序幕 その2 納税義務者(課税対象者)と納付義務者
(1)税法の建付け(課税物件と納税義務者)
「税を課す」とは憲法30条「納税の義務」に基づいており、その強制性から「税法に依る」運用が必定である。
そのため、税法の建付けは必ず、下記2点を規定する。
課税物件(何に税を課すのか)
納税義務者(課した税=債務を誰が負うのか、つまり、負債者は誰か)
税を納める(納付する)者が誰かという点について、ほとんどの税は、負債者の「納税義務者」自身である。しかし、納税義務者と異なる者が税を納める場合は、別途「納付義務者」の規定が必要になる。
(2)国税の「納税義務者」の2つの義務
序幕その1で述べた通り「納税義務者=負債者」であるが、国税にはこの「納税義務者」の規定しかない。
「納付義務者」の規定は、地方税の一部(入湯税など)にのみ存在する。
では国税の「納税義務者」には「納付義務」が無いのかと言えば、そんな筈はなく「納付」しなければ「税」という「負債」は消えない。
ということは、国税では「納税義務者」の規定のみで「納税義務」と「納付義務」の2つの義務を課していることは明らかである。
(3)納税義務者=課税対象者
「納税義務者」という文言は、しばしば「税を納める義務がある者」と読み解かれ、それ故に「納付義務者」の意味に解されやすい。
だが、「納税」と「納付」の意味は、明確に異なる。
納税:税という債務を負う=負債
納付:弁済(返済)=債務の履行=債権の消失
「納税義務」を負うからこそ「納付義務」が発生するのである。
「納税義務者」の役割を「納付義務者」と間違えないよう「負債者」と定義しても良いが、より分かりやすく「課税対象者」と定義しよう。
この定義は、後述する「国との課税関係の成立」を、とても理解し易いものにしてくれるであろうから。