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ルーニー・ディクソンの最後から二つ目の逃走

「それで伯父さんというのは本当に出してくれるんでしょうね」

「確かも確か。《葬儀屋》モーテンセンといやあお前だって知ってるだろう。万事抜かりないから安心しな」

「だからここまで来たんですがねえ」

馬上から見下ろす崖の下には、細い川、竜の死骸、朽ちた建物が点在し、遠近感が狂う。

「ここいらはあれでしょう」

「何だい、あれたあ。はっきり言いな」

「あれっていったらあれですよ。首狩りの」

「馬鹿、クラハテンの連中のことを首狩りなんて呼んだらイノチがいくつあっても足りやしねえ」

「へえ。じゃあ首を狩るってのは出鱈目ですかい」

「連中がとっていくのはまず、耳だ。持ち運びに便利がいいからな。首を切るのは、南のバリストだ。皮をはぐのは西の……」

「おんなじですよ。とにかくここいらは連中の聖地でしょう。禁足地というやつだ」

「近いぞ。ほかには軌道駅沿いに大きく回り道しないとならねえ」

「妓楼の付け馬にイノチを掛けたいやつはいませんよ」

「うむ。同情するな」

「他人事みたいなことを、だいたいあなたね、よく文無しでうちのような大楼の太夫を指名しましたね」

「密航者の娘を拾ったり色々掛かり合いがあって……まあ、とにかく男は度胸だ」

「褒めてやしませんよ、で、ここ突っ切ると。まず両側から矢でぶすり、ですよ、どうすんです」

「ついちゃあ考えがある」

「どうもあなたの思案というのは。やっぱり、ここはひとつ、引っ返して、あんたを保安官に引き渡すってなどうです」

「いいから聞け。はぐれのクライング・ブルという男に聞いたんだが、このあたりの地下に、古き暗き道ってのがあるんだと」

「……また胡散くさい話を」

構わず男は軽く拍車を当てて駆け出す。

黒肌の男は、峡谷を一度だけ振り返り、悪寒を振り払い、連れに続く。

悪い予感しかしないが、まあ、とにかく、逃げられちゃあしまいだ。

【続く】

Photo by Glen Carrie on Unsplash

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