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ドット絵におけるごまかしの技術

本記事はドット絵 Advent Calendar 2024の7日目の企画となります。
並走企画の端ドット絵Adovent Calendar 2024もあるのでそちらも併せてご覧下さい。


こんにちは、Resinと申します。
普段はTwitterBlueskydotpictに不定期でドット絵を投稿しています。

はじめに

早速ですが、この記事を読んでいるドット絵を描く方は必ず以下のような壁にぶつかったことがあるのではないでしょうか

壁① 描きたいものが技術が足りずに上手く描けない
壁② キャンバスの解像度や色数をこれ以上増やしたくない

私も例にもれずこの壁にぶつかっています。私は普段以下のようなドット絵を描くことが多いです。

・背景は1色塗りつぶし
・解像度64×64
・色数8色前後


なぜこのようなスタイルで描いているのかというと

・背景は1色塗りつぶし
→背景を描くのが苦手(壁①)

・解像度64×64
→これ以上解像度が増えると人物の顔や体の構造が上手く描けなくなってしまう(壁①・壁②)

・色数8色前後
→色を増やすと配色にまとまりがなくなってしまう(壁①・壁②)

要するに

「人物中心のドット絵を描いているのにも関わらず扱える解像度と色に制限がある状態」

です。日々努力はしているのですが一朝一夕で上手くなるわけでもなく、描きたいものだけが増えていきます。

背景は正面かつカクカクしたものが限界
パースのついた背景も描いてみたいが技術不足


描けないものはごまかしてみる

練習することも大事ですが、描きたいものがたくさんあるのですから成長を待っているわけにはいきません。今ある技術でドット絵に取り組むしかないのです。何とかしてごまかしてみましょう。
前置きが長くなりましたがここからは技術が足りないときに私が使用しているごまかし方について紹介します。


ごまかし方

私が苦手としているものの一つが「手足」です。
解像度の都合で手と足に使える幅は1~3pixelぐらいです。まっすぐ立つだけなら問題ありませんがダイナミックなポーズにすると途端に難しくなります。陰影を用いて表現する方法もありますが色の制限から2色が限界です。
以下のドット絵を見てください

光を扱うのは難しい

このドット絵にはいくつか問題点があります

1つ目は足の色が明るいためランタンの光が当たっているように見えていることです。足は服の下からのびているので光はほとんど当たらないはずです。また明るい場所が2つあることで明暗による視線誘導が上手くいっていません。
2つ目はアオリの構図にも関わらず足元が細くなっていることです。
緩めのアオリではありますが本来であれば足元が大きくなるはずです。試行錯誤しましたが上手く描けなかったのでこのようになってしまいました。

このような2つの問題を以下のようにごまかしました。

「背景と足の色を同化させました」

多少強引かもしれませんが足があるように見えるはずです。また明るい部分が1ヵ所になったので修正前よりドット絵全体が見やすくなっている気がします。

なぜこの方法で足があるように見えるかというと

①人物が存在しており上半身や服を認識することができる

②絵の中心にランタンがあり顔に陰影がある
→この絵には光源があり光が当たる部分は明るくなり当たらない部分は暗くなることが想像できる

③足は服(ローブ)の下から延びるのでランタンの光は当たりにくいはず
→ドット絵全体の雰囲気を見ても足は暗い色が想定される

①②③の条件をまとめることでこのドット絵を見た人は

「服より下にある暗い2つの長方形は足だろう」

と認識するのです。足の形を直接的に描く必要はありません。

「描けない部分を周りの情報で補って鑑賞者の脳に描いてもらう」

のです。

ドット絵ではキャンバスの解像度や色数によって曲線や角度など表現できるものが制限されていき、解像度が低くなるにつれてその傾向が顕著になります。
以下のドット絵は手足と背景を同化することで
・奥に行くにつれて暗くなる「奥行き感(立体感)」
・奥に行くにつれて細くなる腕と角度の難しい開いた足を違和感をなく表現

という2つの効果を生み出しています。

今見るとマフラーの近くに消し忘れた灰色ドットがある

特に2つ目をこの解像度で普通に表現しようとすると1・2pixelほどの幅で描かねばならないため不自然な仕上がりなってしまいます。この方法を用いればキャンバスの解像度以上のなめらかな手足を描くことできます。

描いたドット絵の解像度を変えることはできませんが鑑賞者の脳内では解像度を変えることができるのです

ごまかしの例

ほうきと手
ベルトを描くことで腰を表現

人物以外への応用

私の場合人物に用いることが多いですが、もちろん他のものにも用いることができます。先ほど
「描けない部分を周りの情報で補って鑑賞者の脳に描いてもらう」
と言いましたが具体的にどのようにすればよいのでしょうか。
例として以下のドット絵をご覧ください。

3×4の長方形

このドット絵は何を表しているのかわかるでしょうか?勘のいい人は気づくかもしれませんがこの時点ではまだ判断できません。
これではどうでしょうか。

ドッターを惹きつけてやまない魅惑の物体

これで分かったのではないでしょうか。
正解は室外機です(分かりにくいのはご愛敬)
重要なのは
「室外機自体のドットは増えていないにも関わらず室外機と認識できるようになったこと」
です。壁やベランダ、窓など

室外機の周りにありそうなものを配置する

ことで相対的に室外機を表現するのです。

人間はものを見てそれが何なのかを判断しますが、その判断は周りの環境に大きく影響を受けます。環境を描くことで鑑賞者の認識をうまく誘導することができるのです。


ごまかしではなく表現として用いる

ここまで背景と人物を同化させる方法を技術不足をごまかす方法として使用してきましたが、絵のコンセプトとして用いることもできます(むしろ世間一般ではそれが主流)

以下のドット絵をご覧ください

Resinはまほうつかいしか描かないだろうという先入観によって上の部分はぼうしだと認識できる

このドット絵は髪・服・帽子・背景の色を同化させることで色数を減らし、緑+無彩色に絞ることで統一感を強め背景を含めて1つのドット絵として表現しています。つまり
「背景が1色塗りつぶしなことに理由がある」
のです。これによって上で挙げた私の弱点である
・背景を描くのが苦手
という部分も補うことができます。

看板の影部分が背景と同色になっているところがこだわりポイント

おわりに

拙い文章ですが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
この記事が皆さんのドット絵ライフの一助になれば幸いです。
この記事で紹介した方法は普通のイラストでも用いることができますが、制限のあるドット絵のほうがより効果的に用いることができると思います。来年こそは風景ドット絵が描けるように頑張ります。

ドット絵 Advent Calendar2024(表・端)はまだまだ続きます。
このあとも皆さん楽しんでください!

それでは