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無心〜オイゲン・ヘリゲル『弓と禅』(#17)

何か新しい事にチャレンジした時、明らかにうまくいきそうなことが、ちょっとした加減でうまくいかなかった時、皆さんもそんな経験があるかもしれません。

力みすぎたり、思いが強すぎたり、空回りしたり。

そしてそんなときは、『期待を手放す』という言葉が非常に大切になってきます。

自分が隠れた期待を抱いているかどうかは、失望や恨み、後悔、圧迫感、怒り、無力感を味わうかどうかでわかる。気持ちがなえたり、大胆さや冷静さをなくしたりすることがあるなら、それは隠れた期待を持っているといういう意味だ。

『あなたはあたなが使っている言葉でできている』ゲイリー・ジョン・ビショップ(ディスカヴァートゥエンティワン)

期待を手放すことによって、はじめて運命は動きだし、冷静で俯瞰した視点で物事を見つめ、行動することができる。

無意識の『期待』は、弓道、禅の思想とも共通しています。

「無心」の離れ
師は言われました。「あなたの一番の欠点は、まさにあなたがそのように立派な『意志』を持っていることです。あなたは、矢がちょうどよい時だと『感じ』、『考え』た時に、矢をすばやく射放そうと『意欲』され、意図的に右手を開いています。つまりそのことを意識しています。あなたは無心(absichtlos)であることを学ばねばなりません。射が自然に離れるまで、待たなければなりません」

『弓と禅』オイゲン・ヘリゲル(角川ソフィア文庫)

結果を手放す。

期待を手放す。

執着を手放す。

……最終的には、手放すという感覚自体が、その対象への意識をより強化させてしまうため、『手放すということ』それ自体を手放す。

思考や計画、不安や目標。すべて言葉を使って考え、本来、存在することのないものまで、自ら作り出し、因果を作り出し、苦悩を生みます。

すべては相互依存関係によって成り立ち、実体はなく、独立して生じることもなく、滅することもない。いわゆる『空』の概念にいきつきます。個人は、環境や様々な文脈のなかにしか存在せず、世界=個人となります。

私は、この『手放す』ことが、霧が晴れたように腑に落ちる時がある一方、少し時間が経つと(人に会ったりすると)、また、リセットされて元に戻っちゃいます。リセットされるというのは、また様々な物をコントロールしようと頑張っちゃうということです。むずかしいです。

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