなければならない。

 資産性があるのは土地のみだが、それも35年後の郊外が値上がりするとは思えない。まして住宅は贅沢品のため、保有していると固定資産税がのし掛かり、マンションなら見積もりの甘い修繕積立金が値上がりする。

 家庭を持つなら、ライフステージの変化に応じて住む場所を柔軟に変えられる賃貸が経済的には合理的だと考えるが、いかがだろうか。

身の丈に合った生活を心がける。

 無論、住宅を嗜好品であり、浪漫であると考え、そのために私財を投じることを惜しまない考えのもとで住宅を購入する方は、どうぞお好きに購入して、ご自身の夢を叶えてください以上でも以下でもなく、他人がとやかく言う筋合いはない。

 私が主張したいのは、多くの方が何となく雰囲気で、人生の可処分所得の20%に相当する住宅を、資産だと思って購入しているのが、ちゃんちゃらおかしいことに気付いておらず、購入に至るのが不思議で仕方がない点だ。

 大事なことなので2回記す。人生の可処分所得の20%だ。パンピーは賃金労働者として社会に出て、人生の時間を切り売りして賃金を得ているのだから、住宅購入を失敗すると、単純計算で人生の時間を8〜10年失っているに等しい。

 その代償として何十年も年無駄に働かなければならないリスクが生じるにも関わらず、近隣の類似物件の相場感を調べるなど吟味して購入したり、そろばんを弾いて賃貸と持ち家で、どちらが経済的に合理的なのかを考える人はごく少数なのが日本社会の現状である。

 「身の丈に合った生活」は言い得て妙で、背伸びをした代償は、未来の自分が背負うことになる以上、今の自分が持ち合わせている経済力の範囲内で、やりたいこと、叶えたいことを実現していくのが、地に足をついた真っ当な生活ではないだろうか。


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