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Vol.12 地域経済循環図

今回は地域の全体的なお金の流れを見る「地域経済循環図」をご紹介します。

〇地域経済循環図とは

地域経済循環図は、都道府県・市町村単位で地域のお金の流れを生産(付加価値額)、分配(所得)、支出の三段階で「見える化」したものになります。

地域経済の全体像と各段階におけるお金の流出・流入の状況を把握することができるため、地域の付加価値額を増やし、地域経済の好循環を実現する上で改善すべきポイントを検討することができるものとなります。

では、実際に「静岡県浜松市」を事例にして見ていきたいと思います。今回は、分かりやすくなるようにできるだけ簡単に説明したいと思います。

環境省「地域産業連関表」、「地域経済計算」(株式会社価値総合研究所(日本政策投資銀行グループ)受託作成)

<生産(付加価値額)>

まずは、生産から見ていきます。
浜松市では、第1次産業、第2次産業、第3次産業から生産されるものは、2兆8,791億円となります。
そのうち約99%が、第2次産業と第3次産業で生み出されています。

<分配(所得)>

生産で生み出された2兆8,791億円は、次に分配(所得)に回されます。
その分配(所得)には「雇用者所得」と「その他所得」の2種類があります。

雇用者所得とは、主に私たちのように働いている人たちが賃金や給料等で受け取るものになり、その他所得は、財産所得、企業所得、交付税、社会保障給付、補助金等、雇用者所得以外の所得になります。

次に、グラフの見方について説明します。
雇用者所得の青の部分は「浜松市在住の方が浜松市内の会社に勤務し、その会社から給料を受け取った」ことになります。

赤色の部分(1,480億円流入)は「浜松市在住の方が、近隣市町村等その他地域に勤務し、その会社から給料を受け取った」ことになります。

つまりは、浜松市在住者が、近隣市町村等の会社に勤務し、稼いだお金を浜松市に持ち帰ってきたということになります(浜松市としては、お金が他地域から流入したということになります)。
お金の流れだけを見ると浜松在住の方は、近隣市町村等その他地域で働いている方々が多いということになります。

私のイメージですと、浜松市に働きに来る人の方が多く、つまりは雇用者所得が流出する形になっていると思っていたので意外でした。

浜松市の場合は、赤色になりお金が流入してきた形になりましたが、この逆のパターンもあります。

その場合は、赤色の部分が白色に変わり、意味合いとしては「近隣市町村等その他地域の方が、浜松市内に勤務し、その会社から給料を受け取り、自らが住んでいる近隣市町村等に持ち帰った」ということになります。

つまり、その対象地域からお金が持ち出された(流出)という形になります。

ただ、グラフとしては、赤と白で分けられていますが、流入だけ、流出だけ、ということは日常では絶対的にあり得ないことで、常にこの双方が同時進行的に行われています。

つまり、このグラフ上では、その流入、流出を相殺する形で計上していますので、どちらか多かった方が記されますので、ご注意ください。

浜松市の場合は、流出(近隣市町村等その他地域の方が、浜松市内に勤務し、その会社から給料を受け取り、自らが住んでいる近隣市町村等に持ち帰った)よりも流入(浜松市在住の方が、近隣市町村等その他地域に勤務し、その会社から給料を受け取った)の方が多かったということになります。(※以後の赤、白の色分けも同様相殺項目となります)

その他所得は、先ほど記載した通り財産所得、企業所得、交付税、社会保障給付、補助金等、雇用者所得以外の所得となりますが、国からの補助金や本社が浜松市にある企業が他地域にある営業所や事業所から資金を集約する等、少し複雑になりますので、ここでの説明は省略します。
もし、詳しく知りたい方はコメントしてください。

<支出>

次に支出を見ていきます。
ここまでのお金の流れとしては、生産(付加価値額)で、2兆8,791億円が生み出され、それが地域に分配されると同時に、他地域から雇用者所得として1,480億円、その他所得として1,758億円が入って(流入)きて、浜松市全体として3兆2,029億円がプールされている状態となります。

支出では、この3兆2,029億円が、どのように使われているのかを見ていきます。
支出には、民間消費額、民間投資額、その他支出の3つがあります。

民間消費額の青の部分は「浜松在住者が浜松にあるお店で買い物をしたり、ご飯を食べたりしてお金を消費した」ということになります。

白色の部分(304億円流出)は、「浜松市在住者が、近隣市町村等その他地域にあるお店で買い物したり、ご飯を食べたりしてお金を消費した」ということになります。

つまり、浜松市以外でお金が使われたことになりますので、流出になります。

これも分配で見た通り、逆パターンもあります。
「近隣市町村等その他地域の方が、浜松市内のお店で買い物したり、ご飯を食べたりしてお金を消費した」ということです。

つまり、近隣市町村等その他地域の方が、浜松市でお金を使ったことになりますので、流入になります。

民間投資額、その他支出に関しても基本的な見方は同じです。

民間投資額は、企業の設備投資の意味合いで、その他支出は、政府支出、地域内産業の移輸出入収支額等の説明書きがありますが、もっと簡単に言ってしまってBtoBと捉えていただき、上記考え方で見ていただければと思います。

結果として、支出の青の部分が地域内の人、企業等で使われ、それが2兆8,791億円となり、生産で生み出された額と同額となり、地域でお金が循環していくという意味合いになります。

○まとめ

最後に地域経済循環率を見ながら簡単にまとめていきたいと思います。

地域経済循環率とは、生産(付加価値額)を分配(所得)で除した値であり、地域経済の自立度を示しているものとなり、値が低いほど他地域から流入する所得に対する依存度が高いということになります。

ただ、これはあくまでも地域で生産されたお金で、地域に住んでいる方々をどれだけカバーできているのかということだけですので、どちらが良い悪いというものではありません。

それを説明するために極端な例を紹介します。
こちらは、東京のど真ん中にある東京都千代田区の地域循環図です。

環境省「地域産業連関表」、「地域経済計算」(株式会社価値総合研究所(日本政策投資銀行グループ)受託作成)

そして、こちらは近年、子育て世代の移住が促進され、人口増加が続いている千葉県流山市の地域循環図です。

環境省「地域産業連関表」、「地域経済計算」(株式会社価値総合研究所(日本政策投資銀行グループ)受託作成)

地域経済循環率が、775.2%の東京都千代田区と56.0%の千葉県流山市ですが、大企業等の本社が多い東京都千代田区、子育て世代に優しい施策を実施している千葉県流山市。
どちらも素晴らしい街だと思います。

つまり、それぞれの自治体の街の環境や、今後何をしたいかによってこの辺りは大きく変わりますので、あくまでも地域のお金の流れを把握するという観点で参考としてご覧ください。

それでも、もし、地域経済循環率を上げていきたいということであれば、いわゆる地産地消。地域のものを地域で使う、地域のものを地域で食べる、ですね。

また、地域のものを他地域の方々に買ってもらうための策を打つ。

例えば、行政がふるさと納税等を活用して積極的にPRしたり、稼いでいる産業を見つけ出して更に売れるようにする、また現状は稼げていなくても何か良さを見つけ強化することで売れるようにする、そんなことが必要ですね。

そして、このような取り組みを推進されれば少しでも循環率には貢献することとなりそうですね。

ただ、その地域に住んでいる方々が今後どんな街にしていきたいのか?
また、何をしていきたいのか?
この辺りがしっかり決まらないとあらゆる策も打てませんので、まずは地域経済循環図で街としてのお金の流れを把握しつつ、それを踏まえて一人一人がしっかりと考えていきたいですね。

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