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修士論文のコツ(その2):ストレスの原因と対処法

自分の書いた記事をみてみると、前回書いた「修士論文のコツ」の記事の閲覧数が非常に多いことが分かりました。それだけニーズがあるということなのでしょうか…。たくさんの方に読んでいただき嬉しいです。ということで、今回はその第二弾として”修論を乗り越えるためのヒント(?)”をまとめてみたいと思います。もしかすると、論文執筆だけではなく仕事のストレスを低減するためのヒントにもなるのかもしれません。


第一弾記事はこちら↓


修論はなぜメンタルにくるのか

このような記事をまとめているのはひとえに「修士論文を書くのがつらい」という学生の役に立てればと思っているからです。良い論文を書き、良き研究者が一人でも育ってほしいと思っています。優秀な人材なのに、メンタル面で不調になり研究から離れていく、というのは社会的損失に他なりません。そのような人を少しでも減らすことができればと思っています。

第一弾記事でも書いたように、”修論は初めての学術論文をまとめる作業”です。このため、論文としての作法や勉強の仕方、成果のまとめ方がわからず困ってしまうわけです。つまり、”どうすればば分からない”という不安、焦燥が修論を書いていくうえでメンタルを削る一つの要因になっているわけですが、僕の経験上もう一つの大きな要因があると思っています。

それは「研究は成果を短期的には感じにくい」ということです。言い換えれば「頑張った成果がすぐにはわかりにくい」ということです。自分が前進しているのか?進歩しているのか?成長しているのか?実感する機会が少ないために、不安や焦燥が生まれるのです。行先が分からない+目標に向かって進んでいるかわからない、というダブルパンチが修論生のメンタルを削っていきます。


成長の実感と時間軸

研究という作業は、短期間で成果を感じることは非常に少ないです。例えば、何十、何百、何千とある先行研究を読み、これまで行われてきた研究の課題を明らかにすること、自分が関心を持つ問題の社会的背景やその問題性(なぜ、その問いを解かなければならないのか)を説明すること、リサーチクエスチョンを立て、調査の方法を検討すること…等々の作業は、数か月あるいは年単位で時間のかかる作業です。その期間は”研究がすすんだぁ~”と実感する機会は少なく、いつまでたっても研究が進んだ気がしない、そんな気分になることも多いのではないでしょうか(僕はよくなります)。

この「短期間で成果が実感できない状態」というのは、成果をすぐに得ることに慣れた僕たちにとって非常にストレスになります。これまでの学校生活(小学校~高校)では、「勉強すればテストの点数は上がる」「練習すればタイムは伸びる」というように自分の努力に対する成果を数週間・一か月単位、長くとも数か月単位で確認することができたかと思います。そのような努力→成果の時間関係を刷り込まれてきた僕たちにとって「いくらやっても成果が実感できない」「1年やっても成果が得られない」という状態は非常にストレスになるわけです。


対応策①課題を細分化し、リスト化する

では、このようなストレスに対応するためにどうすればいいでしょうか?僕の経験上、大事だと思うことを2つ提案してみたいと思います。ポイントはストレスの原因”成果を実感する機会が少ないこと”に対し「短期的に成果を実感する機会を増やす」ということです。そのための方法の一つ目は「課題を細分化し、リスト化する」ということです。これは、仕事術や論文執筆に関する他の記事でも書かれていることかもしれませんので特段新しいことではないかもしれません。しかし、大事なことだと思いますのでまとめてみます。

ストレスの原因は短期的な成果の実感がないことですので、長期にわたる作業をより細かいタスクに分解し、短期のうちに自分が「やったわぁ~」「できたぁ~」「おわったぁ~」と感じられるようにするという対応方法です。例えば、”先行研究をまとめる”というタスクがあった場合、その作業は非常に長期にわたるタスクになりますので、タスクを終えるまで「やった感」を実感できずストレスになるわけです。このため、「今週は2000年~2005年までの論文をレビューしてまとめよう」とか「今週は○○を対象とした論文だけレビューしてみよう」といったように、週単位で細分化し達成感があるようにタスク管理を行うと、メンタルを削られずに済みます。

先行研究の検討だけではなく、論文執筆の場合にも同様です。「今週は緒言の構成だけなんとなくまとめてみよう」とか「今週は考察のこの部分は書いてみよう」といったイメージです。僕の場合はより細分化して「今日は何も考えずとにかく緒言を書きなぐってみよう」とか「今日は結論で言いたいことをリストアップしてみよう」など一日単位で何か”終わった感”を感じられるようにタスクを細分化するように工夫しています。こうしておくと、今日はとりあえずこれはやった。という感覚を持って眠りにつくことができます。一日一日で何かやった感があるので、おすすめです。


対応策②研究以外で成果を感じられる何かを行う

2つ目の方法は、「別のことで成果を感じられるようにする」というものです。成長の実感や満足感を研究以外の活動から味わうことで、メンタルのバランスをとる方法です。研究だけに没頭していると、研究が進まないことで”自分は無能だ””自分はなにも成長できていない”と「研究における成長のなさ」が「人間としての成長のなさ、無能さ」に結び付けられてしまう傾向があると思います。実際は様々な側面で人間的な成長はあるはずなのですが、研究に没頭しているために研究以外の成長が見えなくなり、自己肯定感が下がるのです。

このため、自分は成長しているんだ!という感覚を持つ活動を何か別の機会から得ることが非常に重要です。研究を行う上で趣味や気晴らしが重要だとよく指摘されるところですが、趣味は短期的に成長を実感する機会としても非常に重要だと思っています。

僕の場合は、「筋トレ」がその対象でした。筋トレはやればやるだけ重い重量を扱えるようになりますし、見た目もどんどん変化していきます。短期的な成長、成果を感じやすいのです。論文執筆の時期には、研究は全然進んでいないですがそれに反比例して肉体だけはどんどん成長していく(=マッチョになっていく)という変な状態になっていました。しかし、自分の肉体的な成長を実感できていたために、自己肯定感は下がらずに済みました。研究での成長のなさも”まあいいか””なるようになるだろう”と割り切ることができていたのだと、今になって思います。


結論

ストレスの原因は「成長や成果をなかなか実感できないこと」にある。これに対処するには、短期間で成長や成果を実感できるタスク管理の方法をとるまたは、成長を実感しやすい趣味を行うことで自己肯定感が下がらないようにする!!

映画をみたり、漫画を読んだりすることも一時的な気晴らしにはなりますが、成長の実感は伴いませんので、僕個人としては一時的なしのぎにしかなりませんでした。ストレスを感じる原因が「短期的な成長を実感する機会がない」ことだとすると、成長や成果を実感できる活動を行う方がより効果的なのではないかと経験上思っています。

その意味で運動はタイムや距離、重量、見た目など変化を実感しやすい活動なので良いのかもしれませんね。健康にもいいですし。あくまで僕の個人的なストレスへの対処法ですが、何かの役に立てばうれしいです。


それではまた。

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