短編小説 あの時に
桜が満開に咲いている。
道端には桜の花びらが沢山落ちていてすごく綺麗だ。
あと数時間で長い始業式が始まる、正直面倒臭いけどそれが終わったら待ちに待ったクラス替えの発表なのでまだ我慢。
あ、んで自己紹介ね
名前は石井亮太。
今日で高校三年生。
高校一年生の頃は一緒に同じ高校に入った幼馴染の親友の海里と「あと2年もこの学校に居なきゃいけねぇのかよ」とダルそうに言っていたけどなんだかんだ学校生活が楽しく2年もという考えが
「2年しか、1年しか」
と考えが変わっていき気づいた頃には3学年に上がっており、今では友達も増え"彼女"は居ないが楽しくやっている。
海里とも変わらず1番仲が良く、多分この先もずっと親友だろうな思っている程だ。
そんな事を考えているうちに、入学式やクラス替えは終わり最後の高校生活という事もあり、教師が優しさで揃えてくれたのかは分からないが、いつも一緒に昼飯を食べていた隣クラスの友達と同じクラスの友達と今年は同じクラスメイトになり、テンションは最高に上がった。
因みに俺がいる学校は少人数で、一学年に80人しかいない。もう俺達の学年は65人しか居ないが(笑)
でも、退学した友達もなんとか仕事をしててたまに会っては皆で飯を食べに行ったりするぐらい別に変わらず仲が良い。
ただ.....ただ...俺の高校生活で足りない物が一つだけあった。
「異性との交際」
これはある意味誇れる事だが、今まで生きてきて恋愛というものをした事がない。手を繋ぐ事もキスもした事がない。だが1回だけ中学生の時に告白をされた事がある、その告白してきた相手が海里ともう1人の幼馴染のまひろだった。容姿も上からになってしまうが悪くは無く、一般的には可愛い部類に属していると思っている。
告白された時は初めての事だったので凄い嬉しかった....がもう1人の幼馴染の海里が、まひろの事を好きなのを俺は知っていた。その事も知っていて俺もまひろの事を好きだったが海里に対して負い目を感じてしまい、自分の恋愛を諦めた。
「後悔はしていない」
と言ったら嘘になる、だが別に良かった。
過ぎた事にメソメソする程俺も女々しくない。中学を卒業してからはまひろとは毎週のゴミ出しの日にたまに見かけたり遭遇したりするぐらいで特に言葉も交わさない。
別にまひろも今では俺に対して告白した事なんて忘れて新しい彼氏でも居ると思う、まひろは高校生になっていわゆる垢抜けをしてより一層可愛くなったからこれは確定だろう。
因みに、海里にまひろの事をまだ好きなのかと先月おちょくり気味に聞き出してみたら、まだ好意は持っているみたいで一途で良い男だなと思いつつ、まだ連絡を取り合ってるのかと聞きだしてみると途切れず連絡を取り合ってるらしい。
もしかして「海里とまひろは付き合ってるのでは?」と思うと嬉しいし応援もしたいし結婚なんかしたら司会を務めたいと思うぐらいとっても嬉しい。
そんな事を考えてるうちに時の流れは過ぎて行き、気づけばクリスマスシーズンになっていた。残りの学校生活も後3ヶ月しか無いと思うと楽しい時間はあっという間に過ぎていってしまうと改めて実感した。明日はクリスマスだしクリスマスパーティーでもしたいと思い、学校の友達を誘ってクリスマスパーティーをする事になった。学校の友達は大半が彼女が居ないフリー人間達なので誘ったら即答で行くと返事がきて笑ってしまった。だがしかし海里だけは誘っても「ちょっと明日は用事がある」と言って断られてしまった。
そしてクリスマスパーティー当日
「これは絶対何かあるな」
皆一瞬にして理解した。
これは絶対何かある、クリスマスだぞ....クリスマスにぴったり用事なんて1つしか無いと言わなくても分かる....
「女だ」
全員口を揃えて言った。
でも、誰も邪魔なんかしようと思わず寧ろ応援したいと思っているようで安心した。女かは分からないが、とりあえず俺も親友が恋愛を頑張っているなら応援したいに決まっているのでいつか海里から彼女の話題が出たら皆でお祝いしたいと思っている。
時間もある程度経ちお店で予約したケーキを、俺がジャン負けで取り行く事になり寒い寒い外をダウンジャケットを羽織り歩いてケーキ屋に向かった。
そこのケーキ屋は地元じゃ有名の美味しいケーキ屋で着いた頃には予約していなかったお客が並んでケーキを買おうとしていた。そしてその列に並んでいた人を見て俺は驚いた。
「海里とまひろの手を繋いで並ぶ姿があった」
俺はびっくりした。
まさかとは思っていたが俺はビックリしすぎてその場から動けなかった。あいにくダウンジャケットに付いていたフードを深く被っていたのでバレなかったが俺はなぜか嬉しい気持ちと反面、何故か胸が苦しく痛みを感じた。
その痛みの原因は自分でも何となく分かっていた
俺は手を繋いで列に並ぶ2人を見て見ぬふりをして、予約したケーキを取り帰りの途中、自分に対して白い息を吐きながら
「結局女々しいのかよ俺は」
と言いながら自分の頬をつねった。
それから皆の居る場所に戻りケーキを皆で食べた。
楽しかった。
海里とまひろが居た事も
手を繋いで列に並んで居たことも
言わなかった。
初詣や色々なイベントも終わり気づいた頃にはあっという間に卒業シーズンに入り、なんやかんや卒業した。
俺も「後数日で就職かぁ...」と思いながらあの事以来凄い時の流れが早く過ぎていった様な気がしたなぁ...と思い出を振り返る。
そういえば卒業と同時に海里から
「隠しててごめん、実は俺は幼馴染のまひろって子と高一の頃から付き合ってて明日結婚するんだ」
と突然の告白があった。
皆、凄いビックリしていて口が塞がってなかったのを今でも覚えている、思い出すだけで笑みが零れてくる。
皆、少し時間を置いて海里に対して面白半分で嫉妬しつつも、お祝いの声をあげていてなんか微笑ましかった。
俺も
「幸せにしてやれよ!」
と大きな声で言った。すると海里は嬉しそうに
「亮太にその言葉を言われるのが1番嬉しいよ」
と涙を見せた事がない海里の涙を初めて見て、普通に貰い泣きをしてしまった。
そんなこんなでまひろと海里はめでたく結ばれた。
後日、お祝いをきちんとする事になった。
結婚式でも無いのに俺はスーツを着て、1人張り切りお祝いパーティーの場所に向かった。案の定笑われたが俺は場所問わず2人の前では正装をしてまできちんとお祝いをしたかった。
気持ちの悪い自分の女々しい気持ちにもケリをつける為に。
そして無事お祝いも皆で楽しむ事ができ、最高だった。
胸の痛みも消えた。
そこから皆と解散をし、歩いて帰っていると少しお洒落なレトロな雰囲気の駄菓子屋を見つけた。
最近建ったばかりなのか雰囲気はあるが綺麗で気になったので、何か買って食べながら帰ろうと思い駄菓子屋に立ち寄り、商品を見ていると懐かしい昔よく食べていたアイス見つけた。
懐かしいなぁと思い手に取ると、横から見るからに買って欲しそうな顔をしてくる少年3人組がいたので
「このアイス4個ください」
と言い3人にアイスを渡した。
案の定少年たちはとても嬉しそうにしていたので可愛いかった。
それから、すぐ近くの公園でその少年たちに誘われとサッカーをする事になり混ざることにした。
そうして遊んでいると、これが案外楽しい。
しかし久々に運動をしたせいかすぐ息を切らして疲れてベンチに座りこんでしまった。
その哀れな自分の姿を見て少年たちは
「もう疲れたのかよ」
的な顔でこちらを見てくる
「歳なんだよ」
と18歳の俺が絶対に使うには早すぎる言葉を使って逃げた。
すると
「おじさんって昔に
タイムスリップしたい?」
とよく分からない質問を唐突にしてきた。
というか俺は少年たちからしたらおじさんなのかと思ったが「昔にタイムスリップかぁ...」となんだかんだ考えていると少年たちの親御さん達が来て無邪気な笑顔でこちらに手を振り、親御さん達と家に帰って行った。
そして俺も重い腰をあげ、家まで歩いて帰宅している途中に、少年たちから問いかけられた質問に対して
無意識にボソッと