発達障害の健康管理 その1 ~セルフモニタリングの道具に頼りましょう~
noteを読んでいただいて、ありがとうございます。注意欠如多動性障害(ADHD)・精神障害者手帳2級で博士(生命科学)のred_dash です。
みなさんは健康ですか。健康第一とは言うものの、気が付くと疎かになってしまいがちではないでしょうか。正直、私もそんなところがあるので気をつけています。
特にADHD当事者は健康管理に困難を抱える場合があることがあります。例えば下記の梅永先生の書籍は、目次の時点で「1 どうして健康管理が苦手なのか」と指摘しています。
ADHDが健康管理に困難を抱える原因については、いくつかの要因が考えられます。例えば要因の一つとして睡眠の困難が挙げられるでしょう。例えば2010年のレビュー(複数の研究論文の比較考察のこと)では、ADHD患者が覚醒の度合いに問題を抱えうることや睡眠開始時間の遅れが見られうることを指摘しています。
一方で、ADHDの健康管理の困難を生み出す生理学的な仕組みについては、一貫した結論が得られているとは言い難いです。例えば、ADHDの健康上の困難の原因は自律神経系の不安定さに由来するとの仮説があります。しかし2020年のレビューでは、55の論文を比較した結果、自律神経系の機能障害がADHD患者で見られると報告する論文もある一方で、必ずしも機能障害があるとは結論付けられないとする論文もあることを指摘しています。
(注:つまりADHDに限らず、健常者にとっても自律神経系の制御は健康管理に重要です。)
私自身は健康管理の困難さの一端は、前回までに紹介した"感覚鈍麻"に由来すると考えています。つまり、体温をはじめとする自分の身体の状態を把握することが困難なため、何かを行った際に健康状態が良くなったか? 悪くなったか? を把握することが十分できません。結果として、健康状態の管理・維持する方法が身に付かずに困難となる、と推測しています。
ADHDが健康管理に困難を抱えるもう一つ理由は、記憶力の弱さにあるかもしれません。例えば、最近の自分がどの程度活動してどのような調子であったかを必要な時に思い出せずに無理に活動してしまうことで、体調を崩します。
以上を踏まえて、私は対策として
1. 自己の健康関連の情報を見える化して分析すること
2. 固有感覚の強化
を実践しており、その効果を実感しています。今回はこのうち1について紹介をします。
私が実践している健康関連情報の見える化は
a. 歩数・睡眠・心拍数の計測
b. 室温・湿度の計測
c. 天気と気圧の把握
の3点です。今回は特にaの歩数・睡眠・心拍数の計測について紹介します。
私は歩数と睡眠を下記のような、トラッカーで計測しています。Fitbit Charge 4 がおすすめです。これは、私が現在使用しているCharge 3 の後継機になります。
ちなみに、Charge 3 はこちら。
トラッカーで歩数を計測することで、今日自分がどの程度動いていたかを私は管理できるようなりました。睡眠時間を計測することで、寝不足が続いていないか、無理をしていないかを確認することもできます。さらに心拍数を計測することで、自分にどの程度のストレスがかかっているかを確認することが可能です。心拍数は自律神経系の活動と相関しているので、ストレスを反映します。実際に計測してみると、私の場合、嫌なことがあった日から数日間、安静時の心拍数が上昇傾向にあることが確認できました。
Garmin社の製品もお勧めです。
こちらは、私の妻が使用している製品の後継機になります。健常者である妻にとっても、トラッカーは有用だそうです。
ガーミンの製品は、ボディーバッテリーという、自分のエネルギーの残り具合を数値化してくれる機能が便利です。無理をしすぎないように行動を調節するために、役立ててください。
以上の製品はどれもそれなりに高価ですが、数年間は使用できます。より安価に試してみたい方は、下記商品がおすすめです。
私もはじめてのトラッカーはLetscom社の、上と同等レベルの商品でした。精度はfitbitやGarminに劣るものの、歩数と睡眠をそれなりの精度で計測してくれます。ただし、寿命は1年と少し程度だったことを踏まえると、fitbitやGarminの方が費用当たりの効果が高いと、私は考えています。トラッカーを一度試してみたい人にはLETSCOM社の製品がおすすめです。
それでは、よい1日をお過ごしください。
※本記事は、red_dash が2020年7月8日現在までに収集した情報に基づき作成されていますが、情報の正確さを保証するものではありません。
※発達障害には個人差があります。必ずしも紹介した全ての事項が当てはまるとは限りません。いくつか当てはまる症状があった場合、心療内科や精神科に相談して医師の診断を受けてみましょう。
※リンク切れ、事実と異なる記載など、お気づきの点を発見された際はどうぞコメントからご連絡ください。
参考
【書籍】梅永雄二, 発達障害の子の健康管理サポートブック (健康ライブラリー) , 講談社, 201
【論文】Konofal, Eric, Michel Lecendreux, and Samuele Cortese. "Sleep and ADHD." Sleep medicine 11.7 (2010): 652-658.
【論文】Bellato, Alessio, et al. "Is autonomic nervous system function atypical in attention deficit hyperactivity disorder (ADHD)? A systematic review of the evidence." Neuroscience & Biobehavioral Reviews 108 (2020): 182-206.