キッズドア 高校生世代アンケート
長引くコロナ禍と急激な物価高騰が困窮家庭の生活に大きな打撃を与える中、キッズドアの支援活動や調査から、困窮家庭の高校生世代が、進路選択、塾や習い事、部活動、友人関係、アルバイトなど学習や生活全般において様々な困難を抱えていることが明らかとなってきました。
子どもの貧困問題を解決するためには、高校生世代が経済的不安を抱えることなく、学習をはじめ様々な活動に取り組んでいける環境を整えることが必要不可欠です。キッズドアでは、高校生世代の学習や生活の実態を把握し、必要な支援を届けていくために調査を実施しました。
アンケート調査概要
目的:高校生世代の学習や進路、生活全般の実態を把握し、必要な支援を検討・実施すること。
対象:キッズドアの学習会、ファミリーサポート、奨学金等の対象となっている高校生等
調査期間:2023年3月17日~2023年4月9日
回答数:351件
調査結果まとめ
回答者の属性
家計が苦しいと考えている高校生等は8割。
キッズドアからの支援を受けていた高校生等は、学習会が34%、奨学金が21%。
高校生等自身も経済的な苦しさを強く認識。経済的理由により進路変更を迫られた経験も。
高校生等自身が、自身の高校生活は家計にとって負担であると回答。さらに、高校生活や今後の進学にあたっても児童手当等の公的な給付が必要と認識している。約4割は、高校在学中に公的な奨学金や助成金、教育ローン等を利用。
現在中学校までの児童手当について、延長する必要がある、と回答した割合は96%にも上る。金額も増額が必要であるという回答が約8割。
高校卒業後の進路は8割以上が大学等へ進学。進路決定にあたって家計の影響を感じている高校生等は9割。受験校数や学部の変更、就職への変更など、進路変更をした経験がある高校生等は7割。そのうち、経済的な理由で変更せざるをえなかったのは約6割。
進学にあたっては給付型奨学金やアルバイトが必須
進学にあたって給付型奨学金を利用するのは約9割。また、「入学金等の納付前に奨学金を受け取れるようにしてほしい」という回答が9割。
アルバイト収入の使い道で、進学のための貯金や学習目的に充てている高校生等が2割程度存在。また、家にお金を入れている高校生も約2割。
高校生等はアルバイトを多数経験
約4割の高校生等がアルバイトを経験。週平均のアルバイト時間は10~20時間が最多(約4割)で、7%は夏休み以外でも20時間以上もアルバイトをしている。
アルバイトについて、社会勉強に良いという肯定的な回答も見られるが、学習時間が確保できない、アルバイトで疲れてしまって学校での勉強に影響がある、アルバイト先でのトラブルに疲弊したなどのネガティブな経験をしている高校生等も存在。「高校生が経済的な理由でアルバイトをしなくていい世の中になってほしい」という回答もあった。
コロナ禍の深刻な影響
体験活動が減ったという回答が最多。家計の悪化を認識している高校生等も半数存在。その影響は現在も続いていると感じている回答は約7割。
高校生等は、家計の苦しさやコロナ禍によって、学校生活や進路において希望が叶わなかった経験を有している。全205件にも上る自由記述の中には、ヤングケアラー状態になっていると見られる回答もあった。
キッズドアの奨学金や学習会が高校生等に肯定的な影響を与えていることも判明
キッズドアを含めNPO法人等の奨学金を利用している高校生等は、利用していない層と比べて大学進学する割合が高い。
キッズドアの無料学習会や奨学金を利用したことのある高校生等は、利用していない回答者と比較して、「大学院」・「大学」までの進学を希望する割合が高い。
コロナ禍による影響についても、キッズドアからの支援を受けている高校生等は、受けていない層と比べると、そのネガティブな状態から脱出することができている。
キッズドアの支援についてのメッセージは174件寄せられ、学習会によって学習意欲や学力が向上したという回答が多い。ボランティアによる学習支援は、高校生のコミュニケーション能力の向上にもつながっている。「どんな環境でも学習できる場が身近にあると知ることができた」、 「経済的な制約があっても、大学に行けることを知り、希望が持てた」、「1人ではないと思えて、心強い」という回答もあった。食料支援のみを受けている高校生等から、「キッズドアの学習会が近くになく残念だった」という回答もあった。
調査結果の詳細については、認定NPO法人キッズドアのウェブサイトよりご覧ください。
https://kidsdoor.net/wp-content/uploads/2023/08/note_1.pdf