VOCALOIDに救われたお話

ボカロに出会う前:孤独な音楽の日々

わたしは発達障害(アスペルガーとADHD併発型)を抱えています。中学生の頃、ギターと作詞作曲に夢中になり、自分の音楽を表現する楽しさを知りました。しかし、それには大きな壁がありました。

歌を歌うことがあまり好きではなかった私は、楽曲を発表するには誰かの声が必要でした。バンドを組むにはメンバーが必要で、当時はニコニコ動画やYouTubeのような場もまだなく、音楽を広めるためには他人の協力が不可欠でした。

しかし、発達障害の特性として、こだわりが強すぎることや、感情のコントロールが難しいことがありました。思ったことを遠慮なく口にしてしまい、他人とのコミュニケーションがうまくいかず、たとえ才能ある仲間と出会っても、良好な関係を築くことができませんでした。出会いと別れを繰り返すうちに、気づけば自分の周りには誰もいなくなり、音楽への情熱は孤独と不安に覆われていきました。

ボカロと出会った瞬間:救いの光

そんな日々が変わったのは、VOCALOIDとニコニコ動画に出会った瞬間でした。初めてニコニコ動画を見たとき、多くのクリエイターたちがVOCALOIDを使って自分の音楽を自由に発表している姿を目にしました。その光景は衝撃的で、夢のように感じました。

「これなら自分にもできる!」
そう思った私は、すぐにVOCALOIDを購入し、自分の音楽を表現する世界へと飛び込みました。VOCALOIDは、ボーカルを探す必要がありません。私が苦手だった「他人との良好な関係を築くためのコミュニケーション」を必要とせず、私の思い描く通りに歌ってくれる存在でした。もちろん、VOCALOIDを使いこなすためにはエディットや音楽制作の勉強が必要でしたが、それは苦ではありませんでした。むしろ、夢中で取り組める楽しさでした。

自分の音楽が世界に届く喜び

VOCALOIDによって作られた楽曲をニコニコ動画やYouTubeに投稿するたび、徐々に再生数やコメントが増えていきました。それは、孤独に戦っていた私にとって初めて「自分の音楽が誰かに届いている」という感覚を教えてくれるものでした。そして、収益化の仕組みが整っていたおかげで、音楽を「仕事」にすることができ、生活費を稼ぐために嫌々やっていた仕事から解放されました。

お金や時間に余裕が生まれることで、さらに音楽制作に没頭できるようになりました。自分の音楽が評価されるたびに、自信が芽生え、心の余裕も生まれました。心の余裕ができると、不思議なことに、他人との関係もうまくいくようになりました。

世界が広がる:ボカロが生んだ友情と創造

VOCALOID文化は、私の想像を超えた大きな世界を広げてくれました。自分が作った楽曲に、イラストや映像という新たな命を吹き込んでくれるクリエイターたちとの出会いが、その第一歩でした。初めて自分の楽曲にイラストをつけてもらったとき、まるで自分の曲が新しい「形」を持ったかのような感動がありました。さらに映像が加わり、作品が完成した瞬間、自分ひとりでは想像もできなかった素晴らしい作品に仕上がっていることに、思わず涙が出たことを今でも覚えています。

それだけではありません。投稿した楽曲が二次創作の波を生み、たとえば歌ってみた、踊ってみた、弾いてみた等といった形で、私の知らない場所で新しい形に生まれ変わっていく。その広がりを目の当たりにしたとき、私の心は言葉にならないほどの感動で満たされました。私の音楽が、人々の手を渡り、自由に羽ばたいていく。それは、孤独だった私が見たこともない「新しい世界」そのものでした。

こうした出会いや創作の輪が広がっていく中で、私の創作活動はさらに進化し、素敵な仲間たちとの友情も深まっていきました。コミュニケーションが苦手だった私ですが、音楽を通じて自然と心を通わせられる関係を築くことができました。いつの間にか、私の孤独だった世界は、色とりどりの人々と創作にあふれるものへと変わっていたのです。

最後に:ボカロPとしての願い

私にとって、ボカロPという職業は「救い」であり、「夢」そのものです。もしあの時、VOCALOIDとニコニコ動画に出会っていなければ、私は音楽を続けられていなかったかもしれません。音楽が私の人生を救ってくれたように、今度は私が、音楽やVOCALOID文化を通じて誰かを救いたい、希望を届けたいと思っています。

私が歩んできた道のりは決して平坦ではありませんでした。でも、だからこそ、今の私があります。これを読んでいるあなたも、もし迷いや苦しみを抱えているなら、自分の情熱を信じてください。VOCALOIDのようなツールや、共感してくれる人々が、きっとあなたの背中を押してくれるはずです。

未来のクリエイターたちへ。あなたの夢は、あなた自身が掴み取れる。
私はそう信じています。

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