展覧会でなにを観る?

東京都の美術館で、作家初の日本における大規模展示という展覧会を訪れた。その展覧会の主題は、淡く、二面性を持っている微妙なものだったので、近くから遠くから眺めながら、じっくり鑑賞したかった。

けれど、入ってから10分で足早に会場を後にすることになった。

日曜日の午後だからか、スマホを手に目の前の作品や同行者を次々に撮影することに忙しい人々に作品たちが埋もれてしまっているように感じられたのだ。

みんな、きれいな写真や動画を自分のスマホに収めるためにここにきているのだろうか。ここに来たという痕跡をネット上に残すことがそんなに大事なのだろうか。そんなことが頭に浮かんできてそのまま居座ってしまった。

私は、風景を切り取ってしまう写真やあたかも現実の姿をその移ったものの範囲に規定してしまうような動画より、その場に形成された空間自体を感じるために来ていた。人が多すぎる状況では、そういう手間のかかる慎重な作業を行うのは困難だった。だから、そそくさと会場を後にした。

また今度、空いていそうな時間帯を狙って、来ようと思った。会場に収められている作品たちの醸し出す空気を、ちゃんと感じたいから。

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