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【NYレポート】狂乱物価と庶民の味方あれこれ

皆さん、こんにちは! 在米25年目、ニューヨークはハーレム在住の指揮者、伊藤玲阿奈(れおな)です。

今回は、私が苦しんでいる物価高のお話を。

報道されている通り、現在NYは歴史的なインフレに見舞われています。先月、帰国してあらためて食べ物の安さに驚いたのですが、食費に関しては間違いなくNYは日本の2倍どころか3倍から4倍高いです。

たとえば、定食屋チェーンとして有名な大戸屋。NYに進出して、マンハッタン内に何軒か店舗を構えています。

3月、母親が私を訪ねて来た折に、その大戸屋にランチを2人で食べに行ったのですが、「親子丼セット(母)・とんかつ定食セット(私)・デザートにアイスを1人前」オーダーしたところ、税金とチップも含めて合計64ドルとなり仰天しました。今のレートで約8500円ですから!

日本で大戸屋といえば高くても千円代の定食屋だというイメージでしょうから、3~4倍高いというのは誇張でも何でもないことがご理解頂けると思います(ご参考までに、下は大戸屋のランチメニューです)。

NYの大戸屋、ランチメニューより。
日本と違い、すこし高級志向な感じですね。
とんかつは中でも一番安い方で、それでも基本は21ドル(約2800円)。これにオプションとして有料!の小鉢を付けていく。有料というのに気付かず、私は小鉢もオーダーしていましました。
しかも、これに税金(8.875%)とチップ(15~25%)が加わります。

私が住んでいる地区は、独特な文化をもつハーレムの中でも治安がチョコット悪く(笑)、並んでいるお店も庶民派なものばかりで、物価は比較的おさえられています。

2021年の中ごろまでは、ピザ1枚(一切れ)を1ドル(当時のレートで110円ほど)で売ってくれる店が数件あって、私もよく利用していました。下の写真、看板に「99セントのピザ」(注:100セント=1ドル)と大書してあるのが分かると思います。

1ドル(99セント)ピザ店。2021年1月に撮影
以前は楽しめた、ピザが2切れ(2ドル)と缶ジュース(1ドル)合計3ドルの食事。当時のレートで330円ほど。栄養はアレですが、この値段なら日本人の感覚からいっても悪くないですよね。

しかしながら、現在では1ドルでピザを提供してくれるお店はなくなってしまいました。写真のお店は今でも頑張って安く提供してくれているものの、1ドル50セント(約210円)になっており、上の写真のコンビネーション、ピザ2切れと缶ジュースなら4ドル50セント(約620円)となってしまいました。

とはいえ、マンハッタンの中では最安値であると思います。他の地域なら、4ドル50セントでピザ1切れも買えないところが多いですから。

現在のお店の看板。「99セント」の部分が消されてしまった。

いずれにせよ、ハーレムでも食費は日本の2倍以上かかることには違いなく、一人暮らしでエンゲル係数の高い私は、なるべく外食を避け、家で簡単に作るか、チップが要らないテイクアウトで済ますように心がけているというわけです。

さて、そんな狂乱物価に苦しむ私たち庶民にとって、他よりも低価格を維持してくれるお店はありがたいかぎりなのですが、最近おもしろいことに気付きました。

それは、そのお店の経営者の出身民族によって、低価格を維持する方法が違うということです。

(以下、あくまで私のよく利用するお店に限っての話なので、これで民族全体の傾向をステレオタイプにするつもりはないことは先にお断りしておきます)

まず、インド系のお店

数学、つまり計算を得意とする彼らのやり方は、日本企業と似ていると思います。すなわち、価格を変えずに内容量を減らすというやり方です。

写真は、インド系のお店で買った、チキンナゲット7個とフライドポテト。以前は箱の中にフライドポテトが山盛りに入っていたのですが、今では寂しい感じですね。これでお値段は、缶ジュースが付いて6ドル(約840円)。

昔はポテト山盛りだったんだけどなぁ。
チキン2切れとポテト数本食べたら、もうこんな感じ。物足りない・・・

アメリカでは食べきれないほどお皿に盛られているのを喜ぶ傾向がありますから、長い目でみると、このやり方では売り上げが落ちてしまうんじゃないかと思います。私もちょっと物足らず、最近はこの店から遠のいています。

お次は、アメリカと同じく、お客が食べきれないほど出すのが伝統的に礼儀とされてきた中華系のお店

行きつけの中華の場合、安く食べられるランチは50セントから1ドル値上がりしましたが、それでも缶ジュースが付いて8ドル50セント(約1150円)と、かなり安い方。写真は、私の好物「ビーフ・ブロッコリー、焼き飯のせ」。豚肉の細切れが少し入った焼き飯のうえに牛肉とブロッコリーの炒め物をのっけたもの。

我が好物「ビーフ・ブロッコリー、焼き飯のせ」

これを見ると、「おお、これは凄いじゃん!」と皆さんは思われるかもしれませんね。たしかに、以前と変わらず山盛り、ボリューム満点です。

けれども、よ~~~く見てください。

これ、(アメリカでは安く手に入る)ブロッコリーが多いので分かりにくいですが、牛肉があまり入ってないんです。さらにブロッコリーの下には、焼き飯がかなり分厚く入っているんです。

食べかけなのでお見苦しいですが、この写真だとよく分かると思います。

ブロッコリー層が下まで続いているわけではなく、すぐ下は焼き飯。そして牛肉は・・・

つまり、このお店では、いちばんコストのかかる牛肉をかなり減らしたうえで、アメリカでは安いブロッコリーを派手にのせ、いちばんコストのかからない米で量をかせぐことで低価格を維持しているというわけ。それでも私にはありがたく、ほぼ毎日食べていますが。

古来のもてなしの伝統と、やはり計算が得意な民族性の合わせ技、といったところでしょうか!?

最後に、アラブ系のお店

我が行きつけのこの店では、フライドポテトと缶ジュースが付いたチーズバーガーが7ドル(約950円)で手に入ります。マクドナルドでさえ10ドル(約1360円)を軽く超えてしまう今のNYでは、かなり破格です。

かといってパテ(お肉)や野菜、またはポテトの量を減らしているのかといえば、決してそうではなく、こんな感じ。

食べ応えのある太いフライドポテトが山盛りなのが嬉しい!
ハンバーガー自体は豪華とはいえませんが、マックもこんなものですからね。

内容は量と質ともに以前とまったく変わりません。そして、お店に貼ってあるメニューには「6ドル50セント」と、前と変わらぬ値段が書かれてあります。

しかーーーーし!!!

いざ商品を受け取ってレジに行くと、「7ドル」と言われるんです(笑)

しかーーーーも!!!

レジの店員によって「8ドル」と言われたり、「6ドル50セント」と言われたりする! 「7ドル」と書いたのは、最近いちばん言われる可能性の高い値段だから(笑) 

たとえ文句いっても、アラブ系って自分の言ったことをまず曲げないので、大抵そのまま払うことになります。まあ、8ドルでも安いですしね。(ちなみに今日なんか、ハンバーガーが焼きあがってから「あ、今日ポテトがないわ」なんて言い出しました・・・)

まさか、店員同士で示し合わせて払わせる値段を変えることで物価高対策しているのか!? なかなかに謎ですが、「今日はいくらと言われるんだろう?」というギャンブル感もあってやめられません(笑)

というわけで、狂乱物価のNYで庶民の味方になってくれる食べ物屋のお話でした。いかがだったでしょうか?

今日の結論。日本食なんて帰国時の楽しみにだけなってしまった私に投げ銭のサポートを(笑)

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執筆者プロフィール:伊藤玲阿奈 Reona Ito
指揮者・文筆家。ジョージ・ワシントン大学国際関係学部を卒業後、指揮者になることを決意。ジュリアード音楽院・マネス音楽院の夜間課程にて学び、アーロン・コープランド音楽院(オーケストラ指揮科)修士課程卒業。ニューヨークを拠点に、カーネギーホールや国連協会後援による国際平和コンサートなど各地で活動。2014年「アメリカ賞」(プロオーケストラ指揮部門)受賞。武蔵野学院大学大学院客員准教授。2020年11月、光文社新書より初の著作『「宇宙の音楽」を聴く』を上梓。

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伊藤レオナ(在NY指揮者)
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