不妊によるカップルの温度差を乗り越えよう (4)「仕事をやめたいけれど…」
女性の不満②
「不妊治療に専念するため仕事を辞めたい。夫を説得する方法は?」
夫への説得の前に、もう一度考えていただきたいことがあります。
仕事と不妊治療の両立は確かに大変でしょう。でも仕事を辞めて治療に専念したからといって治療がうまくいくわけではありません(そんなことはわかってますよね)。特に仕事にやりがいを持って働いていた女性が仕事を辞めてしまうと、家にいる時間を持て余し、一日中治療や子どものことを考えてしまい余計につらくなるということもよく聞きます。またやはり治療費の負担を考えると、仕事を辞めてしまうと治療が継続できないというカップルも少なくないでしょう。さらに残念ながら、現在の日本では女性が一旦仕事を辞めてしまうと元のキャリアに戻ることがまだ難しい状況が多くあります。妊活される方の多い30歳代後半から40歳代前半というのは、妊活をしていなくても自分のキャリアの見直しや先行きを考える時期といえるでしょう。キャリアを考える際に、子どもができるかどうかによって大きな違いが生じる人も少なくないでしょうから、ご自身にとってのキャリアデザインを考えるのがとても難しい状況だろうと思います。
簡単な処方箋はありませんが、まずは自分に治療と仕事の両立が難しい(と思っている)理由について考えてみましょう。もしかすると、正しい情報を得ることで、仕事を続けながらできる治療法や治療施設が見つかるかもしれません。以前と比較すると、体外受精でも自己注射ができるようになったり、受診して注射をしなければならなかったことがパッチ薬や膣座薬、飲み薬などで代用できるようになり、通院の頻度は少なくなっていることが多いようです。イメージだけで「体外受精だから通院の負担が増えてしまう」と考えずに、ご自身の通われる施設(転院を考えるならその施設)でどのように仕事と治療の両立を考えてくれているかを確かめたうえで判断した方がよいでしょう。
厚生労働省のホームページには、「仕事と不妊治療の両立について」というページがあるのをご存じでしょうか?
このページには、職場に不妊治療について理解してもらうための情報資材や、ほかの人がどのように両立をしているか(できていないか)についての調査報告など、情報がたくさん掲載されています。ぜひ一度ご覧になってみてください。
いろいろ考えたうえでやはり仕事を辞めることが最善だとお考えなら、あなたがどのような道筋でそのように考えたか、単に「やめたい」というのでなく、あなたがどのように考えてその決断に至ったのか、その過程を含めて伝えることで、夫にもあなたが思いつきや一時的な疲れから仕事を辞めようと言っているのではなく、夫婦や家族の人生も考えたうえでの決断であることを夫に理解してもらいやすいのではないでしょうか。