女性活躍×女性の健康の創業のきっかけ後編(浄化)
私にとっての幸運は、その大学病院の医師との出会いだった。今の自分の体の状態が、不妊治療や妊娠出産にどのような影響を与えるのか、今後どのように体と付き合っていけばいいのか、とにかく丁寧に教えてくれた。
いつしか私は、通院に必ずメモ帳を持参するようになった。そのメモ帳は、毎回質問と回答でぎっしり埋まるようになった。
この主治医と出会った事で、病院というのは「自分の体について打ち合わせを行う場」だと気づいた。体について打ち合わせをすることは「未来を考える事」だという事に気づいた。
最初の一歩
一方、起業を決めた私。お金もない。人脈もない。知識もない。本当に何もなかった。女性の健康を広めるには、悔しいけれどもやはり産婦人科医の力を借りるしかなかいと気づいた。
診察の後、意を決して主治医にお願いした。「先生、5分だけください。プレゼンさせてください。」
診察室でPCを開いて、汗だくになりながらプレゼンをした。自分のしたい事、疑問に思っている事。とにかく、医療現場がどうなっているのか教えてほしい。面会の時間をください。
答えはあっさり、イエスだった。
ここから主治医にはたびたび色々な事を教えてもらい、それが会社設立までの大きな推進力になる。わけのわからない患者のお願いを、診察の域を超えて、なぜ主治医はOKしてくれたのだろう。変な患者な可能性だってあるし、それなりにリスクもあったのと思うのだが。未だに謎である。
浄化
そこから、色々な医師に話を聞きに行った。話を聞く前は「ピルを普及させない医師の怠慢」について、問い詰めたい衝動にいつも駆られていた。会ってみて、医師のイメージはいつも大きく覆された。
話を聞いた医師は、皆とても思いにあふれていた。真剣に、患者の事を考えていた。
色々なことも学んだ。
内膜症がきちんと研究されるようになったのは、ここ最近の事だという事。
治療用の低用量ピルの認可が2008年だったこと。(つまり、2009年に出産し、2015年に不妊治療を始めた私は、ピル普及期の穴にずっぽりはまっていた)
医師は信じられないような激務をこなしていて、余力がない事。
その中で、結局は「持ち場」なのではないかと感じた。女性の健康を普及させるのは産婦人科医の役目。それは正論としては正しい。ただ、色々な現実を勘案すると、それはすべての産婦人科医の「持ち場」ではないのだという事に気づいた。
今は、女性の健康を普及させることを持ち場としている人がいない。それが現実。
それであれば、私がその「持ち場」を担当すればいい。
そう思い始めたあたりから、自分の怒りが浄化され始めた。
確信
もう一つ、私には大きな問題があった。企業で働く女性向けに、企業研修の中で女性の健康を伝えたいという青写真はあったが、「どう伝えるか」が全く分からない。
私の体験談を伝えればみんな納得するのか?
そんなわけはない。
そこで私は、昔の同僚が研修会社に働いているらしいという風の噂を頼りに、同僚に連絡を取る。「研修会社で働かせてほしい。」
当時は、企業研修とは何か、全くイメージついていなかった。その会社がどんな研修をしている会社なのかも、全く見当がつかなかった。ただただ、何かの糸口をつかみたくて、それだけでお願いした。
そこで出会ったのが、キャリア研修である。
それまでの私は比較的「~するべきである」でものを考える人間だった。そしてそれを人にも強要する人間だった。今自分が事業を始めたら「女性は健康に気を付けるべきである」になって失敗してしまうのは目に見えていた。
しかし、キャリア研修の仕事を通じて、「人はだれしも、成長したいという気持ちを持っている」「その力を引きだせれば、人はその人なりのやり方で自走を始める」ことを知った。
これだ。人に何かを伝えようとしていえる自分に、今必要な考え方。
右も左もわからず研修会社に飛び込んだ、そんな自分の行動力に大きな拍手を送りたい。マナー研修の会社でなくて本当に良かった。自分の強運にも拍手をおくりたい。
MeをWeにかえてゆく
丁度この記事書くにあたり、大学の先輩(先方は覚えてないと思うが)の記事が、まさに膝を打つようだった。
「ニューヨークでは普通のことです。アメリカのアーティストは、みんな自分が見ている“me”の世界を、どう伝えたら世の中の人々に “we”として自分ごとにしてもらえるだろうって、いつも考えて動いていますよ」
一見社会問題に見えるけど、私のやりたい女性の健康は自分自身の体験からくる「Me」でしかなかった。それを「We」に変えていく。これこそが自分の「持ち場」だと思っている。
そのためには、私には、怒りの浄化と伝え方の習得、この2つが出来たことは大きな収穫だった。
怒りは、人には伝わらない。ただの原体験でしかない。
伝え方は、人を動かす。
怒りの先に、浄化のスタートがあった。
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