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えー、猫が社長の不動産屋!!

  セイばあちゃんから、越冬野菜や漬物、ふきのとう味噌などお土産をどっさり持たされ車に乗り込みドアを閉めようとした瞬間、三毛猫がさっと助手席に乗り込みここは私の定位置よとばかりに蹲った。戸惑う私に、セイばあちゃんはにこにこしながら、町に用があるのじゃろうから連れていっておあげと家からゲージを持ってきた。セイばあちゃんとレオに見送られ、なんか可笑しくないと思いながら、ちらちらと三毛猫の方を盗み見る。車酔いしないのかななどどぼんやり考えながら、でも、どこかで一緒に行くことに納得している。山の薄暗い道は、猫がいるだけでも心強く感じる。滅多に車が通らないこの道を一人で運転するのは、まだ怖い。
 家に着くと三毛猫は、澄ました顔で自分からさっさとゲージに入り、さも、私はちゃんとゲージに入れられここに来ました雰囲気を醸し出している。セイばあちゃんから貰ったお土産を母に渡し、ゲージを抱え家に入ると母が驚いた顔をしている。そりゅあそうだよね。青い目をした猫と大沢集落に行ったはずなのに、ゲージに入っているのはどうみても”三毛猫”一番びっくりしているのは、私だから。
 家には、父と母しかいなかった。兄夫婦はお嫁さんの実家に行ったとのこと。仏壇に手を合わせ、買ってきたお惣菜を乗せ換えたテーブルに、セイばあちゃんから貰って来た漬物やふきのとう味噌が追加された。モノクロの世界に一気に春の息吹が吹いて来たようだ。普段、あまり食べ物に興味を示さない父さえ、美味しいそうだと箸をのばしている。楽しそうに会話しながらご飯を食べている両親に釣られ、私も問われるまま集落での生活を話した。足元のゲージで、水とフードを貰った三毛猫が静かに私たちをみている。
 片づけたテーブルに、母がコーヒーを持ってくると父が話を切り出した。ハナがネットにあげた、大沢集落の写真に興味を持ち、前々から自給自足の生活をしてみたいと田舎の物件探しをしていた家族から問い合わせが来た。集落の人からも、空き家にしておくのは心配だし、セイばあちゃんが集落のお墓を守りたいと残ってくれているから、借りたい人がいたら貸したいと相談が来ている。ついては、大沢集落で不動産屋をやらないか。あくまで山田不動産の出張所みたいな扱いだから、手当は少ないが・・・・社長は、その三毛猫になってもらい、お前は秘書兼雑用係、おっと営業主任でどうだろう

 三毛猫の方をみると、こうなることを知ってましたとばかりに凛として居住まいを正し、こちらをみている。猫社長の話もびっくりしたけど、うちの父親にユーモアのセンスがあったことにも驚いた。母も笑顔で話を聞いている。猫社長か( ^ω^)・・・人間社会には色々しがらみがあるけど、社長が猫なら面白いことが出来そう。うん、いいアイデアかも知れない。集落での生活ならお金もあまりかからないし、今まで通り集落の様子をネットにあげるだけなら私にも出来る。やっぱり親は、私のことを心配してくれてたんだ。ありがとう、お父さん、お母さん
 セイばあちゃんへのお返しだと母が缶詰やお菓子・日持ちする乾麺などを持たせてくれた。セイばあちゃんから頼まれたものと猫用の商品をたくさん買い込み、ガソリンを満タンにし帰路についた。薄暗い山道が明るい未来へのトンネルに思えた。トンネルを抜けた向こうには、新しい未来が待っている。セイばあちゃんに一刻も早く、今日の出来事を話したい。でも、上手く話せるかな。その時は、サポートしてねと三毛猫につぶやいてみた。

 

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ちー
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