2023 冬 困窮子育て家庭アンケート

キッズドアでは物価高騰の中で冬を迎えることを憂慮し、困窮子育て家庭に対して、子どもの心身の状態や家庭の経済状況等についてアンケートを行い、約1,800件の回答を得ました。
アンケートからは、これ以上家計を切り詰めることができない状況の中で、困窮対策や賃上げ施策の効果を実感できていない困窮子育て家庭の深刻な状況が判明しました。

アンケート調査概要

  • 目的:物価高騰が子どもや生活に与えている影響、不登校の状況、政策に対する個人の考えなどを広範に調査することで、困窮子育て家庭の実態 と支援ニーズを明らかにし、本当に必要とされる支援の実現につなげること。

  •  対象:キッズドア・ファミリーサポート登録世帯

  • 調査期間:2023年11月10日~2023年11月16日

  • 回答数:1,822件

調査結果まとめ

回答者の基本属性

  • 回答者の半数は40代で、30~50代が中心。

  • 世帯構成は「母子世帯」が9割。

  • 子どもの人数は「1人」(39%)及び「2人」(37%)が多数を占める。

  • 雇用形態は「パート、アルバイト」が約4割と最多。「契約社員(嘱託・臨時)」・「派遣社員」と合わせると半数超は非正規雇用。

  • 4割が「貯金はない」と回答。貯蓄額10万円までの家庭が半数超。

年齢
世帯構成
子どもの人数
現在の雇用形態
2023年11月時点の貯蓄額

物価高騰の影響

  • 昨年同時期と比べて、ほとんどの家庭で家計が苦しくなっている(「とても厳しくなった」(77%)、「やや厳しくなった」(22%))。

  • 43%の家庭が「借入がある」と回答。

  • 子どもの成長や生活にも深刻な影響。「学校以外の学びの機会を減らした」(55%)、「友達と遊びに行くのを減らした」 (44%)、「体験活動の機会を減らした」(36%)など。

  • 高校生世代では、「塾や予備校に行けない」(58%)、「参考書を購入できない」(39%)など学習に大きな影響。「経済的な理由で志望校を諦めた」(14%)との回答も。

昨年同時期と比べた家計の変化
借入金の状況
子どもの成長や生活への悪影響の具体的な内容(複数回答)
物価高騰による高校生世代の学校生活への影響(複数回答)

物価高騰の影響に関する困窮世帯の声(自由記述・一部抜粋)

  • お肉や野菜、調味料など色々な物が値上げしていて買えないものが多すぎます。子どもに食べさせるために自分の食べる分を減らしています。

  • 新しくできたクラスのお友達と休日に遊びに行くお誘いをもらっても、経済的な理由で断っていることを知ったときは、とてもショックでした。

  • 大学進学を諦めて就職希望になった。

  • そもそも四大への進学を考えさせないようにし、早く資格をとって、働けるよう短大か専門でお願いした。

不登校の現状

  • 約2割の家庭で子どもが不登校または不登校気味の状態にある。

  • 不登校の理由では、いじめ、学校・教師・友人との関係以外に、家庭の経済状況との回答も複数。

  • 不登校や不登校気味の子どもの日々の学習状況は「何もしていない」(52%)が最も多く、半数超。

  • 平日日中の過ごし方では、約8割が「家にいる」(83%)と回答。家以外の場所で過ごすとの回答はいずれも1割未満と低い水準。

子どもが不登校または不登校気味であるか
日々の学習状況(複数回答)
平日日中の過ごし方(複数回答)

子どもが学校に行かなくなった理由(自由記述・一部抜粋)

  • 出費を抑えている分、友達と遊びに出かけることも減り友人関係が良好 で無くなった様子。

  • 洋服が買えない。文房具の新しい物が買えない。朝起きられない。シン グル家計だと貧乏だと思われいじめられる。

  • 集金未納があり行くたびに教頭先生方に言われ、子供達の上靴外靴服を 買ってあげられず、学校用品のリコーダーや体操服習字道具も買ってあ げられず、恥をかいてしまうから。

子どもが学校に行かなくなったことによる困りごとや不安(自由記述・一部抜粋)

  • 勉強があまりできていない、内申点がつかないため、進路が限られてしまう。対人関係があまりできていない。本人も自信がなく将来が不安。母子家庭だとお金も時間もかけられないので申し訳ない。

  • 一人残して仕事にいかなければならない。

  • フリースクールが高すぎるので、無料や安価なフリースクールがあれば、子どもも通うことができます。

  • 子供の居場所がもっとあったら良いと思います。公民館のような勉強ができる自習室のようなスペースが近くにあればいいなと思います。

保護者の就労と収入

  • 2022年と比べて2023年の年収が「増える」との回答は1割程度。これに対し、「変わらない」は57%、「減る」は34%。

  • 雇用形態別に見ると「増える」は、「正社員(正職員)」で14%、「パート、アルバイト」等の非正規雇用で7%である一方、「減る」は「正社員(正職員)」で28%、非正規雇用で36%。正規雇用に比べ非正規雇用 の保護者の方が、賃金上昇の流れに乗りにくく経済的に困窮している状況。

  • 収入を増やす上での課題では、「子育て・介護等のため、これ以上働けないから」(48%)、「より高い報酬の仕事に求められる経験・資格等がないから」(47%)を挙げる回答者が多い。

2022年と比較した2023年の年収の変化
【雇用形態別】2022年と比較した2023年の年収の変化
収入を増やす上での課題(複数回答)

収入を増やすためにほしい支援(自由記述・一部抜粋)

  • 正社員で時短勤務ができる仕事が増えてほしいです。どうしてもまだ長い時間は働けないので、正社員になることができません。そのため収入を増やすことができないでいます。

  • 無料で資格取得できる支援。学びの期間に生活費の援助があれば嬉しいです。

  • 家賃支援。欲しいと思っている資格は、日中通学が 2〜3 年必須。パートを辞めなければ通学も勉強も出来ない。しかしパートを辞めて無収入になると住む場所が無くなり通学が出来ない。よって欲しいと思っている資格を学ぶ事は今後も出来ない。

  • 児童扶養手当の所得制限の金額をあげてほしいです。物価や最低賃金があがっているのに所得制限の金額は変化がないのでしんどいです。

  • 収入を上げたいと思いつつ、収入が上がると児童扶養手当が減ってしまい、結果的に『無理して働かずに手当を貰えば良かった』と思ってしまいます。

政府の取組への感想

  • 9割超が賃上げ政策の効果を実感できていないと回答。

  • こども家庭庁の施策を「知っている」のは約2割。こども家庭庁ができたことで子育てがしやすくなると思うかという質問には、否定的な回答が約6割を占めた(「そう思わない」(22%)と「全くそう思わない」(39%)の合計)。

賃上げ政策の効果
こども家庭庁の施策の認知度
こども家庭庁発足により子育てがしやすくなると思うか

困窮家庭が抱える課題や求める支援

食料や日用品、光熱費等に加え、今やライフラインとも言えるPCやスマホ、インターネット等のデジタル環境についても経済的な理由から不十分な状況にあるとの声が寄せられた。また、18歳以上への支援を求める声も多く、高校を卒業しても多くはまだ学生であるにも関わらず、18歳で支援が終わってしまうことが家計に大きな打撃となることがうかがえた。寄せられた自由回答の一部は以下のとおり。

  • パソコンが欲しいと言われるがお金がなく、購入してあげることができない。支援や給付金があればいい。

  • 就学援助にWi-Fi設置費用、通信費用を加えて欲しいです。今までインターネットを使用していなかった。母親のスマホの契約ギガだけで生活できていた。学校の授業でiPadを使用するようになりWi-Fiの契約をし毎月通信費用がかかっている。

  • 今の日本には先が見えないです。もっともっと子供達が大人になった時に、やりたい事を自由に学べる環境を無償にして欲しいです。進学したくても出来ないとか悲しすぎます。

  • 高校生大学生への支援。正直1番お金がかかるのに政府の支援がない世代。ほんとに厳しい。

  • 長男は大学生、来年から次男も専門学校生です。行政の支援は手当が終わりますが学生に変わりはなく、大学生、専門学校生まで手当が欲しいです。

※調査結果の詳細については、認定NPO法人キッズドアのウェブサイトよりご覧ください。
https://kidsdoor.net/wp-content/uploads/2023/12/note_2023_A.pdf


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