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第10章 「Tokyo暮らし」 魔女の奇異な人生

「  不幸て何さ?大人って何さ? 」

世の中では、世の中の目線からの不幸と思える出来事に会った人に「辛い事を乗り越えて、よく頑張ったね」て言う人いるけど、そういう言葉に細胞がピピピと反応する。そもそも死を不幸=穢れと思っている概念が違うと思っているし、亡くなった友人たちの家族に起きたことは、ものすごい悲しくて寂しい事だけど、だからといって不幸ではない。何んだか、温かい言葉に聞こえないのは私に問題があるのか。。。
想って言ってくれてるのだろうけど、有り難く受け止められない。
数々の身に起きたことを深く考えてるうちに、とんがった大変めんどくさい20歳になっていた。

今ならはっきり言えるけど、その頃はそこまで言葉にはできなかかった。
だけども今と考え方は、ちっとも変わっていない。
大人になった!と強いて言えるのは、お陰様で許容範囲は広くなり「色んな考え方があるんだ。」と受け入れることはできるようになったと思う。それくらいだ。
若い頃は、感じているけど言葉として自分に落とし込んで、要約するまでに時間がかかったりするものだ。それでも、幼くても直感的に感じている感性は、既に最初からあるように思う。
魔女の場合、そこは、だいぶ小さい頃から仕上がっていたようで、だから、現在半世紀を過ぎた、もうかなりの大人なのに、自分は小学生のままの感覚がある。基本的な考え方が見事に変わっていないのである。

大人にいつなるんだろう?
そう思いながら、この年まできてしまった。大人である必要を感じなくなった今、もうならない気がする。
そんなこんなんで、自分の身に起きたことは、ほとんど人には話さず成人した。

「自分の顔に責任を持ちなさい」

美容学校も卒業間近になった。
学校の先生には内緒で、勝手に東京のちょっと有名な美容室の面接を受け、受かったので東京へ行くことにした。家賃6万円の、都会のど真ん中で一人暮らしを始めた。給与が手取りで11万くらいだったから、ほんとにお金がなかった。

ある月末に、お金なくてお腹すいて困り果てた時、近くの交番に行き「お財布を落として家に帰れないからお金を貸してください。」「500円でいいです」恐々お願いしてみた事がある。すぐノートに書いて貸してくれた。でも、「何度も使えると手じゃないないな」と思い一度っきりにした。

入社した美容室で早速いじめにあった。いわゆる教育係り的な担当の男の先輩で、物の言い方がネチネチしていて、ものすごい意地悪い顔をしていた。
口うるさく厳しい祖母に、小さい頃から「顔は、人の本性が出るものだ。自分の顔に責任を持って生きなさい。」と言われていた。
その先輩の顔を見たとき、「わぁ〜。ネチネチ意地悪ばかりしてるから、こんなちんちくりんな顔してるんだ!!おばあちゃんの言う通りだ。」
それから、心の中で「ちんちくりん」とその先輩のことを言うようにした。

同期に入った4人の中で、私はあまり喋らなかった。それに、いじめられても何でもないように淡々として泣いたり、他の先輩に相談したりしなかったから、ちんちくりんのいじめの標的にされた。
半年間、掃除とお弁当を買うことしかさせてもらえず、同期の子はシャンプーとかさせてもらってるのに、私にはシャンプーをさせない。仕事もわざと汚してやり直しを私にやらせる。お弁当代は、私に立替させて中々払ってくれない。とか色々、客観的にみてもいじめのてんこ盛りだった。
魔女は既に、中学、高校と美容室でたまにバイトしていたので、シャンプーや技術面は秀でてしまっていた。それが、喋らないから余計に生意気にみえて、ちんちくりんは嫌だったんだろう。明らかに対応が違うから、お店のオーナーと、トップの人たちが、見るに見兼ねて、ちんちくりんに注意してくれた。
そしたら、ちんちくりんは、今度は見えないところで私の腕をつねったり、お尻を叩いたりするようになった。それでも、泣きながらあ家を出してくれたお母さんのことや、美容師になりたかった彼のこと、生きたかったみんなの事を思ったら、辞めるわけにはいかなかった。

「 堪忍袋の緒がきれちゃいました!!」

我慢の毎日、気丈にも「いつか終わる。。。」と自分に言い聞かせていた。
そして「風向きが、必ず変わるから辛抱しろ」そんな声が頭の中で聞こえていたから、その声を励みに相変わらず淡々としていた。
そんな半年経ったある日、魔女の中で「ブチっ」とマジで堪忍袋の緒が切れた!!
ちんちくりんに「二度と、先輩の顔を見たくありません!!」
悔しいけど泣きながら、そう言ってお弁当を買いに出たまま、お店に戻るのをやめた。つまりバックれたのである。
美容師の世界ではよくあることだが、自分がまさかバックレるとは驚いた。
「そんな無責任な事したら。。。おばあちゃんに怒られる。」
正義感満載の良い子が耳元で囁いたけど、もうどうでもよくなっていた。

それでも、私を重宝してくれて可愛がってくれた先輩もいて「がんばれよ!!」とすれ違いざまに声をかけてくれたりしていたから、そういう人達には申し訳ない気持ちで一杯になったけど、戻る気には一切ならなかった。
後で、私のことがお店で大問題になった。と同期の子がわざわざ伝えに来てくれた。
「そんなの知らない、こんな事よくあることだし。それに、知っていて知らんぷりしていて、今頃問題にしないで。美容の道はそういうもんだって、誰かが私に教えてくれたけど、違うよ!!」そう言い返すと同期の子は、驚いて二度と連絡してこなくなった。
おじいちゃんの職人の仕事や人との接し方、父方のテイラーでも職人のおじさん達をずっと見てきて育ったけど、何かが全く違った。
綺麗な服着て、みんなギラギラはしてたけど、キラキラしたものが、お店の中に見えなかった。

一度ブチぎれると自分でもびっくりする程、腹の虫が治まらず、暫く家に引きこもっていた。携帯もない時代だったから、心配して店長が家まで来てくれたが、何かがもう我慢できなくて、言葉にする気にもなれず居留守を使い、後日手紙を送り退社させてもらった。

「東京て、、、。
緑もないし、道路の葉っぱは排気ガスですすくれてるし、、、。
家に帰りたい。。。」   
黒電話の線をブチっと抜いて、魔女は途方に暮れた。    

第11章へ   つづく

「 最後の歌 」RADWIMPS
作詞:野田 洋次郎
作曲:野田 洋次郎
戻らない昨日たち 本当にね ありがとね さびしいなあ
まだ見ぬ明日たち 今いくね よろしくね 嬉しいなあ

叶わない願いたち 本当にね ごめんね いつかきっと
叶えられた想いたち ありがとうね これからも ずっとともに
小さな鼓動 震えるたび 思うのは 僕があなたを守るから

今僕が生きているということは 今僕が幸せだということ
今僕が笑ってないとしても 今僕が生きている それだけで
幸せだということ

出会えない命たち 君の分も 僕はきっと がんばるよ
交わしたこの約束たち 離さないよ 忘れないよ 約束しよう

いつかこの 世の誰もが言えるのかな「僕はもう何も 望みはしないから」
小サな夢を次カら次に 描いては捨てていくのは 本当はもうこれ以上何もいらないから

今僕が生きているということは 今僕が幸せだということ
今僕の目に涙浮かんでても 今僕が生きている それだけで
幸せだということ

溢れる命たち 生きている 僕がいる 嬉しいなあ
消えていった命たち いつかはね 僕も逝くね その日まで

今僕が生きているということは 今僕が幸せだということ
今僕が生きているということは 今僕が幸せだということ
今僕が笑ってないとしても 今僕が生きている それだけで 幸せだということ
生きているそれだけで 幸せだということ


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