ニキシー管の魅力
この記事は、CAMPHOR- Advent Calendar 2020 22日目の記事になります。21日目の記事は watamboさんの「CAMPHOR-のOB/OGは今何をしているの?聞いてみた。」でした。CAMPHOR- 運営メンバーOB/OGが今どんなことをされているのかまとめられていてとっても面白い記事でした!
さて今回は当初作る予定だったものがTwitterのAPI申請がいつまで立っても承認されないことから僕が小学生時代から依然としてその魅力に引き込まれている「ニキシー管」について語ってみようと思います。
ニキシー管とは?
1950年代に登場した真空放電管であり170V程度の電圧を印加することでネオンによりオレンジ色に光って電極の形に応じた数字や文字を表示させる放電管です。
白熱電球などとは発光原理が異なりネオンのグロー放電であるので、レトロ感感じる非常に暖かみのある光で電極が縦に並んでいることから前後に数字が動くような独特の個性があります。ちなみにガラス部分も触れるくらい熱くないです。
歴史
ニキシー管が活躍していた当時当時LEDやディスプレイなどが余裕で無かった時代なのでディジタル表示をさせる表示器がほとんどなく、計測器や電子計算機,自販機にエレベータまで様々な用途に用いられました。
この時代に同様に活躍していた広義の真空管として計数表示管であるデカトロンが挙げられます。これはカウンタと放電表示を兼ね備えた真空管であり、ニキシー管と同様にしてアノードとカソードの間に高電圧を印加することによって発光します。初期の電卓の表示部はニキシー管が用いられていたため多用されており、下の動画のようにENIACのような黎明期のコンピュータなどにも用いられていました。
中には今でもレトロ自販機などで現役で動いているものも見つけられることができます。JAXA種子島宇宙センター観測所内のカウントダウンカウンターでは今でもニキシー管によるものが現役で動いています。
もう生産していないの?
かつては日立やNEC,松下電器など日本メーカーなども生産していましたが現在では大規模生産はまったくされていません。しかし1990年代ころまでは保守用として旧ソ連圏で生産がなされていました。そのため現在手に入るものは中古品もしくは世界に眠るデッドストック品のみです。
ニキシー管は特許料の支払いや構造の複雑さに加えて発光がネオンのグロー放電に由来することから高電圧を印加する必要があるため、電熱線によるフィラメント管,蛍光表示管(VFD),そして7セグメントディスプレイのようなLEDへと時代とともに衰退し置き換えられてきました。
寿命は初期の5000時間から終盤の20万時間以上まで幅広く存在しており、中国製あるいはソ連製よりも欧州製や日本製のほうが一般に品質がよく(数字が綺麗),高寿命なイメージがあります。
例えば安価に入手しやすい定番のソ連製IN-12だと5の文字が2をひっくり返したものになっておりコストダウンがなされています(?)
流行ったきっかけ(?)
2011年に放送されていたアニメSTEINS;GATEに登場するダイバージェンスメーターの表示部にニキシー管が用いられていたことから知名度が増し、さらに世界的に在庫が減少していきました。
ダイバージェンスメーターはアニメ中にて世界線変動率を計測し表示する未来のガジェットとして作品の鍵を握る重要なアイテムとして何度も作中に登場していました。
Official髭男dismのPretenderのジャケットでニキシー管だったことからご覧になったことあるかたもいるのではないでしょうか?
「出会える世界線 選べたらよかった」という歌詞が登場することからもシュタインズゲートによる影響を受けていることが示唆されています。ちなみにOfficial髭男dismのボーカル藤原聡さんはSTEINS;GATEの大ファンだそうでそこからインスピレーションを受けていることが語られています。
藤原- 〜あと今回のCDジャケットは"ニキシー管"という、真空管の中に数字が出てくるものがビジュアルになっているんですけど、それも「STEINS;GATE」に出てくる"ダイバージェンスメーター"という、世界線の変動を示すメーターから影響を受けているんですよね。...(以下略
Uta-Net TODAY SONGS Official髭男dismより
ちなみに僕がニキシー管を知ったきっかけはiPod Nano 第6世代の時計機能にいくつかの腕時計文字盤デザインが存在し、その中にニキシー管をイメージした文字盤があったことから興味を持ちその魅力に引き込まれました。
どこで入手するの?
国内では一部オークションなどを除いてあまり満足に手に入れることはできません。ebayやロシアやウクライナの怪しい真空管販売ショップから個人輸入することが最も手軽で安価に手に入れる方法だと思います。
ただ近年ebayでさえ満足に以前ほどの量,価格で手に入れることが厳しくなっているように感じるので、デッドストック品のみであることからも興味ある方は早めに入手しておくことをおすすめします。
ニキシー管で時計を作りたい!という場合は専用ドライバICの入手やその制御,170Vを得るための昇圧回路などいくつかのハードルが存在するためにキットでの製作が一番お手頃です。
セット販売だと値付けが高くなっている場合がほとんどなので、管をあらかじめ個人輸入などで入手しておき、管なしのニキシー管時計キットを組み立てることが一番お安く好みの時計を作れると思います。
ちなみにおすすめはイギリスのpv electronics社のキットをおすすめします。マニュアルは英語ですが親切にサポートしてくれますし、GPSやWifiによる時刻同期のモジュールやケースなどの拡張性も高いです。自分で1から制御して回路を設計し時計を作るのもロマンがあるのですが下の動画のような動きや適切な電流値でなるべく寿命を長くするコツなどはなかなか難しいものがありました。(いずれリベンジしたい)
ニキシー管の今
僕と同様に世界にはニキシー管の魅力に惹き込まれている人は多数に存在しており、その中でも生産を再び復活しようという流れも存在しています。
実際にチェコのダリボル・ファルニーさんの例が有名で,ITエンジニアだった彼が何度もの実験と試作の結果を得てニキシー管の開発と製造を自ら行っています。
R|Z568Mという大型管を実際にインターネット上で購入できます。
その制作過程は37分にも及ぶ上のビデオで公開されており芸術的工芸品とも呼べるニキシー管のその作り方が無料で見られるのでとても面白いです。
日本でも@yuna_digickさんがニキシー管の製造を研究開発されています。電極の形を変えれば数字や文字以外も表示できることからこんなものも実際に作っていらっしゃってその技術に驚かされます。今後の開発が本当に楽しみです。
さいごに
簡単にではありますがニキシー管の魅力とその歴史についてお話させていただきました。蛍光表示管(VFD)も好きなのですがやっぱりネオンの光って見ていて落ち着きます。暗めにした部屋でニキシー管時計を見ているといくらでも時間が過ぎていくような安心感を感じます。なかなか入手も難しいですが十分にその価値はある表示デバイスだと思うのであなたもその魅力を感じてみませんか?
さて明日は23日目morishinさんです。お楽しみに!!