もっとがんばれ、JR和歌山線・桜井線1「近鉄王国 vs やる気のないJR」
突然ですが、JR和歌山線・桜井線って知っていますか?桜井線は「万葉まほろば線」という謎のキラキラサブネームがつけられている路線です。
知っている人は、ああ・・・あの・・・、という反応があるローカル路線です。
和歌山線は、奈良の王寺から高田、五条、橋本を通り、和歌山へとつながる路線、桜井線は高田で分岐して、桜井・天理を経由して奈良までぐるっと回っている路線です。
線路は単線、1時間に一本程度。電車は2両編成がメイン。電化はされています。最近、何十年ぶりに新型車両に変わりましたが、電車の本数は相変わらずさっぱりなのです。
和歌山駅から、和歌山線で一本で行ける奈良県内のJRの駅までルート検索をすると「一度、天王寺に回って、近鉄に乗って、途中から歩いて乗り換え」などの面倒なルートが「最も早い」と表示されるありさまです。
和歌山線は王寺~和歌山間の長距離輸送としては機能していないのが実態です。高田から先、和歌山方面は、路線維持自体も困難との声も聞こえてきています。
桜井線も1時間に1~2本程度。やる気がない路線です。
だが、そんなローカル線ですが、通勤需要が高まっている区間があります。
それが和歌山線・桜井線(万葉まほろば線)の王寺~高田~桜井間なのです。路線図では、ピンク(T)と朱色(U)です。
通勤需要の取り込みが超下手くそなJR和歌山線・JR桜井線
「ローカル線なのは、そもそも沿線に人が居ないから・・・」というのが定説ですが、実はこのエリアは大阪の一大ベットタウン。大阪エリアに通勤する人がたくさん住んでおり、現に、多くの人が電車を利用して通勤しています。
しかも、JR和歌山線の終着駅の王寺駅は奈良県で利用者数ナンバーワン。県庁所在地の近鉄奈良駅・JR奈良駅を差し置いて、一日6万人程度が利用する駅なのです。
ちなみに、奈良県の利用者数のランキングでは、
1位 JR西・近鉄 王寺駅 約6万人 ★
2位 近鉄 奈良駅 約5万人 ★
3位 近鉄 生駒駅 約4.5万人
4位 近鉄 学園前駅 約4.4万人
5位 近鉄 大和西大寺駅 約4.2万人
6位 近鉄 大和八木駅 約3.7万人 ★
7位 近鉄 高の原駅 約3.0万人
8位 近鉄 五位堂駅 約2.8万人 ★
9位 JR西 奈良駅 約2.6万人
10位 近鉄 新大宮駅 約2.5万人
:
12位 近鉄 桜井駅 約2.1万人 ★
:
16位 近鉄 大和高田駅 約1.6万人 ★
このランキングからも沿線人口が少ないのでローカル線になっている・・・のではなさそうです。なお、★がついている駅は、この駅から和歌山線や桜井線(万葉まほろば線)に乗り換えができたり、すぐ近くにそれらの路線の駅がある駅です。
でも、なぜか、和歌山線や桜井線があまり利用されていないのです。
近鉄王国 vs やる気のないJR
このエリアには、鉄道の大動脈と言える近鉄大阪線が走っています。本数も多く、特急・快速急行・急行・準急・区間準急・普通と様々な種別が、数分おきに走っています。五位堂駅や大和高田駅、大和八木駅は一日数万人が利用する大ターミナルとなっています。
同じようなところに路線があるのに、片や大動脈、片やローカル線という状況となっている原因は何なのでしょうか。
原因1:本数が少なすぎる&単線
和歌山線の高田から王寺の区間はそれでも頑張っているものの、はやり本数の少なさが否めない状況です。朝、JR難波方面へ直通する快速が4本だけです。これでも2024年に1本減便されています。ラッシュ時間の7時台でも1時間に3本だけとなっています。通勤で利用するには正直、心もとない本数です。なお、快速は6両編成なので容量としては確保されてはいます。
単線なので、本数を増やしにくいという事情もあるかとは思いますが、王寺~高田間は畠田駅以外では各駅で列車の交換ができるので、頑張れば増やすことも可能です。もう少し本気を出して欲しいですね。
一時期は本気だったJR
実は1996年頃から2011年の間は、JR難波~高田間は、日中帯に1時間に3本の快速が運転されていました。快速運転によって、利用者が少しづつ定着しつつあった最中、日中の快速運転が減便され、そして突如終了してしまいました。そして、2024年現在、王寺~高田間ですら昼間は1時間に1本という超貧弱ローカル線ダイヤとなってしまいました。利用者が定着するには数十年単位の時間がかかるのですが、それまで待てなかったんでしょうかね・・・。そもそも利用者が少ない日中帯を狙ったのも良くなかったのでしょうか。残念です。
なお、以下は、王寺駅の大阪方面の時刻表です。平日7時台は1時間に18本と言う、かなり頑張ったダイヤが組まれています。これでも以前よりも本数が減っています。
原因2:JRのスタンスが信用できない
前述のように、日中、1時間に3本のJR難波直通の快速運転が定着しつつある中、突如やめてしまうなど、JRの和歌山線に対する方針がコロコロ変わっています。そして現在では1時間に1本と言うローカルダイヤとなってしまいました。
一方、近鉄は、ダイヤ改正は定期的に行われていますが、どちらかと言えば、大阪近郊の奈良エリアでは輸送力の増強や効率的な運用程度の整理となっており、利便性に影響するような極端な減便もされないため、安心して利用することができます。最近では、五位堂~上本町間で急行を増発するなど、このエリアでの輸送力をアップさせています。
その路線に対する本気度
路線の沿線に住む=未来に渡って安心して利用できる
ということがあってこそなのです。しかも「家を買って住む」となると、あその路線と心中してしまうものです。いつ不便になるかもしれないような信用できない路線の沿線に住むリスクは正直とらないです、かね。
原因3:雨や風や亀に貧弱
和歌山線が避けられる理由は、運休や延着が頻発していることです。しかも、数時間単位という遅延も頻発しています。逆に、何も無く正常に運行している日の方が珍しいという状況なのです。
大雨の予防処置による運転見合わせは日常茶飯事。特に高田から先、和歌山方面で荒天による運転見合わせは比較的多い状況です。
王寺~高田間は平野部で山などは無く、大雨などの自然災害には比較的強い区間なのですが、そんな区間でも「車が立ち往生」「架線にビニル」「亀がポイントに挟まる」「人身事故」による運休が起きています。
しかも、和歌山線が無事だったとしても安心できません。
和歌山線のターミナル「王寺駅」から大阪方面へとつながっている「大和路線」。王寺駅から西側の府県境付近は、大和川の渓谷を縫って走っていくコースで地滑りも多発するなど地盤も弱く、雨に対しては超脆弱な区間なのです。大雨の日はダイヤ乱れと隣り合わせです。更に大和路線は大阪環状線に乗り入れています。大阪環状線は阪和線も乗り入れています。とても便利な反面、大阪環状線や阪和線でダイヤ乱れが起きるとそのまま大和路線もダイヤが乱れてしまうという爆弾を抱えています。
そんな、まともに運行している日の方が少ない路線をメイン通勤ルートで利用するにはかなりの勇気が要ります。遅れてはいけない大切な予定の時は、遠くても「"鉄壁"の近鉄」を利用する人がたくさんいます。
安全第一は欠かせないとは思いますが・・・多少で雨で運休しないような設備になれば・・・ですね。
折角なので具体的に見てみましょう
ではどれだけ和歌山線がグダグダなのか見てみましょう。
これは2024年6月の和歌山線の延着証明です。
王寺~高田間ですが、平野部で自然災害には強い区間ですが、この2024/6/6~8の3日間は運休や長時間の遅延がありました。
6/6は踏切に車が立ち往生、6/7は架線にビニル付着、6/8は「亀がポイントに挟って」運休となったようです。
亀がポイントに挟まった・・・。
折角なので、この付近の葛下川に住む亀吉さんにインタビューしてみましょう。
亀吉さん「あー、冒険好きな友達も多いので・・・。スタンド・バイ・ミー、ですかね?」
折角なのでもう少し遡ってみましょう。
2024年4~5月までさかのぼってみてみましょう。相変わらず、まともに運行している日が珍しい状況です。
まあ、とにかく・・・連日何か起きています。
とにかく「30分前行動」と、「出発前の運行情報の確認」は必須と思われます。また近鉄の時刻表も調べておけば安心です。
原因4:帰りの便がやや心もとない
朝、スムーズに大阪方面へ通勤できたとしても、夜の帰りの便が悪いと良くないですよね。その点、大阪方面から和歌山線に直通する快速が夕方~夜に運行されています。これはかなり和歌山線利用者には好評です。
ただし、この和歌山線への直通快速、実はかなり削減されています。過去では1時間に3本程度の直通快速が運転されていたのです。それが徐々に減便され、いまでは以下のようなダイヤとなってしまっています。
2024/6時点の天王寺駅(大和路線・平日)の時刻表
近鉄と比べると、夕ラッシュ時間でも電車の本数はどうしても少ないのは否めません。近鉄と比べると終電も30分程度早いです。
まあ、これでも頑張っている方かとは思いますが・・・、もうちょっと頑張って!
でも和歌山線には追い風が吹いている
JRは利用者を追っ払いたいの?
運行本数を1時間に1本まで減らしたり、設備投資を渋って安易に運休させるなど、JR和歌山線や桜井線では、JR自身が利用者を積極的に追っ払っているとしか思えない状況が近年特に続いています。JR和歌山線・桜井線への逆風を、JR自身が吹かせているかのようです。
そんな中追い風が!!
JRが積極的に和歌山線に逆風を吹かせている中、和歌山線の沿線では住宅開発が急激に進んでいます。そして桜井線(万葉まほろば線)のJR金橋駅前には関西最大級のイオンモール橿原があり、大規模拡張がされる予定もあります。実際に金橋駅に行ってみると、1時間に1本しか来ない駅の狭いホームにたくさんの人が待っている時間帯もありました。
また、JR香芝駅などでは、行政が力を入れてリニューアルをすすめています。
そんなこんなで次回につづく
次回は・・・そんな和歌山線、どうやったら利用者が増えるのかアイディアを考えてみましょう。
JRがやる気ないのなら、ちゃっちゃと近鉄や行政に譲渡してLRT化してしまえ・・・など、かなりチャレンジングなアイディアも含めて、次回、様々な方向から、"イケてる" 和歌山線にする方法を模索していきたいと思います。
この記事の続編(その2)もよろしければご覧ください。
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。