東日本大震災被災地の「いま」を伝える「震災学習列車」
こんにちは!レスキューナウ危機管理情報センターの村松です。
今年の3月11日で東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)の発生から13年となります。震災以後に生まれた子どもたちも増え、震災の記憶を伝えようとする取組みが各地ですすめられています。
今回は、「伝える」取組みのひとつ「震災学習列車」について紹介します。
震災学習列車とは
東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県の太平洋沿岸。海岸線に沿って「三陸鉄道リアス線」という鉄道路線が通っています。東日本大震災の際は沿線のみならず鉄道設備にも大きな被害が出ており、8年かけて徐々に復旧していきました。
この鉄道路線で震災翌年の2012年から運行されているのが「震災学習列車」です。盛~釜石駅間、鵜住居(うのすまい)~宮古駅間、田野畑~久慈駅間の3区間で運行されており、学校の学習活動を中心に、2023年3月までに9万人弱が利用しています。
この列車は基本的には団体乗車を前提としており、1両単位での料金(約5万円)となっているのですが、昨年は幸運にも個人客向けの列車が数日間設定され、そのうち1列車に乗車する機会を得ました。
震災を伝える「いのちをつなぐ未来館」
私が乗車した震災学習列車は鵜住居駅を出発し宮古駅に到着するというコースで、約1時間をかけて走行します。
乗車当日は仙台から新幹線・大船渡線・リアス線と乗り継ぎ、鵜住居駅に到着しました。鵜住居駅周辺は津波で大きな被害を受けたところで、避難行動によって生死の明暗がわかれた場所でもあります。
駅前は震災復興にあたって「うのすまい・トモス」として公共施設などが一体的に整備されました。そして、観光交流拠点施設などと共に防災学習施設「いのちをつなぐ未来館」が開館しました。こちらは1つの建物としてはそこまで大きくないものの、展示内容は濃密です。震災当時のタイムラインや避難所などで作成された生々しいメモ、津波が押し寄せた場所にあった遺留品などが展示されています。
ぜひこの展示を現地で見てほしいとは思いますが、被害の概要と「うのすまい・トモス」の施設概要、そして復興にあたってのメッセージをまとめたリーフレットがあります。
未来の命を守るために釜石からのメッセージ(PDF 23.3MB)
ぜひこちらのリーフレットの中でも最初のページにある「10 のメッセージ」だけでも読んでみてください。津波の被害にあった釜石の人たちの思いが少しでも感じられるかと思います。
私自身は「いのちをつなぐ未来館」で展示をじっくり見てまわり、気がつけば震災学習列車の集合時間ギリギリになっていました。
ガイドと車窓で被災地を知り・感じる
駅の待合室で「震災学習列車」の受付を済ませ、列車に乗車します。列車は1両編成で、当日は座席の7割が埋まっていました。乗客には記念乗車証明書が配られ、列車は定刻通りに発車します。
この列車の最大の特徴は三陸鉄道の社員が被災当時の様子も交えながら沿線をガイドし、復興するいまの様子を伝えるところにあります。この日は小学生の時に三陸鉄道沿線で被災したという若い社員の方がガイドを務めていました。震災復興の中で頑張る人々を見て、地元に残ることにしたといいます。
その方は津波を直接は見ていないというものの、まちの中が大火事になったという体験談を伝えてくれました。中には津波の被害が少なくても全焼した家があるといい、津波被害の影に隠れているものの、やはり地震や津波の際に生じる火災は恐ろしいと感じました。そして、乗車から1年経った今、1月の能登半島地震での火災で改めてその恐ろしさについて感じているところです。
また、語りだけではなく、車窓も雄弁に震災による被害を伝えてくれます。高い防潮堤や明らかに新しいまちなみ、所々にある津波が到達した高さに残る跡など。一つ一つのスケールの大きさに、どういう感情でいたらいいのかわからないというのが正直なところでした。
ただ、悲しい語りや説明が多いというわけではなく、復興していくいまの様子も伝えたいということで、明るい話もところどころ織り交ぜながらのガイドで、あっという間に1時間の乗車時間は過ぎていきました。
三陸を訪れて改めて感じたこと
簡単ではありますが、ここまで、三陸鉄道で運行されている「震災学習列車」について紹介してきました。
東日本大震災以降、三陸地域を訪れたのはこのときで3回目でしたが、津波による被害が生々しく残る場から徐々に新しいまちなみへと姿を変えていき、新たな人々の暮らしが根付こうとしています。そして、同時に、未来へ災害の悲惨さを語り継ぐことで、防災・減災の取組みを残していきたいという人々の思いもまた見えます。
もう、ただ「被災した場所」だけではなくなりつつある三陸地域。いまこそぜひ一度訪れてみてください。そして、機会が合えば、ぜひ「震災学習列車」にも乗車してみてください。あるいは、ちょっとでもいいので、震災と復興について見て、感じてみてください。きっと、自分の生活における防災・減災を考える上でのヒントがあるはずです。
最後に
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