📺 誰も経験がない自社TVCMで考えたこと、実施したことの一部始終

2019年5月29日 13:58

こんにちは、Rentioの高橋です。

Rentioをご存知の方、いつもありがとうございます。
Rentioをご存知でない方、初めまして！ぜひこちらの記事もご覧ください。

さて去る2019年3月、カメラ・家電のレンタルサービスRentioでは初めてTVCMを放送しました🎉　社内の誰ひとり知見も経験も無いところから、スタートアップよろしく自分たちで色々と学びを得ながら進めてきました。

今回はTVCMの放送当日までに考えたことや決めたこと、放送終了後に振り返ったことやリアルな数値もできるだけたっぷりとご紹介します。これから「TVCMやってみたいなー」と考えている企業の方のお役に立てたら嬉しいです。

注：あくまでTVCMについて何も知らないメンバーが手探りしつつ取り組んできたという話なので手法はご参考までに…。当たり前すぎることや筋違いなことを言っているかもしれないので、見識をお持ちの先人の皆様からはツッコミ頂戴できると大変嬉しいです。

それでは、始まり始まり。

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実際に放送されたTVCMがこちら

（2019.9.30 追記）
出演いただいたタレントさんとのライセンス契約が終了したため、動画や画像そのものをお見せすることができなくなりましたゴメンナサイ😢
企業としては当然ですがちゃんと契約は遵守しています。

字幕付きですが、ぜひ音量ON🔊でご覧ください！後半に流れる「どんどん♪レンティオ♪」のオリジナルソングが賑やかでカッコ良くていい感じですね。

メインキャストは向かって左から住吉史衣さんと松岡那夏さん。バスガイド役は明星あゆみさんです。
（よく見てみると後半に一瞬だけシニアな方々が映ってて、ここが個人的にほんわかしたアクセントになっていて好きです👴🏻👵🏼 笑）

撮影当日の様子やキャスト選定の話は、記事の後半で詳しくお話します！

そもそもなぜTVCMを行うことになったのか？

まず前提として、私たちRentioの認知と集客の手段がオンライン広告に大きく依存している状況がありました。検索連動型広告やSNS等に表示されるバナー広告とかですね。Rentioも広い意味ではECサービスみたいなものなので、この点は常套手段を取っていると言えます。

ですが、今後の事業計画を考えたとき「オンライン広告だけではリーチできる人数にいつか天井が来るのでは…？🤔」そんな懸念もありました。

そこで様々な新規施策を検討する中、最もリーチが獲得できるオフライン広告として挙がったのがTVCMだったのです。
（それ以外の媒体で実際に小さくチャレンジしてみたものもあったのですがイマイチでした）

なぜ2019年のいまからやるのか？

Rentioのサービス自体は日本全国が対象となるので、将来的には全国あるいは首都圏でTVCMを流す可能性も考えられます。しかし、関東・首都圏の放映料は目が飛び出るほどハイプライス💸　ここで効果があるかないかよく分からんものを流すわけにはいきません。
まずは放映料が比較的安価な地域でテストを行うことが必要になってきます。

この辺りの手法はラクスルでCMOをされている田部さんのお話（リンク1つ目のページ後半）、それからスマートニュースさんの事例が大変参考になりました👀

そしてここで見出しの「なぜ2019年のいまからやるのか？」問題です。もし本当に首都圏や全国でCMを放送するとしても（たぶん）まだまだ先の話。どうしてこんな早いうちから地方でのテストを始めることになったのでしょうか🤔

注：この先はRentioの事業特性ゆえの話にもなるので、他の企業では必ずしも当てはまらないかもしれません。

現在、Rentioの主力レンタル商品はカメラ類です。そして実はカメラのレンタル目的で最も多いのが「旅行」なんです。当然、GW・夏休み・大学生の卒業前などの長期連休に合わせてレンタルの需要が伸びてきます。つまり広告の効果も1年の中で何回かの波があることになります。

すなわち、テストをして効果を検証するのも、反応が良い訴求の勝ちパターンを探るのも、1年中いつでもできる訳ではありません。来年・再来年に実施するかもしれない大規模なTVCMを外さないためにも、まず始めるには今からが良いだろうということになりました。

実際にやってみてから振り返ると、社内のTVCMに関するノウハウや知見の蓄積という意味でも今からやっておいて良かったなと思います。

TVCM自体の目的を整理する

「👥目的は認知度の向上ってことでいいよね。」当初、メンバーの間ではこんなふわっとした共通認識はありました。しかし考えの拠り所としては弱く、この後に控える代理店さんとの打合せも考えるともう少し深掘りして整理する必要がありそうです。

今回の目的をわかりやすい型として整理するために、以下の「b→dash」さんの記事がとても役に立ちました👀
（いまご覧のこの記事より遥かに内容が素晴らしいので、後で絶対読んでください！）

こちらの記事にあった「型」を参考に目的を整理してみました。今回のTVCMの目的は「市場啓蒙型とダイレクトマーケティング(刈取り)型のイイとこどり」です。

1. 市場啓蒙型

「カメラや家電のレンタルサービス」そのものの認知度を上げるのがひとつめの目的です。これまでの定期的な市場調査から「カメラや家電のレンタルサービス」を知っている人は増加傾向にあると分かっていました。しかし割合で言うとまだまだ発展途上。全体の底上げも必要です。

カテゴリ内における売上シェアや認知度が1位もしくは上位である必要があります。さらに細かく言えば、そのカテゴリでの検索が増えたときに、SEO合戦で必ず勝てる見込みが(リソース的にも)ある時でないとなかなかはまらない印象です。
（「b→dash」さんの記事から抜粋）

現状、カテゴリの中でRentioはかなりシェアを広げている状態です💪🏻　また幸いにも社内のコンテンツメディア部隊が着実に実績をあげてくださっており、SEOの面でも勝負できる位置にいると判断できました。

2. ダイレクトマーケティング(刈取り)型

視聴者の頭にサービス名を残し、視聴後に具体的な行動(店舗に行く、検索行動をするetc...)を”させきる”ことを目的にしたクリエイティブです。極端な話、そのサービスが何か、機能的なベネフィットが伝わらなくてもよいので、最低でもサービス名とわかりやすいベネフィット(無料！や○○プレゼント！など)だけは覚えてもらう、というものです。
（「b→dash」さんの記事から抜粋）

この型に沿って考えたとき、今回の具体的な行動とは「検索をしてもらう」になります🔎

ここでもうひとつ考えられるのは、検索してもらうだけでなく「その場でコンバージョン（レンタル注文）してもらう」までを具体的な行動として定義できるかどうか？🤔　後述しますが、今回は「その場で」コンバージョンまで至るケースは少ないと判断し、先の「検索をしてもらう」までを妥当な目標として定めました。

とはいえ少し長い期間で考えてみると、ゆくゆくその方にカメラや家電を使う需要が発生したとき「RentioというサービスのCMや広告を見たことがある」「前にこのサイトは見たことがある」なんて具合で優位なポジションを取れることが期待できます。さらに、一度でも検索行動を起こしてもらったりサイトを見てもらえば、リターゲティング広告で定期的に接触できるお客様も増えそうです。

これらの型に沿って整理したおかげで、メンバー間でふわっとしていた認識も解像度がグッと上がった気がしました💪🏻

KPIにしたもの

もともとRentioで多く実施していたオンラインのプロモーション施策は基本的な数字は取れる土壌です。分かりやすいものだと表示回数、クリック率、購入転換率とかですね。

その一方、TVCMを代表するオフライン施策に対しては最初「効果を正確な数字で計測するのは難しいんでしょ…？😐」そんなイメージがありました。でも反応が数字として取れないのはとにかく気持ち悪い！　今後良し悪しを判断していくのに数字は絶対必要なので、現実的に計測が可能なものをKPI（評価の指標）に定めていきました。

注：イメージ型、ブランドの世界観を打ち出すことを主目的とする場合は視点がだいぶ異なると思います。

1. 市場啓蒙型としてのKPI

✅ カメラ、家電のレンタルサービスのカテゴリ自体の認知度の変化量

基本的な認知度に関しては従来から定点観測的に調査しているので新しい仕組みは必要なさそうです。

2. ダイレクトマーケティング型としてのKPI

✅ Rentio自体の認知度の変化量
✅ Rentioに関する指名検索回数の変化量

指名検索とは、社名・ブランド名・商品名・サービス名そのものによるキーワード検索のこと。具体的には「Rentio」「レンティオ」などを含むキーワードで検索された場合のことですね🔎
指名検索回数の変化量をKPIに定めたのは、後述の「勝ちパターンの判断」に利用できることが理由です。副次的に「指名検索1回あたりのコスト」も算出できそうで、今回はこれをCPAとして定義します。

なお指名検索の回数を測る方法にはいくつか選択肢があり、具体的にどの手段を選択したのかは後半のセクションでご紹介します。

逆にKPIにしなかったもの

一方で今回は計測しない、正確には成否判断の基準にはしないものもメンバー間でコミットをとっておきました。

⛔️ セッション数の変化量

放送期間中にはTVCM以外の広告も出稿しますしTwitter等での拡散も行われるでしょう。多くのセッションの中から「テレビでCMを見たからアクセスした」数を厳密に導くのは困難と考えました。

⛔️ 注文数の変化量と注文獲得コスト

Rentioの場合、CMを見てその場で注文するような商材ではありません。注文に繋がるのがいつなのか、その注文がTVCMの効果によるものなのか判断するのは困難と考えました。

「無理なものは深追いしすぎず取れる数字をしっかり取ろう」と決めておけたのは気持ち的にも楽になれて良かったです。

・・・

代理店さんの決定、キックオフへ

2018年末頃から複数の代理店さんとお話の場を設けることになります。
が、代理店さんの選定やKPI判断の基準に自信が無く、話を進めるための道しるべとなるポイントが欲しい…。ちょうどそんなタイミングでこちらのtakejuneさんの記事に出会って大変参考になりました👀
（こちらも後で絶対に読んでください！）

話を戻して、いくつかお会いした代理店さんのなかから最終的にお願いすると決めたのは、Rentioの事業理解やおサイフ事情を最も熱心に考えてくれた業者さんでした。また両社の代表の繋がりなどから、コスト面や対応に関しても安心して担当をお願いできるだろうとも考えられました🤝

株主などの利害関係者から、クライアント視点でアドバイスをくれる人を見つけましょう。
（takejuneさんの記事から抜粋）

その後キックオフを迎えてから放送開始までの間、10回ほど対面での打合せがあったように思います。具体的な仕様とクリエイティブに関して大きく4つの決めごとがありました。

1. どの地域にどれくらい放送するか決める

結論から言うと、今回は静岡県を放送エリアに選定しました。

✅ 年齢、性別、生活動向などの属性が全国平均と近い
✅ 人口が多すぎず少なすぎない
✅ 予算の面でもちょうどよい

といった理由からです。
（似た理由で北陸地域もテスト放映エリアとしてよく選ばれるとのことでした）

2. 放送の量を表す単位

どれくらい放送するかという量は「GRP」という単位で表されます。雑に言うとGRPの数字が多ければ理論上たくさんの人数または回数を見てもらうことができ、その分コストも上がります。GRPをどの程度の数字にするか、代理店さんには予算も踏まえて各世帯にちゃんと接触＆認知してもらえるようなプランを設計してもらいました。

放送エリアの選定もGRPという単位も業界の中では常識なのでしょうが、とにかく全然知らなかったので細かく教えてもらいながら進行していただきました🙇🏻

3. どんなクリエイティブにするかを決める

クリエイティブ（映像作品の内容）を検討し始めるタイミングで、打ち合わせには映像監督さんやプロデューサーさんにも同席いただいています。

方向性の検討

ブレストを介してまずは大きく分けて5案ほど具体的な案を検討。この段階で「良質な違和感」を作れるであろう2つの案に絞り込みました。

映像の具体的な構成については、商材にもマーケットにもよるので言及が難しいのですが、ぼくが見つけた手法は2つあって、無難なCM群のなかにポッカリと空洞をつくるような「良質な違和感をつくる」やり方と、サービス名やセールスポイント以外を削ぎ落とした「だれが見ても100%伝わる」やり方です。
（takejuneさんの記事から抜粋）

上記で言う、もうひとつの方向性「だれが見ても100%伝わる」案も一旦検討に挙がりました。しかし「カメラをレンタルして使える」ことは伝えられても、それ以上の情報を十分に伝えるにはTVCMの尺では難がある。メリットや使い方などはWEBで補足すべきだろうとの判断になりました。

具体案の絞り込み

ロケ地や予算など現実的な調整を含めて2つの案を具体的な状態までブラッシュアップ。最終段階ではメンバーの意向も踏まえつつ、プロを信頼してより熱意をもってやっていただけそうに感じられた案を決定しました💪🏻

良いクリエイティブディレクターのアサインに成功すれば、あなたがクリエイティブ(映像表現)に頭を悩ます必要はありません。基本的にはお任せしたほうが良いものができます。
（takejuneさんの記事から抜粋）

4. メインのキャスティングを決める

世界観にハマりそうなことや演技の実績などから、映像監督がキャストさんを選定。我々のような映像制作の素人には判断が難しい感覚なので引き続き信頼してお任せしました。

最終的に上がった案は2パターンのキャストさんの組み合わせ。SNSを定期的に利用していて拡散に寄与してくれそうなキャストさんがいる組み合わせに決定しました👩🏻

また、それだけで選ぶわけではありませんが、SNSで積極的に拡散してくれたり、キャンペーンやイベントに協力的なタレントさんはクライアント側からすると知名度以上の魅力を感じます。
（takejuneさんの記事から抜粋）

実際、こちらからお願いをしていないにも関わらず、何度か出演作として投稿してくださりありがたかったです。

余談：低予算で複数のパターンを作成した方法

「将来のTVCMを外さないために優位な訴求の方向性を見つける」
これがそもそも今回TVCMを行う目的のひとつでした。比較のためにはクリエイティブを複数用意する必要がありますよね。

それなら映像そのものを複数パターン作成すればいいかと思いきや、これが予算と時間の制限からとても現実的ではありませんでした😵　シーンが増えれば撮影に係る人日とコストも比例して増えていきます。
（実際に撮影現場で想像を超える人数のプロが動いているのを目の当たりにして「そりゃそうだ🤭」と納得しました。）

そこで私たちが取ったのが「最後に表示されるフレーズとナレーションだけを変更する」手法。これならほぼ編集工程だけでパターンを増やすことができるので、撮影現場そのものを増やすより圧倒的にコストを抑えられました！　今回は映像の最後に表示されるキャッチフレーズだけが異なるA〜Cの3パターンを作成し、訴求の方向性をテストします。

ようやく色々なことが決まって、いよいよTVCM撮影当日を迎えます。
（この記事もちょうど折り返し地点です、お付き合いありがとうございます☕️）

・・・

TVCM撮影当日！

今回はこのロンドン風の2階建てバスが撮影の舞台になりました。（外観を取り忘れたので参考写真です…やっちまった…🙈）

撮影は全てこのバスの車中で行われました🎥　とはいえ屋外は屋外なので日没までに撮影を完了する必要があります。10時前にはカメラが回り始め、撮影そのものが終わったのは15時過ぎだったように記憶しています。

映像監督やプロデューサーさんと都度確認をとりながら進行していきます。「何か疑問点があれば遠慮なく言ってくださいね」と言っていただけたので、気軽に質問しつつお互いの認識を合わせながら進めていただきました。

演者さんたちはバスの2階部分で撮影、私たちは控室（同じバスの1階）でモニター越しに進行を確認していました。演者さんが踊り狂うシーンでは毎回バスがめちゃくちゃ揺れて下にいる私たちは結構怖かったです笑

（撮影後に残った紙吹雪）

すべての映像撮影が終わった後、最後にスチール（静止画）📸 も撮影しました。今回はTVCMの効果を補う交通広告や広告のランディングページ等で静止画を使うことが決まっていたためお願いした形です。

クリエイティブに関わる費用として、スチール(静止画)を宣材に追加するとタレントの出演料が数%上乗せされます。交通広告や雑誌など紙媒体への出稿もひとつの手ですが、動画のみにして、浮いた予算をネットの動画広告に回すパターンと比較して考えましょう。
（takejuneさんの記事から抜粋）

細かい点として、スチールに映る演者さんの人数によって出演料や契約料が変わってきます。ここも予算が限られていたため必要最低限に留めました。

撮影はここまで、お疲れ様でした！編集された映像が上がってくるのを待ちます。

編集された映像の確認と細かい調整を行う

撮影日から1〜2週間ほどで編集の初稿をいただきました。事前に絵コンテで内容を詰めていたり、撮影中にも気になった点を質問させてもらっていたので概ね想定通りのものに仕上がっていました。

こちらが1点だけこだわって調整をお願いしたのは「検索行動を後押しする」ための微調整でした。前述の「ダイレクトマーケティング型」の目的にも沿いますし、KPIにも直結するため、尺とのバランスを取りながら調整いただきました。

最終的には「編集室」と呼ばれる「音響設備とかがいっぱいの何かすごそうな部屋」で全員で問題が無いことを確認して完成となります🎉

ここに至るまでに絵コンテでは表現しきれない細かな映像や音のエフェクトなども加わっています。プロの技で細部までブラッシュアップしてくださったんだな、と感動したのが印象深いです☺️

完成したデータは「考査」という内容のチェックを経て、無事正式に放送局に納入されました。なお考査の過程で「CM上の演出です」な注釈が入る結果に🤭　こういうの本当にあるんだなー、とTVCM作ってる実感が改めて湧いてきて感慨深かったです。

・・・

放映スケジュールを決定する

具体的にどの日のどの時間帯に放送されるか、代理店さんが放送局と調整の末に決めてくださいます。

注：今回は「スポット」と呼ばれる時間帯形式の放送方法でお願いしました。これ以外の形式を用いる場合や、放送局あるいは代理店さんによっても決められる範囲は異なると思われます。

さらに今回はA〜Cの3つの映像パターンがあるため、それぞれを1日ごとに放送してもらうようにしました。パターン毎にA→B→C→A→B→…といった具合です。

放送期間の兼ね合いで曜日による有利不利はうまいこと抑えられそうでしたが、放送される枠ごとに視聴率のムラはあります。これらは計測時に補正することにしたので後のセクションで詳しくご紹介します。

さあスケジュールも決まったので、いよいよあとは放送開始を待つだけ！
…とはいかず😉　事前に決めたKPIを計測する5つの仕込みを粛々と進めました。

1. 指名検索の推移を見える化する

今回はRentioの指名検索が発生した件数を1日単位かつ放送エリアである静岡県に絞った数値で知ることが必要。そこで私たちが取ったのは「指名ワードで出稿しているリスティング広告の表示回数」を擬似的な検索回数として扱う手段でした。（検索結果一覧に [広告] として出てくるあれですね。）

しばらく前から指名ワードでの出稿は行っていたので、「Rentio」「レンティオ」で検索すればほぼ確実にリスティング広告が表示されている状況。そのため新しいツールやインフラを用いることなく実施することができました。

特定のキーワードの検索回数を知りたい場合、メジャーな手段としてよく目にするのが「Google キーワードプランナー」や「Google Trends」などです。しかし、キーワードプランナーでは月ごとの推移しか見ることができず、Google Trendsでは厳密な検索回数ではなく相対的な値に整形されてしまいます。そしていずれも都道府県で絞ることができず今回の用途には足りませんでした。

広告運用セクションの方と連携して指名ワードとして扱うフレーズにCM関連の単語を追加。さらに静岡県のみを対象にしたキャンペーンを新たに作成・出稿していただきました。また広告運用セクションの方にプロジェクトの全体感を共有するためにも、代理店さんとの打合せに一時的に参加していただいたりもしました。

2. 事前の認知度調査

認知度の変化量を知りたいのですから、CM放送が終了した後にだけ計測しても仕方がありません。放送終了後に予定している質問と同じアンケート調査を全国・静岡のそれぞれで実施します。

3. 静岡限定のオンライン広告出稿

TVCMを見た可能性のある静岡の方々に他の接点でも繰り返し訴求するため、オンライン広告も静岡限定で出稿を増やしてもらいます。CMの映像データもあるのでYouTubeやSNSなどで動画広告を配信。特にSNS広告は検索エンジン以外での検索行動が増えていることもあり重点的に出稿していただきました。

ちなみにこちらでもA〜Cの3パターンをそれぞれ配信。TVCMと異なる角度からも同じ比較を行えば、勝ちパターン選定の精度が高められるのではと考えました。

4. ランディングページの用意

検索してくれた方やオンライン広告をクリックしてくれた方の着地先として、TVCMと同じ空気感のランディングページを作成します。

15秒のCMでは説明できない、サービスのメリットや使い方について紹介します。直近でレンタルのニーズがある方を逃さないためにその場で使えるクーポンを、興味を持っただけの人もその場で1つ行動を起こしてもらえるよう抽選キャンペーンについても掲載しました。

5. 拡散キャンペーンの準備

オンライン上でCM認知を最大化するためにTwitter上でキャンペーンを行います。拡散を目的とした王道のフォロー＆RTキャンペーンを実施しました。

＼TVCM放送開始🎊／

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👩🏻「えっ、なんて？」
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— Rentio宣伝部 -カメラ＆家電レンタル- (@Rentio_jp) March 11, 2019

一つはRT数に応じたプレゼントなど、かんたんに参加できシェアがシェアを呼ぶ設計のもの。Twitter上で拡散しCMの認知を最大化することが目的です。
（takejuneさんの記事から抜粋）

色々と仕込みを済ませたうえで、今度こそ放送開始を待つだけです！

・・・

いざ放送開始！

会社としても初めてのTVCMだったこともあり、社長が朝からウキウキしていたのが印象深いです🕺　初日はGAでリアルタイムのトラフィックを見てキャッキャしていたりしました。

とはいえ47ある都道府県のうち1つだけの話なので、全体のアクセスと比べてしまうとどうしても見た目の違いは小さいもの。放送される日によって番組の視聴率も違うので一喜一憂せず、その後は目立った問題が無いか注視しつつ粛々と放置しました。

そして3週間の放送が終わったところでいざ計測！
…に進む前に😉　計測に向き合う際に行った2つの点について補足しておきます。

1. 静岡以外の全国の推移を加味する

TVで放送されたCMそのものの効果を計測するには、静岡だけの数値の変化だけを見ても意味がありません。この変化の中にはシーズン需要、他のTV番組、新聞・雑誌など、CMとは別の要因による変化も含まれている場合があるからです。
そこで、CM放送前後で計測する数字は原則すべて [1] 静岡、[2] 日本全国（静岡除く）の2軸で比較することにしました。静岡で起きた変化量から日本全国の増減を差し引くことで、静岡のみに起きた変化、すなわち今回TVCMと交通広告のみによって起きたであろう変化量を推測します。

2. 放送回数と視聴者数のアドバンテージを加味する

A〜Cの3つのクリエイティブパターンの効果を検索回数で比較する際、それぞれの放送日の指名検索回数を足し算しても意味がないと考えました。
例えば仮にAパターンが放送されていた日の検索回数が一番多かったとします。これで「最も検索に繋がるクリエイティブはAパターンである」と言ってよいでしょうか？　実はクリエイティブが良かったのではなく、単に1日あたりの放送回数が多いだけだった、人気番組のある日に割り振られていただけだったなど、目に触れる人数が多かっただけかもしれません。
そこで、まずは人気の時間帯に放送された回数に係数を掛けることで、視聴した人数のアドバンテージを加味した放送回数に補正をしました。すごく大雑把に言うと「超人気の時間帯で1回放送されたんだから、普通の時間帯で2回放送されたようなもんだよね」みたいな調整です。

アドバンテージを加味した補正済みの放送回数を前提に、この後パターンそれぞれの指名検索回数を比較します。

精度を高めるためにやるべきことは本当はもっとあるかもしれません。これだけではまだ毒が残っているデータかもしれません。ただ、限られた手段とリソースの中でできるだけのことはやるべきだと思いつつ数字を振り返っていました。

そんなこんなで計測の結果がやっとこさ見えてきました。ここからは4つの計測結果を、数字も可能な限りお披露目いたします 📊

1. TVCMへの接触率

接触率は37.8%でした。今回実施したGRPでの平均接触率は40%前後だと他の資料で拝見したので、平均通りか気持ち下回った形です。

2. 指名検索回数の変化量とCPA

TVCMの効果によって指名検索の回数は約8.7倍増加しました（つまり約9.7倍になった）。もちろんCM放送終了と同時に結構減ったのですが、残存効果はあるようで放送前の1.8倍程度の数字をキープしています。

放送中の期間に絞ったCPAは3,036円となりました。繰り返しになりますが、今回定義したCPAは注文獲得数ではなく指名検索行動1回あたりのコストです。この数字は単純に全体の費用を指名検索の回数で割ったものになります。

これらの数字が一般的に大きい方なのか小さい方なのか事例が見つからず何とも言えないのが現状で、もしご存知の方がいらっしゃったら投げ銭のつもりで教えていただけたら嬉しいです。

3. 認知度の変化

どちらかというとRentioの名前を多く含むタイプのクリエイティブだったので、ここで数字の向上が結構あって意外でした。次にRentio自体の認知度の変化量です。

結果としてはRentioそのものよりもカテゴリの方が認知度の増加が大きくなりました。要因は振り返り中ですが、先に挙げた目的のうち「市場啓蒙型」の方が向上が大きかったということにはなりますね。

4. 訴求パターンごとの反応の差

AパターンがBパターンより僅かに反応が多く、Cパターンは少し引き離された形になりました。ちなみにSNSやYouTubeをはじめオンライン広告で配信していた広告でもAパターンが他より効果が良かったため、総合的にはAパターンが優位だと言えそうです。

注：番組の種類によってはそもそも検索行動を起こしにくい、つまりクリエイティブに関係なく指名検索回数が増えにくいケースもあることも認識しておく必要があります。

・・・

全体を振り返って、良かった点

１：データの部分を代理店さんにお任せしすぎず自分たちで行うのは少し苦労しましたが、やっておいて良かったなと思います。それなりにちゃんとした数字を一次情報として取れるようにしておいたことで納得度が高くなりました。

２：クリエイティブパターンの効果を、TVCMとオンライン広告の両方で比較できたことも良かったです。それぞれで同じパターンが優位な結果になったことで信頼性が高まりました。

３：代理店さんのメンバーとFacebookのメッセンジャーでやり取りする形にしたこと。メールより早く、かつカジュアルに意見が交わせたので程よい距離感で進行できたように思います。

全体を振り返って、反省すべき点

１：スケジュールが短すぎたこと。冒頭の通りRentioの利用ニーズは季節変動が大きく、次の波に当てるためには実施決定から放送開始まで2ヶ月半しかありませんでした。結果、全体的に窮屈な進行になってしまったように思います。代理店さんにはロケの手配から放送枠の確保まで奔走いただいて本当に感謝です。

２：後からA〜Cとは異なるもっと良い訴求フレーズのパターンが見つかったこと。オンライン広告やアンケートの中で「あー、こっちの方がヒキがありそうだな…」というものが見つかったものの、パターンとして載せることは間に合わず。これも短いスケジュールの弊害のひとつでした。

３：CM接触率やカテゴリそのものの認知度上昇度合いに比べて、Rentioのブランド認知度の上昇が小さいこと。クリエイティブの中でより強く訴求するべきだったかもしれません。また検索先のLPではあえてRentio色を出さずCMのカラーを強くしており、こちらも訴求をより強めてみてもよさそうです。

この次のステップ

全員にとって初めてのTVCM、幸いにも無風には終わらず一定の増加があると確認できましたし、相対的に優位なクリエイティブも把握できました。仮説を元に改善案もいくつか考えられそうです。
これらを元に別のエリアでも同様にTVCM施策を実施する方向で動いています。

１：各種数値の変化について、改善あるいは再現性があるのか
２：地域／時間帯／番組特性による「検索行動を起こしやすい条件」

この辺りを確かめられたらと思っています。

さいごに

色々と接触率やら認知度やらCPAやら書いてきましたが、私はもともとマーケターや広報といったポジションではなく、Rentioにはデザイナーとしてジョインしました。普段以上に数字に触れるシーンが多くてもう本当めっちゃ手探りでした…。
私以外にも現在Rentioでは様々なメンバーが複数のポジションを横断的にやっている状況です。経験や興味に応じて裁量を持って仕事ができる環境だと感じています。前年比約2倍のサービス成長率を一緒に支えてくれるメンバーを募集しているので、よろしければご応募くださいませ。

とても長い記事になってしまいましたが、最後までお読みいただき本当にありがとうございました！

この記事を書いた人：高橋（@MIZ_Kitchen👓）