宇都宮健児陣営は山本太郎の出馬を歓迎せよ!~ガチガチの組織戦で一抹の勝利の芽が出て来た~
東京都知事選挙の公示日(18日)まで1週間を切り、いよいよ選挙ムードが高まって来た。現職の小池百合子都知事も立候補を表明し、野党共闘陣営は宇都宮健児候補を支持、第3極の日本日本維新の会も熊本県の副知事であった小野泰輔氏を推薦する見通しとなった。そして、れいわ新選組の山本太郎代表も、出馬を検討しており、その可能性は現在50/50とのことである。
この山本太郎代表の出馬によって、宇都宮健児支持者の多くは「野党(リベラル)票が割れる」との見解を示し、山本太郎代表には出馬して欲しくないとの声が大方である。しかし、東京工業大学の中島岳志教授によれば、元俳優で有名人の山本太郎さんは、むしろ小池百合子都知事の票を奪うのではないかとの見解を示している。
https://twitter.com/nakajima1975/status/1270699896404717570
この見解に対しては、「そんな訳ないだろう!」と多数のツッコミが入っているが、私自身はこの見解は一理あると考える。無論、宇都宮健児候補の票を山本太郎代表が奪う可能性もあるだろう。だからこそ、宇都宮健児支持者は、「山本太郎と票が割れる!」と、後ろ向きになるのではなく、「山本太郎には1票もやらない!」と強気になるべきなのである。そして、中島岳志教授が述べているように、「山本太郎は出馬して、ガンガン小池百合子の票を奪ってくれ!」と、むしろ小池百合子票が減ることを期待すべきなのである。本稿では、山本太郎代表の出馬により、宇都宮健児陣営が「ガチガチの組織戦」を展開することで、一抹の勝利の可能性が出て来たことを述べて行く。
1.昨年の参議院選挙の比例票数を見ると・・・
まず、手始めに昨年の7月に行われた参議院選挙での東京都内の各主要政党の比例票数を見て行く。
自民党が187.8万票と圧倒的であるが、立憲民主党も102万票と、100万票の大台には載せている。公明党と共産党は、公明党が66.5万票で、共産党は65.1万票とほぼ互角になっている。社民党も根強く10.4万票を獲得している。日本維新の会とれいわ新選組も、これまた公明党と共産党と同様に、ほぼ互角となっている。日本維新の会が四捨五入で48.0万票となり、れいわ新選組は45.8万票と僅差である。自主投票を決めた国民民主党は27.3万票と東京では少なめになっている。これを踏まえて、各陣営の基礎票として、割り振ってみる。
2.基礎票からの票数予測と私的見解
上記の通り、自民党と公明党を足すと小池百合子都知事は254.3万票を獲得する見込みである。しかし、自民党は3年前の都議選では小池百合子都知事と一悶着あり、都議会自民党を壊滅させられていることから、自主投票を決定し、そう簡単にはこの通りに票は乗らないであろうと考える。流出先は同じ保守系の候補者である維新推薦の小野泰輔候補がメインとなるのではないだろうか。あとは、有名人票でどの程度、れいわ新選組の山本太郎代表に流れるかがポイントである。革新系の宇都宮健児候補には、小池百合子票はほとんど流れないとは見ている。
対して、宇都宮健児候補は、支持母体である立憲+共産+社民の票を足すと実に177.5万票と、結構な票数になっていることが分かる。私自身はこの票数を見て、宇都宮健児陣営にも一抹の勝利の可能性はあると今回記事を書いた次第である。ポイントは、とにかくこの票数を他の陣営に流出させないことである。すなわち、徹底した組織戦で177.5万票を死守することである。当然、山本太郎代表にも渡してはならないし、打倒すべき小池百合子都知事には絶対的に流出させてはならないのである。共産党や社民党に対しては、それなりに引き締めが効くとは考えるが、問題は立憲民主党の102万票である。この票をどれだけ死守できるかに勝利が掛かっていると言えるだろう。小池百合子都知事にも半分の50万票流れてしまったら、全く勝負にはならないことになる。ただ、現実は個人的にはそうなってしまう可能性が高いのではないかと思うところもある。宇都宮健児陣営は、如何に立憲民主党と一体となって共闘できるかが最大のカギと言えよう。
小野泰輔候補の基礎票は日本維新の会の48.0万票となる。ここから小池百合子都知事からどれだけの票を奪えるかが最大の焦点となる。過去2011年の都知事選挙にワタミの渡邉美樹社長が出た際には101万票を獲得しているので、東京都内における、いわゆる「改革票」はMAXで100万票程度は存在するのではないかと見込んでいる。自民党が自主投票になり、反小池票も見込めることから、基礎票の48万票に加えて、最大で50万票あまり、小池百合子都知事の基礎票から2割程度流出する可能性もあると考える。恐らく50~100万票のレンジになると考えるが、日本維新の会が好調な背景を活かし、結構健闘して、100万票により近い数値が出るのではないかと私は見ている。
最後にれいわ新選組の山本太郎代表であるが、率直に言って、何万票取るかは全く読めない。基礎票は45.8万票であるが、宇都宮健児候補との票割れを嫌った層が離反して、次点の宇都宮健児候補に票が流出するかもしれないし、逆にガッツリ宇都宮健児候補の票も取る可能性もある。そして、有名人票として、小池百合子都知事の票も一部奪う可能性もある。本当に予測が難しく、参議院選挙からの基礎票も減らして30万票程度に留まる可能性も、有名人票で100万票以上集める可能性もある。全く分からないが、2013年の参議院選挙の東京選挙区で出馬した際の得票数が66.7万票で、30万票と100万票の間にもなるので、取りあえず、この辺りの票数を中央値として想定しておくことにする。
3.宇都宮健児東京都知事が誕生する票数はこれだ
以上の点を踏まえて、宇都宮健児候補が勝利する可能性がある最良の票数を示しておきたい。
宇都宮健児候補が奇跡の勝利を起こすには以下の条件が必要となる。
1.立憲+共産+社民の基礎票である177.5万票を死守する。
2.小野泰輔候補が小池百合子都知事の基礎票の2割である50万票を上乗せする。
3.山本太郎代表が小池百合子都知事の有名人票を30万票取って上乗せする。
これが、宇都宮健児陣営が勝利を起こし得るベストのシナリオである。こんなの不可能だと思うかもしれないが、このシナリオを目指して、とにかく基礎の組織票をガチガチに固めることである。そして、他力本願にはなるが、小池百合子都知事の票が小野泰輔候補と山本太郎代表にも流れることを期待する。なので、山本太郎代表に票を奪われず、逆に小池百合子都知事の票を奪ってくれることを期待して、勝利のためには、むしろ山本太郎代表の出馬を歓迎すべきなのである。
4.現実的な得票数の予測
以上のように、宇都宮健児候補の支持者には大変な期待を抱かせたわけだが、最後に厳しく見た現実的な得票数の予測も記しておく。
というわけで、小池百合子都知事の254.3万票は変わらずである。ただ、内訳としては維新の推薦の小野泰輔候補に50万票を奪われるも、宇都宮健児候補の立憲票のうち、半分の50万票を奪うという算段になっている。宇都宮健児候補は大分票数を減らして102.5万票となった。これは前述の通り、立憲票の半分の50万票を小池百合子都知事に奪われて、かつ山本太郎代表にも25万票を奪われる算段となっている。過去の二度の実績を踏まえると、二度あることは三度あるで、100万票前後になってしまう可能性も否めないところだろう。
小野泰輔候補に関しては、支持率が上昇して好調な維新の状況を踏まえて、かなりMAX値に近い98.0万票とした。小池百合子都知事から50万票奪う算段である。実際はもうちょっと少ない可能性とは思うが、維新の基礎票の48万票からは幾分か積み重ねて来ると見ている。
れいわ新選組の山本太郎代表に関しては、基礎票から宇都宮健児候補の基礎票を25万票奪って70.8万票とした。結局は、小池百合子都知事からは奪ったり奪われたりで、イーブンとなるケースである。削ったのは、やはり宇都宮健児候補だったという結果である。やはり、組織無しの自前のみでは取れてもこの程度だろうという厳しい見方をしている。無論、最も未知数なだけに、もっと跳ね上がる可能性も否定はしないが、無難なところでは7年前の参議院選挙での66.7万票前後になると予測する。
以上が東京都知事選挙における私の予測であるが、あくまで予測でしかないので、そこまでの自信と精度はない。ただ、最大の争点は立憲民主党の100万票にあると考えるので、この票の行方次第で各候補者の票数も変わって来ることだろう。宇都宮健児陣営が勝利するためには、とにかくこの票数を死守することである。共産党・社民党支持層から9割を固めるとして、立憲支持層も8割以上固めれば(現実的にはかなり厳しいが)、一抹の勝利の可能性は有り得るとのことで記事を書いてみた。
れいわ新選組の45.8万票がそのまま宇都宮健児陣営に乗ることを期待するよりも、まずは地力で組織票を確保したうえで、あとは他力本願で、山本太郎代表が小池百合子都知事の票の一部を獲得することの方を期待して、むしろ山本太郎代表の出馬で混戦ムードになることを歓迎すべきなのである。
P.S.
東京都知事選挙だけではなく、衆議院選挙にも興味がある方は、寄附がてら下記の有料記事(各100円)もご覧頂けると嬉しいです(1万字以上もあるボリュームのある記事となっています)。
次期衆議院総選挙における各党の比例ブロックでの獲得議席予測~参議院選挙の比例得票数をベースに・東日本編~
https://note.com/researcherm/n/nae51c0e7668f
次期衆議院総選挙における各党の比例ブロックでの獲得議席予測~参議院選挙の比例得票数をベースに・西日本編~
https://note.com/researcherm/n/nc8e0a8efaa8c