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はじまりは…

<出会い>
テレビから聞こえてくる歌が耳に残った。
CM曲だった。

「僕は上手に君を愛しているかい愛せてるかい」


小学生ながらも子ども心に印象に残ったその曲は、CMで出会う度にきゅんとした。

そしてまたある日、その曲を誰かが歌う姿を見た。
やはりCMだった。
この前とは違う、その曲自体のCMのようだ。
「あすか はじまりはいつも雨」というナレーション。
そうか、この歌を歌う人は「ASKA(あすか)」という人なのか。
それはもう、一目惚れみたいなものだった。

それまでは、母が好きで聴いていたマイケルジャクソンやユーミン、安全地帯、山下達郎なんかを聴いたりしていた。しかしその時、初めて「この曲をちゃんと手に入れて聴きたい」と思い、CDショップへ向かい、初めて自分のお小遣いでカセットテープを購入した。当時、家にはなぜかCDが壊れて聴けないデッキしかなかったから選んだのはCDではなく、カセットテープだった。与えられたものを、ではなく自分で初めて選び、手に入れた音楽。それがこの曲だ。

それから歌詞カードを眺めて何度も繰り返し聴く日々だった。
うっとりと聴き入り、そして曲に合わせて繰り返し歌った。

これがASKAとの出会いだと思っていたら、
実は先に出会いを果たしていた(もちろんテレビの向こう側だが)。

学校から帰ってきてテレビをつけると放送されている「タイムスリー」というワイドショーの最後に流れていた「太陽と埃の中で」を歌うCHAGE&ASKAを何度も見ていて、それも気に入って聴いていたのだ。
ただ、誰が歌っているのかも知らなかったし、「はじまりはいつも雨」を歌うASKAが、「太陽と埃の中で」を歌うCHAGE&ASKAのASKAであることも、もちろんわかっていなかった。

それが自分の中でカチリと繋がったのは後の「SAY YES」の大ブレイクの時であった。そしてその後の人生をずっと共にする音楽にこの時出会えたのだ。

<何がそんなに心を掴むのか

それにしてもだ、こんなバラード曲に
小学生の心がぎゅっと掴まれたのは何だったのだろうと思う。

同い年でチャゲアスが好きだったという堂本剛さんも
やはり「はじまりはいつも雨」が初めて買ったCDというのは
あちこちで語られるエピソードである。「どうしても買いたいCDがある」と
自転車を走らせて買いに行ったという。まさか小学生の男子があのバラードをいいと思って購入するなんて、と思ってしまう。「歌詞に打ちひしがれて」と剛さんは言っていた。
星野源さんも子どもの頃にこの曲と出会い、「言葉にできない素晴らしさ」の虜になったと言う。
子供時代ではないが、音楽仲間であるKANさんもそれまで洋楽しか聴かなかった自分にとって、この曲との出会いは衝撃的だったと語る。
他にもカバーしたミュージシャンも数多くいる。
音楽を生業とする多くの人に影響を与えた曲とも言えるだろう。

メロディは美しく、歌詞は温かくも切なさを孕んでいる。
歌詞参照 https://j-lyric.net/artist/a001d20/l0060f8.html

「僕は上手に君を愛してるかい愛せてるかい」
「君は本当に僕を愛してるかい愛せてるかい」

サビ前のこの箇所がどうしたって強く心に耳に残る。CMで流れたあのBメロの部分。この歌の「僕」はとても幸せな恋をしている真っ最中なのにどこか不安である。
「君を愛するたびに愛じゃ足りない気がしてた」
というのも自分の中の君への想いが大きすぎてその想いが表せてないんじゃないのかと物足りなさというかちょっとした焦燥感のようなものを抱いているような印象があり
「わけもなく君が消えそうな気持になる
失くした恋たちの足跡(あと)をつけて」
というのは君が過去の恋に引き戻されてしまうんじゃないか、心変わりするんじゃないかと勝手に「僕」が不安になったりもしている。

このように、幸せな筈なのに不安が顔を出すみたいな歌詞は「天気予報の恋人」にも共通するなと感じる。ASKAの恋愛の曲はめいっぱいの幸せ感よりもこの「不安感」が味なのではないだろうか。

「今夜君のこと~」のサビは幸せ感でいっぱいなのに、このサビ前のちょっと不安を感じる切ないメロディと歌詞にやはりこの曲のグッと掴まれる要素が凝縮されてるのではないかと私は思う。
というか、自分がこの部分がいちばん好きだからだろうけど…

<SAY YESの大ヒットの呼び水>

CMのために作られた曲だった「はじまりはいつも雨」
始めはシングルリリースするつもりはなかったが、CMがオンエアされた途端、問い合わせが殺到し、急遽シングルリリースになり、発売の3月から8月までオリコントップ10入り結果的にデビューして初のASKA自身のミリオンセラーに繋がった。「PRIDE」のリリース以来ぐんぐんとチャゲアスの人気が高まり、注目されている時期だった。
そして4か月後には社会現象にもなった「SAY YES」の大ヒットである。
ASKAがソロアーティストとして認知されるとともに「SAY YES」の大ヒットの呼び水となったとも言われるこの曲は一時代のヒット曲というだけでなく
「雨と言えば…」「梅雨時に聴きたい曲」のように人の心に刻まれ、雨のスタンダード曲としてすっかり定着している。


#ASKA #はじまりはいつも雨を語ろう #30周年



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