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【イベントレポート】May,2024@サイエンスホール

千代田区。靖国通りを九段下方面に向けてペダルを漕ぐ。時刻は17時前。自宅からここまで40分弱。(近頃では珍しいことだが)気温も湿度もちょうど良く、快適な日だった。俺は武道館の手前で車線変更、田安門を抜け、北の丸パークの車道を進む。
Google mapでの予習通り、白いビルが左手に見えた。駐輪場があることは知っていた。自転車を止め、自動ドアを跨ぐ。縁は踏まないように気を付ける。ブートキャンプめいた黒人警備員と目があったので、軽い笑顔で会釈する。

階段を数階分下り、ドアマンに電子チケット、IDカードを見せた。IDを財布にしまう際、顔写真の自分と目が合う。今朝、鏡で見た顔だった。または、まるで違う顔だったかもしれない。

エントランスに入場し、会場の案内図を見る。バーカウンターは存在しないらしい。俺はがっかりした。続けてステージと客席を確認。キャパは200?300程度だろうか?習慣により自動でフェルミ推定が走るが、意識の外に捨て置く。自分に割り振られたナンバーと座席を見比べる。かなり前の方だ。俺はもう一度バーカウンターがないか確認した後、案内図から離れ客席に向かった。ギリギリで入ったので、すでに着席している他のヘッズをかき分けて進む。席に到着。座る。背もたれ、アームレスト…なかなか悪くない椅子だった。忘れないうちに携帯をシャットダウン。

俺は今回のイベントについて、懐疑的な姿勢をとっていた。イベント自体についても、自分が参加することについても。
昨年末に放映されたあの最終回、そして衝撃の2期発表から約半年。今日は作品のボイスアクター7名が登壇し、一期の振り返りを行うらしい。せっかく誘ってもらったので(DVDにこのイベントに参加するための応募券がついてきたのだ)、ご招待にあずかった。しかし控えめに言って、俺はアクターへの興味は薄めな方だった。作品の話をするなら、監督やプロデューサーを呼ぶべきではないのか?

手持ち無沙汰から、空のドリンクホルダーをなぞる。入場時にビールが買えなかったことへの不満。俺は真剣にスキットルの導入を検討する。衛生面が懸念だった。それとも、分解できるなど…何かしら企業努力が行われているのだろうか?ありえると思う。そんなことを考えていると、ステージが暗転。始まるらしい。

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アトモスフィアから、イベントが終盤に差し掛かってきた様に感じる。ここまで2H強、シャバい内容では無かった。気合の入ったコンテンツを用意したものだ。俺は自分の中の、満足感の高まりを感じた。

転換中のステージ上では、照明が暗転。マイクスタンドがクラフトワークめいて一列に設置されているようだった。準備が整ったらしく、スタッフがハケる。

スクリーンに映像が走る。これは、アニメ一期の映像だ。彼女達の印象的なシーンが次々にカットアップされ、スクリーンに投影。ボイスアクターが再登壇し、演技を行う。映像にリアルタイムで声が乗り、グルーヴを作っていく。
もちろん所々リップシンクはズレるが、些細なことだ。作品の音が、脳内の記憶にメモリーされた声が、会場に響く。初めてソニックマニアでKORNを見た衝撃。フィクションではなかった。実在したのだ。グルーヴ感。かなり調子がいい。俺はそう感じた。

カットアップは続き、アニメ一期、12話のエンディングへ。主人公が施設の屋上で待っている彼女達の元へ走る。走る途中で、何人かの女の子とすれ違う。2期の追加彼女達の顔見せだ。俺は何度もこのシーンを見返した。このために買った、録画装置で。nikonikoで。アニメライズされた彼女達は、とても新鮮だった。

記憶と寸分違わず、最初にすれ違う彼女のシーン。コンビニから出てくる彼女。カワイイお顔にピントが合う…そこで映像にノイズ…ワッザ!?激しいフラッシュの後、新ビジュアルが表示!そしてボイスアクターの発表!!会場からは歓声!突然の新情報に、フリークアウトしたアニメボーイが、前の客席を殴りつける!席を揺らされたタフガイは振り返らず、後方に裏拳!目線は変わらずステージ上…、視聴を継続!!顎を砕かれたアニメボーイは糸が切れた人形のように体の力を無くし客席に沈む!

映像は続く!!続けて発表される、第二、第三の彼女のInformation…!オゴーッ!!情報量の多さに、いくつかの客席で鼻血と嘔吐!

映像は続きラストカット!彼女たちのもとに駆けつける主人公…彼女たちが、主人公の名前を呼びかける!順番に!アニメ12話分、彼女たちとの思い出が脳内にフラッシュバック!大団円!!本編はここで終了、だが…

映像継続!ULTRAめいた激しいフラッシュの後、二期のキービジュアル、放送時期がスクリーンに映し出された!!
その瞬間、会場のBGMはフェードアウト(手練れのDJが、フラッグシップDJミキサーの縦フェーダーを下げる。理想的なボリュームカーブ)。

COME AGAIN!!!Zack de la Rochaのシャウトが脳内に響く!続けて暴走機関車めいたリフとスネアの連打!グルーヴ!暴動めいたモッシュ!完全に沸点を迎えた会場。内に感じたエネルギーを、発散せねばならない。爆散する前に。

COME AGAIN!!Zackが叫ぶ!!叫ぶ!!!

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そこから先は、よく覚えていない。

気づくと路上。頬に感じるアスファルトの冷たさ。体を起こし、怪我がないか触って確かめる。破れたTシャツ。切れた唇。サングラスはレンズが片方無かった。
俺は空を見る。千代田区の空だ。あるいは中央区かもしれないし、新宿区かもしれない。どこでも良かった。

一体俺に、俺たちに何が起きたのか。わからなかった。覚えているのは、湧き上がる熱が体を這い回る感覚。そして、その熱を早く逃さなければという焦燥感。

何もわからないが、俺はそれでも構わないと思った。思い出す時間、考える時間は(無限ではないが)、十分にある。
アニメの2期が始まるまで、あとたっぷり半年はあるのだから。

君のことが大大大大大好きな100人の彼女 第2期 2025年1月より放送開始