不妊のこころ (7)ただ、彼女の話を聴く
妊娠を望む女性にとって、生理が来てしまうことは、妊娠できなかった事実を突きつけられる、期待から絶望の底に突き落とされる体験です。そんな時、隣をふと見回して、テレビを見ながら笑っている夫がいると、「この人には私のつらさなんて絶対にわからないんだわ」と余計に悲しくなります。「どうして彼は平気でいられるんだろう?」「一緒に悲しんでほしい。せめて、私の悲しみを理解して、そばにいてほしい」と思うでしょう。
確かに、妊娠がかなわなかったことは2人にとって大切な出来事ですが、反応は、個人でも男女でも異なります。一般的に女性の方が、不妊のつらさを感じやすいため、男性に対して同じように悲しみを感じろといわれても、最初から無理な相談なのかもしれません。
もっとも、彼は彼なりに悲しみを感じているけれど、それを表に出さないだけかもしれません。自分だけは平静を保っていないと妻を支えられないと考えて、何もなかったようにふるまう男性もいらっしゃいます。男性としては、どうして彼女がそれほど悲しむのか理解できない、ということもあるでしょう。でも、自分が感じているよりも、彼女はずっとつらくて悲しい気持ちなのだ、と想像する必要があります。そして、慰めや励ましや元気づけることよりも、アドバイスを与えるよりも、ただそばにいて、彼女の話をゆっくり聴いてあげてください。実は、それが一番してほしいことなのですから。
※本記事は、以前読売新聞に連載したコラム「不妊のこころ」を再編集したものです
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