Vol.5 静岡県のインバウンド需要について
本日は、「静岡県のインバウンド需要について」見ていきたいと思います。
「え?このタイミングでインバウンド??」
って思われる方も多いかもしれませんが、それには訳がありまして、外国人をなかなか受け入れられない今だからこそ、新型コロナウイルス前の需要はどのような状況であったのかをしっかりと把握しておくことで、今のうちから対策を取ることができるのではないかと思ったからです。
つまりは、新型コロナウイルスが落ち着き、インバウンド需要を取り込めるようになってからスタートするのではなく、今のうちから状況把握と準備をしておくことでスタートダッシュが切れるのようにしておこうということです。
今回お示しするデータは新型コロナウイルス発生前の2019年のものとなりますので、今後のインバウンド需要の参考としてご覧いただければと思います。
○外国人消費の構造(クレジットカード)
こちらのデータでは、外国人のクレジットカードによる消費構造について見ています。
ここでは、クレジットカードによる外国人の消費について見ています。
「外国人消費の構造(クレジットカード):2019年」を見ると、圧倒的に「小売」での消費が多く、全体の約82%ものシェアを占めています。
2番目は「宿泊」になっておりますが、約12%、3番目の「飲食」に関しては、約2%と全体に占める割合は非常に少なくなっています。
更に1番消費されている「小売」を分解していくと「ファッション小売」が約43%、2番目の「量販店」が約26%となっており、この2つだけで約70%近くを占めていることとなります。
これは全国平均の「ファッション小売」と「量販店」の倍以上の数値になっております。
私個人的なイメージとして、静岡は外国人が関東方面から関西方面へ、逆に関西方面から関東方面に移動する際の通過点になっており、ホテルで宿泊されている方が多く、家電ショップで色々と購入されているイメージがあったのですが、データから見ると若干イメージが違いますね。
「量販店」が多くなっているのはおそらく家電ショップが影響していると思いますが、「ファッション小売」が一番多かったり、「宿泊」がここまで少ないイメージはあまりありませんでした。
(静岡県も東西に長く、だいぶエリアによって特性が違うので、私が浜松に住んでいることが影響しているかもしれませんので、その辺りはご注意ください)
○外国人消費の比較(クレジットカード)
ここでは、外国人の消費の比較について見ていきます。
「国・地域別消費額:2019年」で見ると、中国が圧倒的に多く、2番目のインドネシアの2倍以上の消費額となっております。
また、「分類ごとの消費額」として、「小売」「宿泊」「飲食」「観光・エンタメ」「交通」でも見ていきますが、ここでもやはり中国が、どの項目においても圧倒的に多く、2番目の国の2倍程度の消費額となっています。
つまりは、中国の方々への対応は、引き続き必要ということはわかりますが、ここで終わってしまっては今までとあまり変わらなくなってしまいますので、もう少し細かく特徴的なところを抜き出してみます。
<インドネシア>
インドネシアは、「国・地域別消費額:2019年」で2番目の国となっておりますが、「分類ごとの消費額」で見ると「小売」で2番目になっております。
ただ、それ以外の項目では上位5番に入っていません。
お買い物感覚で静岡を利用しているのでしょうか?
<シンガポール>
「国・地域別消費額:2019年」では、6番目の国ですが、「飲食」では5番目、「観光・エンタメ」では3番目になっています。
観光策として1番対策の取りやすいところでお金を使っていることがわかりますね。
<韓国>
「国・地域別消費額:2019年」では、11番目の国ですが、「交通」だけが5番目に入っています。
「交通」で電車やバス等を利用しているのかも知れませんが、果たしてどこに行って、何をされているのでしょうか?
ちょっと気になりますね。
<オーストラリア>
「国・地域別消費額:2019年」では、12番目の国ですが、「観光・エンタメ」だけが5番目に入っています。
オーストラリアの方がは、遊ぶ!ってところに集中して静岡ではお金を使うのでしょうか?
これら見てきたように、国ごとに消費の形態が違うように感じられます。
どこの国の方が、何に1番お金を使うのかを把握しておくことで、色々な対策が取れるのではないでしょうか?
細かく調べてみるといいかもしれませんね。
○【参考】キャッシュレス加盟店数推移
今までクレジットカードという観点で見てきましたが、ここでは近年需要が高まっているQRコード決済等も含めた加盟店の推移を見てみます。
やはりインバウンド需要を取り込むにはキャッシュレス決済は必要ですからね。
ここでは、静岡県内の浜松を中心に見ていきます。
「加盟店の推移:地域間比較」においては、伸びの差はあるものの2019年から2020年にかけて大幅に加盟店が増えています。
更にそれを「キャッシュレス手段別」で、浜松市中区(中心街)、浜松市天竜区(中山間地)との比較で、「クレジットカード」「QRコード決済」「その他電子マネー」で見てみます。
そうすると、浜松市中区は、クレジットカードが78%、QRコード決済が187%、天竜区では、クレジットカードが55%、QRコード決済が209%となっており、地域特性によりその伸び率に違いがあります。
仮説としては、今まであまりキャッシュレス(クレジットカード)の導入が進んでいなかった地域は、近年のキャッシュレス決済の急速な需要の高まりにより、導入する場合はクレジットカードとQRコード決済を同時に導入している可能性があります。
実際、天竜区のグラフを見ると、2019年10月の段階ではQRコード決済は、クレジットカードの加盟店舗の半分程度しかありませんでしたが、2020年6月の段階では、ほぼ同数の加盟店舗数となっています。
ただ、キャッシュレス決済の加盟店数は確かに伸びておりますが、インバウンド需要の取り込みという観点で言えば、外国人の方が使えるキャッシュレス決済でなければいけません。
その辺りも事前にチェックしておくといいかもしれませんね
(以前の中国の銀聯カードが使えない店舗が多かった、ということがないように・・・)
○【参考】外国人消費の構造(免税取引)
ここでは、参考で免税取引での消費構造についても見ておきます。
ここでもクレジットカード同様、「中国」のシェアが高く、2018年8月~2019年7月までの販売額においては、約70%のシェアとなっています。
その中でも40代(特に女性)の割合が多く、約38%となっていることもありますので、これら層への需要喚起するような商品構成になっているといいかもしれませんね。
○【参考】免税店数の推移
ここでは、「免税店数の推移」について見ています。
免税店数の推移では、東京・大阪の大都市圏も大幅に増加しているが、伸び率といった観点で言うと、その他地域の方が約2倍程度の伸びを示しています。
これは、やはり大都市圏以外でのインバウンド需要の高まりを表しているものと言えるのではないでしょうか?
需要の裏付け資料などとして利用できるかもしれませんね。
○まとめ
インバウンドと一括りにしても、どの国の人なのか、また実際にその地域にくる方々は、何にお金を使っているのかは、それぞれの地域で全く違うと思います。
実際に今回は、静岡県を例として見ましたが、「分類ごとの消費額」において国ごとで特徴的な消費があることがわかったのではないでしょうか?
また、インバウンド需要に関して必要不可欠になりそうなキャッシュレス決済についても少し触れましたが、実際に地域のこれらへの対応がどのようになっているのかも調べておく必要性はありそうですね。
ただ、いつも言いますが、これはあくまでもデータで見れるだけのことです。
現地に言って話を聞く必要もありますし、外国人からも生の声を聞く必要性もありますね。
データで「現状把握」をして、現地でのヒアリング等を実態調査で「深堀り」。
そして、そこから「仮説」を導き「解決策」を考える。
さらに「解決策」を実行したらしっかりと「検証」する。
常にこのサイクルを回していきたいですね。