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大沢集落

 私が越してきた大沢集落は不思議なところだ。セイばあちゃんがお嫁に来た頃は、対岸までの渡し舟があったらしい。でも対岸まで渡れても、役場がある場所まで車で30分ほどはかかる。昔は船で荷物を運んでいたので、船着き場のあるこの集落は、田んぼにする土地もあったことからたくさんの人が住みついたのだそう。セイばあちゃんがお嫁に来てまもなく、悲しい事故が起き渡し舟は廃止されたというが、今も船着き場には一艘の船が長い間、使われもせず繋ぎ止められている。集落にとってはお守りなのだとセイばあちゃんは昔を懐かしむように話してくれた。今日は集落を散歩してみようかな。私は今まで、みっちゃん家とセイばあちゃん家の往復だけで、村を見ていなかったことに今更ながら気が付いた。みっちゃん家だって、玄関脇の四畳半を自分の部屋に使わせてもらっているが、台所やお風呂以外の部屋はまだ見ていない。よそ様の部屋を勝手に覗くのもどうかと思っていたけど少し、探検してみようかな?家の中にあるものは自由に使ってよいと言ってくれた。遠い親戚だとしても、面識のない私にポンっと無料で家を使わせてくれる人がいるなんて思いもしなかった。母親は私のことを気にかけていないと思い込んでいたけど、本当は私が親のことに無関心だったのかもしれない。明日はお彼岸の入り日だし、これからのことで話があるから家に来るようメッセージが入っていた。私が住んでいる家や集落の景色、セイばあちゃんの作ってくれるご飯を写真にとって見せてこよう。この集落のことは少しずつ、セイばあちゃんから教えてもらえばいい。私はここで生活していく覚悟を決めたから。
 

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