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#6 体調不良で行けない生誕祭

生誕祭というタイトルのライブイベントに、体調不良になってしまった依頼主に代わって行ってきてほしい、という依頼。その生誕祭とやらは依頼連絡をもらった翌日に開催されるという。

なんとなくレンタル人間の醍醐味というか花形だと思っていた代理出席系の依頼が、ついに自分にも来た!、とちょっとテンションが上がった。

参加できます、と返事をすると、依頼主からチケット画面が送られてきた。
すると画面には荒い切り抜き加工が施され、キッチュな背景に載せられた男性の姿が。察するに男性アイドルグループメンバーの生誕祭らしい。

当日、指定された場所へ行くとそこは収容人数40人くらいのイベント会場で、エントランスには大きな誕生日を祝うバルーンが飾られていた。

ライブスペースは前方にイスがあり、後方は立ち見。
ステージが始まるまでの間に今日のイベントのシステムについて調べてみると、前方のイス席は言わばファーストクラスみたいな席で、通常より高いチケットを買ったお客さん向けの席だと分かった。

40人くらいのキャパに30人くらい集まってるなあ、男性客は自分を入れて3人いるなあ、自分はレンタル人間だけど他に男性客が2人もいるんだなあ、とか観察しているといよいよ生誕祭が始まった。

ステージに現れたのは、手足が長く髪型が決まった5人の男性陣。
それぞれがイメージカラーの衣装を身にまとい、狭いステージを軽やかに歌って踊っている。

私はいわゆる地下と呼ばれるジャンルの男性アイドルを見るのはこの時が初めてで、正直、チャラチャラした若い子らがお客にチヤホヤされたくてやっていて、演者もお客もクオリティなんて求めてやいないんだろうと思っていた。(何度かアイドルの現場に呼ばれるうちに、この当初の偏見も間違っていなかったことを知るがそれはまた別のお話。)

今回見たグループは元舞台俳優とか、いくつかのアイドルグループに入っては解散してを繰り返してきた、チャラチャラはしているが、割と大人な苦労人が集まったグループで、キャリアを積んだ30歳前後の男性たちが大汗をかきながら歌っている姿はグッとくるものがあった。

2時間ぶっ続けで歌って踊るなんて絶対無理だわ、と段々彼らの努力に敬意を抱き始め、終わる頃には真剣に見ていた。

ステージが終了した後、依頼主に終了連絡をしたところ、簡単で構わないので感想をSNSに上げてくれないかと打診があった。しかし自分にはまともに機能しているSNSアカウントがないので、申し訳ないが期待に応えられないと返事をすると、では感想をLINEでもメールでも送ってくれたら、依頼主が自分のアカウントで発信する、というのでそれはOKした。

上述の通り、そこそこライブを楽しんだので、最初なめてたが徐々に引き込まれた、的な正直な感想を1時間以上かけて1400字のレポート(この記事より長文)にして送ったら、依頼主にえらく喜ばれたのでいいことをした気持ちになった。

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